演奏中に起こってほしくないハプニング!<その②>
ようこそ!ブーです。
今回は2回にわたって、「演奏中に起こってほしくないハプニング」をご紹介しています。
<その①>はこちらからどうぞ↓
自分が体験したものや、知人などから聞いたことがあるものなどをまとめた100%実話です。
是非ご覧下さい!
指揮者のハプニング!
演奏を止めるのは指揮者…。
巷では『ただ棒を振っているだけの人』や『コンサートマスターが居れば指揮者なんか要らないんじゃない?』と言われることもある指揮者ですが、音楽のイメージをまとめて、オーケストラに適切な演奏を指示することが出来る唯一無二の存在です。
ですが、そんな指揮者も生身の人間ですから、指揮を振り間違えることもあるんですよね。
実際に私がプロの指揮者の方を密着したドキュメント番組を観たときのハプニングをご紹介します。
その指揮者の男性は『良い音楽にするためには暗譜するくらい楽譜を読み込んで、頭の中で音楽が鳴らせるくらいに準備しておくんです。楽譜をめくるのも指揮を振るのに邪魔になる時があるので…』と語っていました。
ところが、1番大事なコンサート本番!というときにハプニングが起こります。
彼は、語っていた通りに暗譜の状態で気持ちよく指揮棒を振るっていました。
ところが曲の中盤というところで、自分が思っていた楽譜の箇所とオーケストラが演奏している箇所を勘違いして(間違えて)指揮を振ってしまったのです。
ですが流石はプロの指揮者、頭の中で鳴っているハズの音楽とオーケストラが奏でている音楽の違いに即座に気付き、演奏をストップさせて最初からやり直したのでした。
指揮者の方は理想の演奏のために、たとえ本番中であっても演奏を止めることがあります。
彼のように振り間違いでやり直す場合もあれば、聴衆が騒がしいからと演奏を一時中断したり、楽器の演奏者が間違えたという理由で途中から演奏をやり直したりと理由はさまざまです。
やり直しさせられることは演奏者にとってハプニングになりますが、観客として聴く分には、好きな「指揮者・オーケストラ・曲目」だった場合、普段より長い時間好きな音楽に浸れるので、逆にラッキーな出来事になりますよね。(笑)
指揮台から落ちる!?
ブーの学校に居た指揮の先生が、実際に起こしたハプニングです。
指揮の先生は普段のオーケストラや合唱の授業でも、かなり激しい動きで指揮を振っていたのですが、年に1度だけの大きなホールで行われる「定期演奏会」の本番では更にテンションが上がり、その激しさにも拍車がかって、まるで踊っているようでした。
ですが、指揮台は大きくても横120㎝・縦90㎝ほどの台なので、そんなに可動域は広くありません。
そのため、とうとう指揮台から足を踏み外して転げ落ちてしまったのです。
指揮台が置いてあった場所が、幸いにもステージのギリギリではなかったので、高いところから落ちたというわけではなく、特に怪我をしたというわけでもありませんでした。
ですが、その場に居た学生達(ブーを含む)のトラウマになったことには違いありません。
なので、その後の授業では先生が指揮を振るたびに『○○先生、また台から落ちちゃうんじゃないかな…』と心配で音楽に身が入らない日々が続きましたとさ。
世界的に有名な指揮者に、指揮台から足を踏み外して頭をぶつけたことが原因で亡くなった方も居るので、落下防止のパイプや柵が付けれる指揮台もあったハズなんだけどなぁ…。(汗)
お客さんでもハプニング!
ブーの先生が昔(20年以上前に)ソロコンサートを開いたときの話です。
クラシックのコンサートに行くと、余程のことがない限り演奏中に「普通のトーンでお喋り」をしている人は居ないと思います。
ですが、元気な子ども達にはそんな常識が通じない時がありますし、現代とは違って昔は「親子席」や「ファミリーシート」と呼ばれる特別席がなかったりした関係で、途中退場を余儀なくされているご家族も少なくありませんでした。
先生の開いたコンサートでも、1番前の席で男女2人組の子どもが大きめの声を出してお喋りしていたそうです。
ですが、どうやら付き添いの大人から離れて座っているようで周りに大人の姿はなく、誰も注意ができない状況の様子…。
演奏者にとって、演奏中に自分が奏でる音以外の音が聴こえることは、とても気が散ることなので控えてほしいところです。
このハプニングを先生がどのように回避したかというと、
『休符のところで、その子ども達に顔を向けて「シーッ!」と一瞬ジェスチャーして見せたのよ』
だそうです…
鉄のハートがないと無理!!(笑)
マーチングでハプニング!
吹奏楽部に所属していた友達が経験したハプニングです。
吹奏楽部が行うマーチングでは、行進や動きながら楽器を演奏します。
パフォーマンス性を高めるため、行進の途中で方向転換のために素早くターンをしたり、楽器を上下左右にスウィングさせたり回転させたり、と結構激しく動くことが多いんですよね。(ブーは吹奏楽部のことを、体育会系集団だと認識しています。笑)
友達の所属していた吹奏楽部も部活動に熱心で、さまざまなパフォーマンスを行っていたのですが、先輩の吹いていたチューバのベルの部分が頭にクリーンヒットして大きなたんこぶが出来たそうです。
金管楽器のベルって結構鋭いし、チューバって大きいから、怪我がたんこぶ程度で済んで良かったね…。(汗)
演奏中以外でもハプニング!
ドレスって大変!
男性の演奏者の方はドレスを着る機会はないと思いますが、女性の演奏者は少なからずドレスを着る機会があるのではないでしょうか?
本番用の衣装なので着慣れるほど身に着けることはないでしょうし、見栄えが良いように裾も引きずるような長さだったりするので、とても動きにくいだろうなぁ…と思います。
さらに、衣装に合わせたステージ用のヒールが高い靴を履いていることが多いので、歩くだけでも注意が必要です。
裾を踏んでしまうとコケてしまったり、裾の部分から衣装が破れてしまったり(貸衣装だったら大変)、袖のないチューブトップタイプのドレスだと胸の辺りがズレたり最悪の場合は半分脱げてしまう、なんてハプニングはどの演奏会でもあります。
踏んでしまうことだけではなく、ステージやステージ袖の床に潜む釘などの突起物に引っ掛けてしまい破れてしまったケースも見たことがあるので、ドレスは注意することが多くて大変ですね!
慣れた靴が履きたい。
ブーが通っていた学校やピアノ教室では、普段履いている靴と演奏するときに履く本番用の靴は分けるように言われていました。
本番用の靴は見栄えが良くないといけないので、皮製だったりヒールの部分が高かったりと『普段ばき』の物とは全然違う靴で舞台に上がることになります。
慣れない靴を本番だけで履くのはリスクが高いため、練習やリハーサルでも履いて慣らしてはおきますが、音楽では演奏のほうが重要なので、モデルさんがランウェイを歩くために練習するようにみっちりと履き慣らすわけではありません。
なので、紹介されて舞台袖から演奏ポジションに行くまでに、靴が脱げちゃうなんてこともあります。
クールビズ求む!
私のなかで、舞台上で辛いことの上位に入ってくるもの、それは…
春夏秋冬に関係なく照明のせいで舞台上が異様なほど暑い!
ということです。
明るさの範囲や、調節・交換が難しいという問題などがあるため、舞台照明のLEDライト化が進んでいないホールも多く、今後も演奏者の負担になると思われます。
1曲くらいなら我慢できるけど、それ以上になると汗が止まらずビショビショな状態での演奏になるので、とっても恥ずかしいんですよね~。
演奏人生最大のハプニング!
最後に、ブーが音楽を通して経験した1番のハプニングを紹介します。
それは短大生の頃に開かれた発表会での出来事です。
発表会当日は、朝から天気が悪くジメ~とした嫌な気候で、さらに午後からの本番の時間が近付くにつれて雨脚が強まっている様子でした。
上手く弾けるか心配で、外の空気を吸いにいっても雨のせいでテンションが上がらないし、むしろ嫌な予感しかしません。
リハーサルが終わりお昼ごはんを食べていると、あっという間に開演時間となり、ドキドキ・ソワソワして落ち着かない中、とうとう自分が演奏する順番がやってきました。
先生から曲の紹介があり、それが終わると先生と入れ違いに舞台上のピアノの前に歩いて行きます。
お辞儀をして椅子に座り高さと距離を調節して、いざ弾き始めました。
いつもは指が上手く回らないところも結構調子よく演奏できて、『あと半ページで終わりだ!カッコよく仕上げるぞ!』と思った次の瞬間…
ズーン…という地鳴りと共に、会場がパッと一気に暗くなったのです。
なんと雷による停電でした!
咄嗟のことで状況が読み込めず、パニックで椅子から一瞬腰が浮きかけましたが『上手く弾けてないから、電気を落とされちゃったのかな?』と、頭では意外と冷静に考えているうちに演奏を終えていました。
お客様方は、すぐに非常灯がついたことにより演奏上の演出だと思ったらしく、まったくと言っていいほど騒ぎにはなりませんでしたし、照明自体も停電のアナウンスのあとすぐに復旧しましたが、ブーの後に控えていたお姉さま方は『先生!私、怖くて弾けません!』『落ち着くまで時間を下さい!』とパニック状態。
ですが先生の『何を甘えたことを言っているの!プロ意識を持ちなさい!この日のために練習してきたんだから、電気が点いていようがいまいが鍵盤なんて見ずに演奏できるでしょ!あなた達ならできるはずよ!』という叱咤激励のおかげでお姉さま方も気力を持ち直し、どうにか発表会を終えることが出来たのでした。
でも、チョットだけで良いからさ…電気が消えた状態でも演奏を全く止めなかったブーを誰か褒めてよ!(笑)
絶対に血圧上がったな…
学生の頃(演奏者として現役だった時代)は、演奏のたびに『あんな事やこんな事が起こったら…』と考えてしまうと緊張しすぎで発狂しそうになるので、本番前には絶対にハプニングのことは考えないように過ごしてきました。
そんな風にハプニングをなるべく避けてきたので、今回いろいろなハプニングを思い出して書いてみて、自分が経験したことじゃなくてもドキドキして手に汗握ったブーなのでした…。
演奏中に起こってほしくないハプニング!<その①>
ようこそ!ブーです。
今回は2回にわたって、「演奏中に起こってほしくないハプニング」をご紹介します。
私の主観ですが、秋から冬にかけて<発表会・合唱コンクール・音楽祭・演奏会・コンサート・リサイタル・ライブ>などのイベントが増え、ジャンルは違えど生の音楽・生演奏に触れる機会が増えるのではないでしょうか?
生演奏は、普段聴いているような録音された音とは違い、会場に赴いて自分の目と耳で直接観たり・聴いたりするため、演奏者の表情や雰囲気、そして息遣いまで聴こえてきて、音楽という芸術をより一層身近に感じとることができて素敵ですよね。
ですが、そんな『生演奏』も音楽的に考えると良いことだけではありません。
生の演奏ということで、演奏者によって奏でられる「音」の部分だけではなく、演奏という人が起こす「行動」自体もリアルな時間で進みます。
なので、ミスしてしまうと即座に演奏した音楽に反映されてしまうという事です。
好んでミスをする人はいないと思いますが、ミスの原因となる予想外の出来事=ハプニングはいつ起こるかわかりません。
今回はそんなハプニングの中で、自分が体験したものや聞いたことのあるものをまとめてみました!
是非ご覧下さい。
ピアノ演奏でハプニング!
大事な場面で曲を忘れる
ピアノの演奏をする場合は他の楽器とは違い「暗譜」と言って楽譜を覚え、暗記した状態で演奏しなければいけない時があります。(発表会・コンクール・演奏会など…)
演奏者は本番に向けて最大限に覚える努力をしますが、普段の環境と違う大事な場面ということで緊張したり集中力を欠いてしまうことで、暗譜したのに頭の中が真っ白になりド忘れしたみたいになってしまうことがあるんですよね。
上級者になると忘れた部分は上手く飛ばして弾いたり、少し誤魔化すためにアレンジしたりと「臨機応変に対応」することが出来ますが、初心者の頃はそんな余裕はなく、つまづいたところを何度も弾きなおしたり、完璧に指が止まってしまって硬直なんてことも…。
ブーは短大の入試のときに、緊張のあまりサビの部分2ページ半をすっ飛ばして弾いてしまったことがあります。(汗)
ピアノ線が切れる
ピアノの音が鳴る部分に張られている弦は『ピアノ線』とも言います。
この『ピアノ線』は強い力(1本あたり約90kg)でピアノに張られているので、稀にピアノの新しい・古い、価格が安い・高いに関わらず「ブチッ!」と切れてしまうことがあるんです。
よく、ドラマや小説などのサスペンスもので《殺人事件の凶器》として扱われることがありますが、現実世界のピアノに張ってあるピアノ線は急に切れても怪我をしないような仕組みになっているので、安心して良いです。
とは言え、怪我はしなさそうだと分かっていても、切れてしまったピアノ線が他の「正常な弦」の部分に当たると雑音が生じたり演奏者の気が散ってしまい、結果的に演奏の邪魔になるので、なるべく早く取り除くことがオススメします。
弦楽器のハプニング!
弦楽器の弦や弓が切れる
ピアノと同じように弦が張られていて音が鳴る楽器でも、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスなどは弓で弦をこすり演奏する楽器(擦弦楽器)です。
そのため、値段の高いものや耐久性があるものを使っていたとしても、弦や弓の毛の部分は消耗品となります。
消耗品と言われるだけあって、演奏中に切れてしまうことがよく有るんです。
弓に張られているのは馬の毛で、切れてしまうと音の出が悪くなり演奏もしにくくなるので「毛替え」と言って毛の部分を取り替えなくてはいけません。
弦は楽器に対してバランスよく張られているので、1本でも切れてしまうと今まで確立されていたバランスが崩れてしまい、他の弦もつられて切れてしまうことがあるので全て張り替えたり、切れなくても音がズレてしまうので全ての弦を調節する必要があります。
上に書いた理由から、弦や弓の毛の部分の予備をあらかじめケースの中に用意している演奏者の人が多いですが、弦楽器の多くは木で出来ていて、湿気などによって多少の伸縮性のある楽器のため、音の高さが安定するまでに時間がかかるので注意が必要です。
弦楽器の弦が切れた話で1番有名なものは、1986年のタングルウッド音楽祭でヴァイオリニストの五嶋みどりさんが経験した「ヴァイオリンのE線が2度も切れるというアクシデント」だと思います。
映画「ウエストサイド物語」の作曲で有名な巨匠レナード・バーンスタインの指揮というだけでも話題性に富んでいるプログラムですが、ソロを任された五嶋みどりさんは当時たった14歳の少女で、小柄なため2/3サイズの楽器を使っている状態でした。
そんな中で起こったハプニングであるにもかかわらず、冷静な判断で自分の弦が切れた楽器の代わりに大人用のヴァイオリンを見事に弾きこなす奇跡的な演奏だったので「タングルウッドの奇跡」と呼ばれ、アメリカでは教科書に載るほどの武勇伝となっています。
声楽家のハプニング!
気持ちよく歌いすぎて、伴奏と合わなくなる
クラシックの「声楽家あるある」だと思いますが、ブーも学生のときに何度か体験した出来事です。
歌を歌うときには、アカペラや弾き語りでない限りは自分以外の演奏者=伴奏者が必要になります。
伴奏を頼むときには、もちろん自分の歌に合わせてくれる人や気の合う人に頼みますが、それでも自分ではない他人なので呼吸を合わせるために入念な練習をして本番に臨まなければいけません。
ですが、本番という状況で変に気分が高まって、普段の練習やレッスンでは簡単に出ない高音の部分が『スパーンッ!』と出るというミラクルが起きたりすると、その入念な練習を忘れて気の向くままに好きなだけ音を伸ばしてしまうクセが出てしまいます。(伸び伸び歌うのが気持ちいいんだな。笑)
自分自身も楽譜と違うように歌ってしまったことに焦るけど、予定にない場所でリズムを乱される伴奏者の方がもっと焦るでしょうね。(伴奏をしてくれていた友達、申し訳ない!汗)
歌詞を忘れてしまう…
クラシックの声楽で使われる曲のほとんどは、イタリア語やドイツ語、フランス語や英語など、外国語ばかりです。
理由は、クラシックの基礎となる西洋音楽を用いた日本歌曲の歴史が浅く、作曲家の人数と作曲された数が共に少ないからなのですが、馴染みがない外国語の歌詞はとにかく覚えるのが難しい!
そのため1番2番といったように、歌詞が多いものだと歌っていて言葉が混ざってしまったり、混ざってしまったことにより何番を歌っていたか分からなくなり無限ループに突入してしまう事もあります。
管楽器のハプニング!
緊張しすぎて…
ブーの知り合いで、トランペットの演奏中に緊張のあまり過呼吸になった人がいました。
慣れている人はいとも簡単に吹いているように見えますが、実際はかなりの肺活量が必要だったり、音量や長さによって息の量もコントロールしなければいけません。
考えただけでも息苦しくなりそうですが、それに加えて緊張してしまうと息があがるので過呼吸になり易いのではないかと思います。
打楽器のハプニング!
銅鑼を思いっきり叩きすぎて!
実際に、ブーがお客さんとして行ったオーケストラのコンサートで起こったハプニングです。
オーケストラがコンサートで演奏する曲目は、大体の場合が最後に1番盛り上がるもので、フィナーレに相応しい音楽的な華々しさと、それに比例した音量の大きい曲を持ってくる傾向にあります。
そのコンサートも例に漏れず最終曲がものすごく盛り上がるもので、打楽器では大太鼓と銅鑼という、楽器の中では1、2を争うほど大きな音がなる楽器が同時にガンガン鳴らされるような曲だったのですが、ハプニングはそのクライマックスで起こりました。
打楽器奏者が会場の雰囲気に飲まれて思いっきり銅鑼を叩いたため、普段にはない位の反動がつき、2発目を叩こうとしたときにスカって(空振りして)しまったのです。
演奏を観ていて、『あんなに激しく叩いて大丈夫なのかな?』と思っていた矢先の出来事だったので、やっぱりな…という感じでしたが、閉演後はその話題で持ちきりでした。
休みが多すぎて…
打楽器の先生から聞いたハプニングを紹介します。
先生がまだ若く駆け出しの演奏者だったころ、アルバイトとして地域のオーケストラに参加していたそうです。
個人練習などで時間をとられる割にオーケストラのお給料は安く、他のアルバイトも掛け持ちしていたため精神的にも身体的にも疲れていて、常に眠たい状態が続いていました。
オーケストラでも弦楽器や管楽器はメインの音の流れを担当しますが、打楽器は脇役扱いでお休みが何小節(多いときには何ページ)も続くことがあるため暇を持て余し、うっかり演奏中に居眠りしてしまったのです。
眠っていたせいで最後に出す重要な音を出し忘れ、指揮者に睨まれてしまったと言うことでした。
練習じゃなくて本番で居眠りしていたというのだから、よっぽど疲れていたんでしょうね…。
マリンバ演奏って意外と激しいんだね。
ブーは学生のころ、自分の楽器の分野に限らず人の演奏を観るのが大好きだったので、時間があるときには色んな人の練習を見せてもらっていたんです。
その日も放課後に、友達が実技試験(演奏のテスト)の学内演奏会に向けてマリンバという大きな木琴の練習をしているのを見学させてもらっていました。
聴いているうちに、ふと疑問に思ったことを何気なく彼に問いかけたのです。
『ねぇねぇ。そんなに激しく叩いてるけど、バチって折れたりしないの?』
そのときの返事は『古いのとか、先端が擦れて削れてきたら定期的に替えてるし、そうそう折れたりしないよ。』というものでした。
そして実技試験当日、彼の4本のバチを使ったマリンバ演奏はとても迫力があり、皆が聴き惚れているようす…。
曲がクライマックスに近づくにつれて演奏も激しくなり『今日はバチ同士がカチカチと、よくぶつかり合ってるな』と思った次の瞬間…
バキッ!!
ポト…コロコロコロコロ…
会場『シーン…』
恐れていたバチが折れるというハプニングが実際に起こってしまったのです。
私を含め、観客は『えっ!?』という感じで一時騒然としていましたが、彼が手をほとんど止めることなく予備として置いていたバチを即座に掴み直し、何事もなかったかのように演奏を続けたことにより、最後は観客全員に《良い演奏だった》という印象を与えました。
肝が据わっていたのか?はたまたプロ根性がなせるワザなのか?ということは聞いてみなかったので分かりませんが、とにかくブーが『折れないの?』と聞いたせいで本当に起こってしまったんだと責任を感じ、申し訳なく思ったので『本番前にあんなこと聞いてごめんね。』と謝りました。
友達がその言葉に対して『マリンバに限らず、打楽器のバチは折れるときは折れるんだよ』と悟った表情で優しく返してくれたことは一生忘れません。(笑)
次回もお楽しみに!
ハプニングとひとくくりに言っても、楽器ごとに「人的ミス」だったり「楽器の不具合」だったりと、色々種類あったので2回に分けました。
次回もお楽しみに!
「私」が秋に聴きたい音楽。〈その②〉
ようこそ!ブーです。
前回に引き続き、今回も「私」が秋に聴きたい音楽を紹介します!
〈その①〉も見てね。↓
セルゲイ・ラフマニノフ
ラフマニノフはロシア出身の作曲家として有名ですが、その他にもピアニスト・指揮者としても功績が残る音楽活動をしていました。
彼の曲は、聖歌や民謡などの響きに似せた重厚でロマンティックな和音を使っていたり、他の演奏者が嫌がるくらい音から音への幅が広くダイナミックな和音を使っています。
それは、ラフマニノフ自身の手が大きかった為、「同じ音を使った和音」でも順番を変えて幅広く演奏できたからです。
ダイナミックな和音を使っているからと言って大味な曲を作っていたわけではなく、「ピアノ協奏曲 第2番」や「ヴォカリーズ」などは繊細さが際立っています。
この2つの作品は、メロディをより際立たせるために普段は豊かな響き(ハーモニー)を生み出す音の密度や演奏楽器などが減らしてあり、その洗練された繊細で切ないメロディは聴いていて神聖さや神々しささえ感じます。
ラフマニノフ自身も『私はただ、自分の中で聴こえている音楽をできるだけ自然に紙の上に書きつけるだけ』と語っているので、曲を聴くことでラフマニノフという人物の繊細な一面を垣間見ることができます。
「ピアノ協奏曲 第2番」は全3楽章で構成されています。
演奏は3曲合わせて35分ほどです。
第1楽章ではロシアらしい荘厳で重々しい響き、第2楽章では静かな湖畔をゆっくりと歩くような瑞々しさを感じ、第3楽章はフィナーレに相応しい華やかな印象の他に1楽章と2楽章の主要なモチーフ(模範にしたメロディ)が散りばめられています。
3曲とも違った良さがありとても素晴らしい作品ですが、秋の感傷に浸りたいときには無性に第2楽章が聴きたくなるんですよね。
上ではピアノ独奏を紹介しましたが、元々「ヴォカリーズ」という曲は声楽のために書かれた歌曲です。
歌曲と言っても、本来「ヴォカリーズ」という言葉の意味が、『A、あ U、う…』などの母音を使って歌うことや明確な発音の歌詞がない曲を指すので、この曲にも歌詞がありません。
このことから他の楽器のために編曲するには都合がよく、また人気のある曲のため多く編曲がされている作品です。
こちらでも紹介しました。↓
歌ありも良いのですが、より響きが統一されているように感じるので、秋に聴きたいのはピアノ独奏ヴァージョンなんですよね。
エリック・サティ
フランスの作曲家であるサティの作品は〈家具の音楽〉と呼ばれていました。
『家具のように部屋の中に自然と溶け込んでいる』ということで、BGMの先駆けとも言われています。
ゆったりとした曲調でフランスの作曲家らしいアンニュイな雰囲気を醸し出す「3つのジムノペディ」や、愛をテーマにした情熱的でありつつも少し切ないメロディの「ジュ・トゥ・ヴー」などは読書用のBGMとして最適です。
何といっても『家具のような音楽』なのですから、耳に心地好い音量で聴く分には読書の邪魔をするようなことがないのは当たり前か!と1人で納得してしまったブーなのでした。(笑)
ジムノペディはこちらでも紹介しました。↓
私の勝手な意見ですが、サティの作品はフランスという国のアンニュイな雰囲気そのものを表したような独特のテンポと響き、そして揺らぎをもっているので「秋」という季節を強く感じるんですよね。
「Autumn Leaves/枯葉」
元々シャンソンの代表曲と言われている「枯葉」は、今ではジャズのスタンダードナンバー(定番曲)としても有名です。
大変人気があるためシャンソンやジャズに限らず、色々なジャンルのアーティストさんがカヴァーしており、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
私が好きなアレンジは、ジャズピアニストのビル・エヴァンスが組んでいたトリオの演奏です。
基になったシャンソンには歌詞があり、『夏に過ごした恋人達の甘い思い出を、冬に向かっていく秋の冷たい北風が運び去っていってしまう』という内容で、恋人達の別れを切なく歌っています。
(細かい紹介はしませんが、聴き馴染みがありシャンソンらしさが1番出ているのは、フランスのシャンソン歌手エディット・ピアフの歌です。)
オリジナルである歌のヴァージョンとは違い、ジャズで演奏されるときには切なさよりも軽快さが生まれます。
そのため、同じ曲でも聴いていて別れを想像させるような重苦しい気持ちにはならず、温かいコーヒーでも飲みながら紅葉を眺めたり、ドライブに行くときにかけたりと、とにかく「秋」という季節を満喫したいときに聴きたくなる1曲です。
交響曲 第5番 第4楽章 アダージェット(マーラー)
グスタフ・マーラーはオーストリア出身の作曲家ですが、『私は3重の意味で故郷がない人間だ。オーストリア人の間ではボヘミア人、ドイツ人の間ではオーストリア人、そして全世界の国民の間ではユダヤ人として…』と語っています。
要は「どこに行っても余所者扱いされる」ということです。
この言葉だけでも十分にツライ人生が想像できますが、このこと以外にもマーラーを精神的に蝕んでいたものがありました。
幼い頃に受けた父親からの暴力や幼少期に亡くなった兄弟達のこと、自分自身の病気、年の離れた妻からの愛が信じられず疑心暗鬼に陥ったり、そして執着と言っても良いほど愛した母の死によって、「愛」という感情に対してナーバスになっていたのです。
そんな愛に飢えて人生の悲しみをたっぷりと抱えていたマーラーだからこそ作曲できたのが、この「交響曲 第5番 第4楽章 アダージェット」別名「愛の楽章」と言われています。
第4楽章だけでも11分~13分程度と長い曲ですが、よかったら聴いてみてください。
自然とため息が出るほどに美しい曲なので、秋の夕暮れ時や月明かりを眺めながら感傷に浸りたいときに聴きたくなります。
タイスの瞑想曲(マスネ)
フランスの作曲家ジュール・マスネの書いた「タイスの瞑想曲」は、憂鬱なときに聴きたい曲としても紹介しました。↓
ゆっくりと紡がれる甘美で官能的な響きと、ヴァイオリンが高音で奏でる切なさで胸が張り裂けそうなメロディは秋の物悲しい雰囲気にもよく合います。
元々はオペラの曲目の1つなのでオーケストラのために作曲されていますが、人気の曲なのでヴァイオリンのソロコンサートなどではピアノ伴奏に編曲され演奏することが多いです。
秋じゃなかったら編曲されたものでも普通に聴くのですが、オーケストラの方が音に重厚感や深みが出るため、私が秋に聴きたいのはオーケストラ演奏のオリジナルヴァージョンです。
「カヴァティーナ」
「カヴァティーナ」は1978年公開の“ディア・ハンター The Deer Hunter”という映画のテーマ音楽です。
この映画は、ベトナム戦争での過酷な体験が原因で心身共に深く傷を負った《アメリカの若き3人のベトナム帰還兵達》の生と死や、彼らと仲間たちの友情を描いています。
ギターが奏でる哀愁のメロディと、それに寄り添うオーケストラやフルートの響きがさらに切なさを演出します。
月の綺麗なこの季節の夜にこの曲を聴くと、センチメンタルな気持ちになって涙が止まりません。
「大人」だからこそ、秋をテーマにした童謡を聴いてほしい。
日本では「ちいさい秋みつけた」「紅葉」「夕焼け小焼け」「まっかな秋」「里の秋」「虫のこえ」…など、秋をテーマにした童謡が数多く存在していますよね。
子ども達にもわかり易いように作られている童謡は、お店のBGMなどでかかっているのを聴くと、大人でも『あぁ…秋だな。』という風に、季節の移り変わりを感じるのではないでしょうか?
そんな秋の童謡の中で特に私が好きなのは「小さい秋みつけた」です。
子どもに聴かせたり歌わせたりするには些かメロディが切な過ぎるように感じますが、秋の物悲しい雰囲気そのものを表している名曲だと思います。
この曲を聴くと、なぜか子どもの頃に感じていた秋の雰囲気や匂い、感情まで甦ってくる気がします。
丸くて大きなどんぐりやイガから顔を出した栗が地面に落ちているだけでワクワクしたり、柿の実がカラスに食べられているのを見て『カラスも柿の色を見て、美味しい時期がわかるんだな…』と無駄に感心したり、落ち葉が水に濡れて土になる前の何ともいえない匂いを感じたり、秋の夕暮れの美しさに胸が熱くなったりと、子どもの頃は純粋に季節を楽しんでいたなとしみじみ感じるんですよね。
なので大人になった今、ひとときだけでも秋という季節の楽しさを思い出させてくれる童謡を聴いて欲しいと思うのでした。
「私」が秋に聴きたい音楽。〈その①〉
ようこそ!ブーです。
今回は、秋にオススメの音楽…ではなくて、「私」が秋に聴きたい音楽を2回にわたって紹介しようと思います。
私にとって秋は、夏が終わった切なさと冬の始まりの物悲しさ、木々の葉が色づき散っていく哀愁などを感じたり、物思いに耽ったりするには本当に良い季節なので、四季の中では2番目に好きです。
(ちなみに1番好きなのは冬です。イラストの通りブタさん体型なので…。汗)
そして秋といえば、ゆっくりと読書をしたり、適度に運動したり、時には芸術に触れたり、ドライブで遠くに行ってみたり、食べ物が美味しく感じるのでついつい食べ過ぎたり…と、いろいろな楽しみがありますよね?
せっかく四季が楽しめる日本という国に生まれ育ったのだから、季節に合わせてその時期に聴きたい音楽に包まれながら過ごしたいと思います。(聴くのは海外の音楽ばかりだけどね。笑)
カーペンターズ
Carpenters(カーペンターズ) は1969~1983年まで活動していたアメリカ出身の、兄のリチャード・カーペンターと妹のカレン・カーペンターの兄妹によるポップス・デュオです。
(カーペンターは大工という意味があり、アメリカでは普通にある苗字らしい…)
1983年に妹のカレンさんが拒食症による合併症で亡くなり、デュオとしての活動は出来なくなりましたが、それまでに数々の名曲を残しているので、今でも聴く機会が多いと思います。
どの曲も素敵ですが特に好きな曲は、1997~2005年まで放送されていたTBSの教育バラエティ番組「学校へ行こう」の『未成年の主張』というコーナーで流れていて有名になった「
低音と高音を巧みに使った作曲とカレンさんの優しい歌声は、秋の黄昏時に聴くと心にジーンと響きます。
アンドレ・ギャニオン
André Gagnon(アンドレ・ギャニオン、1942年8月1日~)はカナダ出身の作曲家で、ピアノ奏者でもある人物です。
ギャニオンさんをご存じない方は多いと思いますが、彼の音楽はヒーリングミュージックという特殊なジャンルに属しているので、BGMとして私たちの身の周りでもよく流れています。
親日家という経緯から、彼の曲が日本のドラマでも使われたりしているので、1度は聴いたことがあるかもしれませんね。
1番有名なのは、日本の大手車メーカであるトヨタのCM〈TOYOTOWN〉シリーズや、BGMによく使われている「めぐり逢い」という曲です。
懐かしさと切なさを感じたり、真綿に包み込まれるような温かく優しい気持ちになるのは私だけではないハズ…。
寒くなり始め人肌が恋しくなってくる秋にピッタリの曲です。
フランツ・リスト
『ピアノの魔術師』と呼ばれるリストの作品では「コンソレーション
(好きな曲がなぜか全部3番目!笑)
どの曲も、切ない響きで涙を誘いますが、特に「ため息」という曲は、人生経験豊富なフジ子・ヘミングさんの演奏が胸に響きます。
秋という季節はどこか物悲しくて思わず『ため息』をついてしまう…、そんなときにこの曲が聴きたくなります。
フレデリック・ショパン
『ピアノの詩人』と呼ばれたショパンの作品では「ノクターン」と「エチュード」が秋の印象によく合うと思います。
「ノクターン」は日本語で「夜想曲」を指し、秋の夜長に聴くにはロマンティックで素敵ですよ。
ショパンの作品では、第2番と第20番が有名です。
同じ「ノクターン」というタイトルでも、優雅で優しい響きのものから、切ない響きのものまで様々にあるので気持ちに合わせて聴くことができます。
「エチュード」は日本語で「練習曲」を指しますが、ショパンのエチュードは練習というには難易度が高いため、演奏会やコンクールなどの大舞台でもよく演奏される作品です。
全24曲のエチュードを集めた「エチュード曲集」では、ボンヤリ聴くというよりは元気を出したいときに聴きたいような激しい曲も収録されていますが、その中でも〈12の練習曲 作品10〉第3番「別れの曲」や第6番(タイトルはありません)、〈12の練習曲 作品25〉第1番「エオリアンハープ」のようにメロディが美しく胸に迫る切ない曲もあります。
ショパンは1849年10月17日に39歳という若さで亡くなっているので、『秋の木の葉のように儚い人生だったんだな』と、ついつい考えてしまい尚更切ない気持ちになります。
クロード・ドビュッシー
私は、ドビュッシーが大好きなので過去の記事でも紹介しましたが、特に好きな「夢」、「月の光」、「亜麻色の髪の乙女」などはこの季節にも聴きたい、しっとりと落ち着いた曲調が素敵なので紹介させてください。
「夢」という曲はタイトルの通り、夢の世界を漂うようなフワフワした緩急とメロディが魅力のピアノ曲です。
秋の夜にうとうとしながら聴くと、ロマンティックで素敵な夢が見れそうです。
こちらでも紹介しています。↓
「月の光」は、ピアノ独奏作品『ベルガマスク組曲』の中の1曲です。
月が美しく見えるこの時期だからこそ、この甘美なメロディを聴きながら空を眺めたいと思います。
こちらでも紹介しています。↓
「亜麻色の髪の乙女」は、ピアノ独奏作品の「前奏曲集」に収録されている8番目の曲です。
切ない響きとゆっくりなテンポは、物思いに耽るときにもピッタリです。
こちらでも紹介しています。↓
ドビュッシーの音楽的なジャンルである印象主義音楽は「詩・ポエム」や「絵画」から着想を得ているものが多いので、芸術の秋にピッタリなのではないでしょうか。
ドヴォルザーク
私が思うに、ドヴォルザークはヒゲや顔の造形が独特なので、少々「強面・コワモテ」に見えると思います。(笑)
こんな顔↓
ですが彼の作った曲は、母親の胸にいだかれているような懐かしさや優しさを感じることができるので大好きです。
その中でも「我が母の教えたまいし歌」や、日本では〈遠き山に日は落ちて〉で有名な交響曲 第9番 “新世界より” 第2楽章「家路」は哀愁を感じない人はいないのではないか?と思うくらいに美しいメロディが魅力的で、この時期になると無性に聴きたくなります。
なぜか、夕焼けを背にして『さぁ、お家へ帰ろう』という情景を思い浮かべてしまいます。
みなさんは、秋に聴きたい曲がありますか?
今回は、「私」が秋に聴きたい音楽を気の赴くままに紹介しました。(次回もそうなると思います。笑)
みなさんもこの時期になると『無性にこの曲が聴きたくなる』もしくは『この曲が頭の中を流れる』というようなことが有るのではないでしょうか?
それがたとえ秋っぽくない曲でも、『自分にとってこの曲は秋だ!』と思うだけで特別感が味わえて楽しいですよね!
その音楽に対する純粋な感覚をずっと大事にして欲しいと思います。
ピアノ初心者におすすめ!ギロックの魅力。
ようこそ!ブーです。
今日は「ギロック」という人物と、ピアノ初心者におすすめしたいギロックの魅力を紹介します。
ギロックという人物
William L. Gillock(ウィリアム・ギロック、1917年7月1日~1993年9月7日没)はアメリカ出身の作曲家で、音楽教育分野の第一人者(音楽教育家)です。
世界中で使われるような「ピアノ初心者向けの練習曲集」を作曲した、ツェルニー、バイエル、ブルグミュラーなどの有名な作曲者は1800年代に生きていたので、1900年代に生きたギロックは練習曲業界では新参者といえます。
彼は、21年もの間「ピアノ講師」として音楽教育に携わり、その経験から作曲活動だけではなく全米音楽倶楽部連合会の会長を務め、ピアノ教師のための講習会でアメリカ全土を訪れました。
ギロックの作品は教育用の音楽ということなので、作曲の内容は古典的・初歩的な技法を使うという縛りがありますが、そのなかでも『美しくロマンティックな音楽を工夫して書いていた』という点がシューベルトと似ています。
ロマン派時代初期の作曲家であるシューベルトは、それまでの「古典的な古い考えの音楽」を「ロマンティックで詩的・叙情的な音楽」へと変えた先駆者だったので、理由は違いますが同じような境遇にあったと考えられたため、ギロックは「教育音楽作曲界のシューベルト」という通り名が付けられました。
そんなギロックの作品でおすすめなのは「叙情小曲集」と「子どものためのアルバム」です。
この2つの曲集は初心者でも弾ける難度のため、今では演奏会やコンクールなどでも演奏されるようになりました。
ピアノ初心者におすすめしたいギロックの魅力
ギロックをピアノ初心者におすすめしたい理由は4つあります。
- 1つ目は、曲が難しそう(あたかも名曲のよう)に聴こえること
- 2つ目は、難しそうに聴こえるのに初心者でも演奏できる難度(簡単)であること
- 3つ目は、演奏者の欲求に応えていること
- 4つ目は、ピアノを始めたばかりでも色んなジャンルの音楽に挑戦できること
が挙げられます。
魅力その①「曲が難しそうに聴こえる」
ギロックの曲を演奏すると、難しく聴こえる曲ばかりなので「名曲を弾いているんだ!」という精神的にプラスの感情(錯覚?)が持てるので、ピアノを始めたばかりの人のモチベーションを上げてくれる効果があると思います。
名曲を演奏すると「こんなに難しそうな曲を弾いている自分ってスゴイ!」という演奏者の自信に繋がり、その自信によってピアノを演奏することの楽しさがめばえたり、練習を頑張ろうという気持ちまでも引き出してくれるので、スキルアップへの近道ではないかな?と私は考えるのです。
魅力その②「初心者でも演奏できる難度」
『難しい曲に聴こえるのに、簡単に演奏することが出来るわけない!』と思われるかもしれませんが、ギロックはその作曲技術によって初心者でも演奏できる難度の曲を書くことができました。
ショパンの「別れの曲」の雰囲気に似た「色あせた手紙」や、ドビュッシーの「月の光」に寄せた同じ題名の「月の光」などが良い例だと思います。
動画の9番目が「色あせた手紙」、11番目が「月の光」です。
このような名曲に似せた作曲ができるカラクリは、和音という「音のかたまり」に秘密があります。
和音の構成を名曲と同じものにしているので曲全体の響きがとても似ており、聴衆は演奏者が名曲を演奏しているような錯覚を起こしますが、実際には名曲に使われている和音をなるべく簡単に弾けるように簡略化したものなので、演奏のコツさえ掴めば名曲ほど難しくはありません。
あたかも難しい名曲を演奏しているように聴こえますが、1曲の演奏時間が1分程度と短い曲が多いということと、子ども達や初心者の方にも弾けるような程よい難易度のものばかりなのでおすすめです。
難度の他に、タイトルから曲の内容を想像することができるという事もピアノ初心者にとっては心強いことだと思います。
演奏に必要な情報の1つとして、ギロックはその曲の雰囲気をタイトルにしていることが多いのです。
このことは、初心者の方に有りがちな『曲のイメージがわからないから、どのような雰囲気で、どんな風に感情をこめて弾いていいのかがわからない。』といった悩み事の解決にも繋がります。
魅力その③「演奏者の欲求に応えている」
ピアノ初心者の憧れといえば、ペダリング(音を伸ばすペダルを踏むこと)や手を交差させるテクニックなどが挙げられますが、これらは普通の練習曲だと中級~上級にならないと出てこないものです。
ですが、ギロックの練習曲だとこういったテクニックが多く見られます。
『難しい曲に挑戦してみたい、』という演奏者の欲求を満たしてくれるということで、モチベーションが上がり演奏意欲の向上に繋がりますよ。
魅力その④「色んなジャンルの音楽に挑戦できる」
ピアノを始めた頃は「音楽を1つのジャンルに絞り、それを重点的に練習することが演奏技術を上げるために効率が良い」と考えられている節があります。
ですが、それでは演奏者にモヤモヤしたような気持ちが生まれてしまうときがあるんです。
『このジャンルは嫌いじゃないけど、ちょっと飽きてきたなぁ』なんてことありませんか?
ですが、ギロックはクラシックだけでなく、ジャズやブルース、民族音楽などを織り込んだ曲作りをしているため、色んなジャンルの音楽に挑戦することができるので飽きが来ず、このことは演奏者にとって大きな魅力となることでしょう。
『オシャレなジャズバーとかで流れていても不思議じゃないなぁ~』と思う曲もありますよ!
他にも、1台のピアノを2人で演奏する連弾曲などバリエーションも豊富なので、ギロックの作った作品は発表会などで華やかさを添えてくれること間違いなしです!
ギロックさん、もっと早く出会いたかったよ…。
今回ギロックを紹介した理由は、自分が初心者のときにギロックの存在を知らなかったからです。
私が初心者だった頃は、ハノン、ツェルニー、バーナム、バスティン、バイエル、ブルグミュラー、ソナチネなどの楽譜を使っていました。
もちろん、上に書いたものは「初心者が使う順当な楽譜」なので、演奏技術が上がることは間違いなく、それを実感しながら練習することは楽しかったです。
ですが、私が求めるような「好きな世界観の音楽」という点では満足感を感じることはありませんでした。
上に書いたギロックの魅力をもっと早く知っていたら、私の演奏技術も上がったのかな?と思うと少し悔しいです。(笑)