「米津玄師」って、徳の高いお坊さんみたいな名前だよね。《その①》
ようこそ!ブーです。
今回は、2回にわたってシンガーソングライターの米津玄師さんをご紹介しようと思います。
米津さんの作った音楽を聴かない日は無いんじゃないかと思うくらい、日本中の其処彼処で彼の曲が流れていますよね?
実のところJ-POPに関してはかなり疎いので、去年の今頃は米津さんの名前と顔が一致しないくらいだったのですが、毎日無意識に聴き続けて今では彼が作り出す音楽の中毒者になりつつあります。
(きっと聴きすぎて無意識に洗脳されているんだな…笑)
昨年に引き続き、今年も映画やドラマの主題歌などを担当し大活躍の米津さんなので、ご紹介するには今更感があるとは思いますが、どうぞお付き合いください!
米津玄師という人物について
米津玄師さんは日本のシンガーソングライターで、1991年3月10日生まれのO型、身長はなんと188㎝もあります。
羨ましいほどの高身長と、目を隠すような髪型、そして独特な服装のセンスが相まって、まるでモデルさんみたいな容貌でとても素敵ですよね。
(お坊さんみたいな名前から勝手にイメージしていた「私の中の米津玄師像」とのギャップに、初めて見たときにはかなり驚きました…。笑)
出身地は徳島県の県庁所在地である徳島市となっていますが、本人曰く『徳島の片田舎、ものすごく狭い世界』とのことで、学生の頃は『何にも無いところ、音楽や色んな事をやっていても話の合う人があんまいない、早くここから出て行きたい』と思っていたそうです。
見た目に反して(?)お酒が大好きで、有名YouTuberさんや有名人との豪華な飲み会の写真をネットなどで拝見することができます。
(食べ物ではお寿司が好きで、嫌いなものはトマトです。)
生まれ変わったら『1回女の子になってみたい』そうで、自分とは全然違う生き物であるという感覚と、今の自分では低くて太い声しか出せないから女の子の高くて儚い声に憧れを抱いているのだとか…。(笑)
音楽だけではなく…
そんな米津さんは、音楽だけではなく自分自身の作品に合わせて、イラストレーターや映像作家としても手腕を振るっています。
幼い頃から漫画や絵を描くことが好きで、音楽家を志す前は漫画家になりたいという夢があったり、芸術系の専門学校に通っていた経歴をお持ちですが、専門学校については『一応通ってはいたけど、そこで学んだことは無い』と豪語しています。
とはいえ、そこで出会った同世代の仲間たちと楽しい生活を送っていたとも語っていたので、無駄な時間ではなかったようです。
まさかの本名!?
《米津玄師》という名前は本名で、読み方は「よねづけんし」となります。
私自身、しばらくの間「玄師=げんし」だと思っていたので、読みを間違えてしまう人が多いのではないでしょうか。
本名については、インタビューでご本人が
『親に聞いたことないんですよね、名前の由来とか。
玄人(の玄)に師匠の師って…、
名前負けしないような生き方をしていくためには、これからどうやって生きていくかみたいなこと、結構考えていたのは覚えてますね。
名前の漢字自体にすごい仰々しい響きがあるから…、
それに負けないように気を張って生きていかなければならないなっていう、
そういう風に思わせてくれるっていうのは、まぁ、それはそれで良かったのかなっていう風に思いますね。』
と語っており、まさかの名前の由来を本人が知らないパターンでした。
ですが、名前の意味を自分なりに解釈して堅実に過ごしていると知って、米津さんのまじめな人柄に好印象を持ちました。
私は単純に「徳の高いお坊さんみたいな名前!本名なのに格好良い字面で羨ましいなぁ…」と思っていたのですが、
『俺の名前の呼び方はみんな千差万別なんで…、大体《よねづげんし》って呼ばれるし、
小学生の頃からずっとそうだから、名前の呼ばれ方を訂正しなくなってメチャクチャ久しいんで、何でも良いですね(笑)』
とのことで、珍しい名前にも苦労があるんだという事も分かりました。
別名義「ハチ」
彼がクリエイターとして音楽活動を始めたのは、まだ10代だった2009年からで、当初は「ハチ」という渋谷駅前にいる忠犬みたいな名前でソロ活動をしていました。
『インターネット上のやり取りで、本名でやる奴なんかいない』という理由から、コミュニケーションを取るためのハンドルネームとして使用していた名前で、現在でも別名義として使用するときがあります。
この「ハチ」というハンドルネームの由来は、少女マンガ「NANA」に登場する、主人公の歌手ではない方のナナのあだ名である《ハチ》からきているそうです。
当時、お姉さんが好んで読んでいた漫画だったため、米津さんにとっても身近な存在だったのでしょうね。
ハチ名義で活動していた時代は素顔を明かすことは無く、ボーカロイドを使用した楽曲を独りで制作し、イラストや映像とともにインターネット上(ニコニコ動画)へ投稿していました。
2012年からは本名の「米津玄師」名義になり、メディアに自分自身が出演するようになりましたが、ハチという名前で顔も明かさないというスタンスが定着していたので本名であるにもかかわらず、しばらくの間は違和感があったのだそうです。
ですが、アルバム《BOOTLEG》を作曲した辺りから「米津玄師」としての自分が確立されメディアにも顔を見せるようになりました。
とは言っても、メディアに出ることに対してはかなり消極的なので、ラジオやテレビに出演しているのを観たり聞いたりしていると、余計なお世話ですが『米津さん大丈夫かな?緊張してるんじゃないかな?』とドキドキしてしまいます。(笑)
米津さんの音楽人生
米津さんの音楽人生の転機は小学5年生の頃、家にインターネットが開通したことに始まります。
当時、インターネットの向こう側では《フラッシュアニメ》という、既存の音楽にアニメーションをつける動画が流行っていました。
ニコニコ動画のはしりの様なものらしく、流行している音楽に自分で作ったアニメーションを勝手につけるものだそうです。
漫画やアニメが好きだった米津さんは、この《フラッシュアニメ》に興味を持ったと同時に、この独特なインターネット文化に天地がひっくり返るような衝撃を感じます。
アニメーションと音楽の融合に美しさを感じ『音楽ってこんなに良いもんなんだな…』と音楽自体の見方も変わっていったことによって、『自分もこういうモノを作ってみたい、自分ならやれるんじゃないか?』と思ったそうです。
その後、日本のロックバンド「BAMP OF CHICKEN」や「ASIAN KUNG-FU GENERATION」に憧れを持ったことなどにより、音楽に対して本格的な興味が湧き始め、自身も彼らのようなバンドマンを目指してギターを購入、弾き語りやコピーバンド的なことをして過ごしていました。
今の彼からは想像がつきませんが、学生の頃には友達とバンドを組んだりもしていたそうです。
その中で『自分のオリジナル曲を作りたい。自分の曲を物として残したい。』という欲求も生まれ、本格的な機材も着々と揃えていきます。
ですが、メンバーとの温度感の違い『俺はけっこう本気でやっているのに…』という感情や、もともと個人主義のため独りで作り出すことが好きだったので『人と一緒にモノを作り上げるのってめんどくさい、全部自分で作り上げた方が手っ取り早いし気が楽』だと思っていたこと、それに加えて1人で活動する事ができる環境などがあったので、ソロで音楽活動をすることに決めたのでした。
このような経緯から、独りで活動することに関しては『ネガティブなニュアンスで作っている部分っていうのもあった』と語っています。
上で説明した【1人であるが故の孤独】や、自分が【当時影響を受けていたものが色濃く反映されすぎている】という理由から、ニコニコ動画に30曲ほどアップしていた「ハチ」時代の動画作品はすべて削除されているので、もったいないなぁ…と思わずにはいられません。
そういう経緯もありながら、2012年ついに本名での活動を開始します。
この時点での人気や認識としてはハンドルネームでボーカロイドを使った活動を行う「ハチ」というインターネットの中の人でしたが、急に本名で生身の「米津玄師」が出てきたものだから、ユーザーの方々は驚きと動揺を隠せなかったそうです。
ですが米津さん本人は、自分の作品が認められ人気が出てきたからこそ『ボーカロイドを隠れ蓑にしていたくなかった』と語っています。
現在の活躍から考えると良い選択だったとは思いますが、今まで築き上げてきたものをリセットしてしまうなんて自分だったらそんな判断はできないし、本当に勇気あるなぁ…と思いました。
米津さんの音楽の魅力
米津さんの音楽には色々な魅力があると思いますが、私が特に魅力的だなと感じたものを書き出しました。
歌声は才能!
米津さんの曲を聞いたときに『魅力的だな』と感じたのは、幅広い音域を操る深みのある歌声と、独特なこぶしやビブラートのかけ方でした。
こぶしは演歌や民謡に使われている音(メロディ)を不規則に揺らす歌唱方法で、ビブラートとは歌に限らず音を伸ばすとき一定に音を震わせる技法、簡単に言うとどちらも歌声の揺らぎ部分のことです。(ビブラートvibratoはイタリア語)
声を揺らす技法は歌手の人なら普通に使っているものですが、米津さんの場合は他の人にはないような独特さがあり、良い意味で曲のスパイスとなるので聴き手の印象に深く残ります。
そのため、個人的な意見ですが彼の曲を他の歌手の人が歌っていても、本人が歌っているときほどのトキメキが感じられないんですよね…。(コラボなど、その人のために書いた曲は別ですよ!)
米津さんの書く曲はどれも素敵なのでリピートして聴いてしまい、いつの間にか覚えてしまっていて、ついつい『カラオケで歌ってみたいなぁ…』などと思ってしまうのですが、彼のような声の揺らぎは簡単には出せませんし、それに加えて高音と低音の幅が広いので、覚えるのは簡単でも歌うのは本当に難しいんですよね~。
私が学生の頃に声楽の先生から聞いた話によると、『歌っていて、低い声(音)が出せる人は同じ幅だけ高い声(音)も出せる』ということなので、米津さんの地声がもともと低音であること、それによって生み出される声の深みや音域の幅広さは、彼の生まれ持った才能だと思ったのでした。
曲に漂う色気…
次に挙げるのは、曲に漂う色気です。
彼の音楽を聴くたびに『曲全体に漂うこの色気は、一体どこから来ているのだろう?』と考えていました。
もちろん曲の音楽としての構成や彼の歌声も魅力的ではありますが、この色気はもっと別の部分にあると踏んだわけです。
音楽の部分でもなく歌声でもないとすると、残った歌詞の部分に秘密があるんじゃないか?と気が付きました。
歌詞の言葉選びについて、米津さんはこう語っています。
『適切な言葉って何だろう?って考えるんです。
それは出来るならば、優しい言葉で…わかり易い言葉で説明できたら、それが1番良いなぁという風に思うんですけど、
でも簡単な言葉っていうのは、簡単な言葉なだけあって解釈の幅が広くなり(歌詞の意図ではない)いろんな意味合いを持ってしまう。
難しい言葉・あまり知られていない言葉は、それ以外の意味が無い言葉になるんですね。
だから自分なりの表現に対して真摯になればなるほど、どうしてもそういう言葉(のチョイス)になる』
のだそうです。
難しい言葉・あまり知られていない言葉のストレートな表現に新鮮さを見出し、そこに色気を感じていたんだろうなぁ…と思いました。
そして、私が好きな椎名林檎さんと米津さんの曲に似た色気を感じていたのは、『歌詞に昔ながらの難しい言葉をチョイスしているせいなんだ!』と新たな気付きもあって、何故か嬉しかったです。
米津さんの音楽の特徴
米津さんの作る曲の数々は「イメージの要となる歌詞の秀逸な言葉のチョイス」や、「突拍子は無いけれど曲の印象を決める=大事な鍵となる音のはめ込み」が斬新ですよね。
斬新過ぎて、始めて聴いたときには驚きを感じるのではないでしょうか?
ですが、この驚きがクセになり何回聴いても飽きがこないということが彼の音楽の特徴であると思います。
最近発表されたアニメーション映画《海獣の子供》の主題歌「海の幽霊」にもこの特徴が良く出ています。
聴いたことのない方は聴いてみてね↓
曲の冒頭や要所に出てくるエフェクトという音声の加工によって重ねられた「電子的な声」により、複雑で切ない感情が感じ取れます。
米津さんにしては珍しい始めから高い歌声を使った音の揺らぎや、言葉がもともと持っている抑揚による揺らぎはまるで砂浜に打ち寄せる波を感じさせ、サビ前の間奏部分では海の生物(イルカの鳴き声)のような音が聴き取れたりするので、意識していなくても海を想像しちゃいますよね。
そして、なんと言ってもサビのエネルギッシュさには鳥肌が立ってしまうのではないでしょうか?
実際、私が初めて視聴したときには何の考えも無くヘッドフォンで聴いてしまったので、サビで使われている鯨の鳴き声のような鼓膜や脳全体を震わせる重低音に思わず『えっ!耳壊れた?』と驚かされてしまいました。(笑)
そして、驚くけれど音楽の内容と印象に合っている音楽が作れる米津玄師という音楽家の底知れない才能に、凄味を感じてしまうのでした。
私と「Lemon」
私が初めて米津さんの名前と作品が一致した曲がこの「Lemon」だったので紹介させてください。
実は、初めてこの曲を聴いたときの印象はあまり良いものではありませんでした。
歌詞の内容や、最初は静かな曲調で淡々としているのにサビの部分での感情が爆発したような激しさから『ストーカー気質のある人の失恋ソングかな?心の不安定さを感じる不思議な雰囲気の曲だなぁ…。』という、すごく失礼な印象を持ってしまったんです。
さらに、MVでは演出の独特な雰囲気も相まって、不思議さというか…不気味さが増した印象で苦手意識すらありました。
その独特な雰囲気や不思議さの理由は米津さんがこの曲を作曲した経緯にあるのですが、その経緯を聞いたことによっていい意味で先入観を持って曲を聴くようになり、今では好きな曲の1つになっています!
「Lemon」は、サスペンスドラマである《アンナチュラル》の主題歌として依頼された曲です。
このドラマは、不自然死した遺体を解剖&調査し、数々の事件を解明していくという趣旨を基本としているので、米津さんは曲を書くに当たりドラマと自分との共通点として【人の死を想う】ということをイメージしました。
米津さんは20代とまだ若いので、人の死というモノに触れる機会も少なく、曲を書いていてもピンとこなかったのではないかと思います。
それに加えて曲を作っているときがツアー中だったということもあり、作曲中の集中している状態にどっぷりと入り込みたいのに、集中できる時間が足りず悶々としていました。
現に、ドラマの1話を撮り終えて編集の段階まできていたのに、細かいニュアンスの追求のために曲がまだ完成していない状況だったのだとか。
ですが、この曲に明確な転機が訪れます。
作曲している時期に、米津さんのおじい様が亡くなられたのです。
このことで、あまり関わることの無かった死を身近に感じ、サビの部分を急遽書き直すに至りました。
『【人の死を想う】曲を書いているさなかに、自分の肉親が死ぬっていうのは、何かあるなと思って。
頭の中にある《死》っていうフワッとしていた概念だったものが、急に自分の脇のほうからバッ!と形として現れて、果たしてこれで(この曲で)いいんだろうか?と思うようになってしまった。』
という複雑な心境や経験が米津さんの中でうまく絡み合って、名曲「Lemon」が完成したのでした。
奇妙な「Lemon」の余談
みんなが気になっているであろう「ウェ・ウェッ」という奇妙な音を入れた理由は、『バラードなのにヒップホップで使われるような音を使ったら面白いんじゃないかな?と思って』ということなのだそう。
打楽器のクイーカを電子音にしたものかと思いきや、あの音はなんと人の声をサンプリング(電子音として録音)したものなんです。
この「ウェ・ウェッ」という音による遊びは他にはない斬新さを持っていて、より聴き手に大きな印象を与え脳裏に焼きつくので、何度も聴きたくなるのでしょうね。
そしてなんと!米津さんは「Lemon」のMVでハイヒールを履いています。(上の動画の足元を良~く観てみてね。)
『もしかして米津さん…、そういう趣味があるの?』と思ったら、ちゃんとハイヒールを履いている理由もありました。
米津さんが昔、夢の中で見たお葬式の光景をそのまま「Lemon」の世界観として表現したかったためで、『亡くなった人との繋がり、2人だけに通じる合図がハイヒール』だったのだそうです。
(女の子への憧れのせいじゃなくて良かった~。笑)
書きたいことが増えて…
調べれば調べるほど米津さんが魅力的過ぎて、書きたいことが増えていってしまったので、2回に分けてご紹介することにしました!
次回は「米津さんとコラボ」について書こうと思います。お楽しみに!