憂鬱なときに「タイスの瞑想曲」
ようこそ!ブーです。
人間生きていれば憂鬱な気分になる時や、落ち込む瞬間があるのではないでしょうか。
そんなときに聴いてもらいたいのが、ジュール・マスネ作曲「タイスの瞑想曲」です。
聴きながら読んでね↓
ジュール・マスネ
Jules Emile Frédéric Massenet(ジュール・エミール・フレデリック・マスネ、1842年5月12日-1912年8月13日没)はフランスの作曲家です。
オペラ作品が最もよく知られていますが、オラトリオ・カンタータ・バレエ音楽・管弦楽曲や200曲を超える歌曲も作曲しました。
ワーグナー(ロマン派歌劇の頂点と言われた名作曲家)の作曲技法を取り入れていましたが、それを更に自分の色で染め上げることによって、他の作曲家にはマネできない「甘美で官能的なフランス独特のメロディー」を生み出すことができる、個性を持った芸術家でした。
宗教的であり官能的過ぎるので批判されることもあります。
「Méditation(Thaïs)タイスの瞑想曲」
「タイスの瞑想曲」はマスネが作曲し“抒情劇”と銘打ったオペラ「Thaïsタイス」の中の1曲で、第2幕の第1場と第2場の幕間で演奏される間奏曲です。
オリジナルはヴァイオリンと管弦楽によって演奏されますが、他の楽器のコンサートなどでも人気の1曲になっているので、多くの楽器のために編曲されています。
オペラ「タイス」のあらすじ
物語の舞台は4世紀頃のエジプト…
「愛と美の女神ヴィーナス」を信仰する高級娼婦タイスと「救い主であるキリスト」を信じているキリスト教の修道僧アタナエルという真逆な2人が主人公です。
厳格で禁欲的なアタナエルは、タイスの「人を堕落させるほど美しい魅力」を恐れて、彼女をどうにかしてキリスト教へ改宗させ、まっとうな道へ導きたいと考えていました。
一方タイスは「愛こそすべて、愛こそが真実。私はどんな陶酔も知っているわ!」と強がっています。
そう言いつつも、鏡に向かって「華やかでも中身の無い空虚な日常」や、「老いて美しさが失われていく」ことに思いをはせる日々なのです。
老いや死を怖れ、弱気になっている彼女にアタナエルは「永遠の幸福へ導こう。キリストの花嫁になれば永遠に生きられる。その愛は、一夜限りでなく永遠に続くものだ。夜が明けるまでは外で待っている」と告げました。
「永遠」という言葉に心が揺らいだ彼女は、長い瞑想(“タイスの瞑想曲”がかかる)のあと、気持ちが決まり神に仕えるためアタナエルについて行くことにします。
ですが、その道は厳しく辛いものでした。
自分の物をすべて灰にして忘れ、知人たち(俗世)とも別れなければいけません。
そして目指している修道院は砂漠の向こうにあり、焼け付くような太陽の下を歩く2人は、身も心もボロボロです。
そんな中で、アタナエルは改心し健気な態度のタイスに対して「愛おしさ」を感じるようになります。
なんとか修道院に着き、アタナエルは修道長にタイスを託しました。
修道院に入ると言うことは、永遠の別れを意味します。
その事実に、彼は自分の目的が達成されたにもかかわらず酷く落ち込み、彼女が居なくなったことに虚無感を覚え、食事も手につきません。
どれだけの時間・日にちが過ぎたのでしょうか、アタナエルは意識が朦朧としている中で夢を見ます。
美しく妖艶な姿のタイスが現れ、そして遠くからは「タイスが死ぬ」という声が聞こえます。
驚いたアタナエルは、彼女を置いてきた修道院へと駆け出しました。
どうにかたどり着きましたが、やっと会えた彼女は憔悴して体を起こす事さえできません。
3ヶ月もの間、眠らずに祈り続けたからです。
そんな彼女は、アタナエルを見て「あなたなのね…」と儚く微笑みます。
横たわる彼女に「私が教えてきた事はすべてウソだ!人間の命と愛以外に真実はない。天国なんてないんだ!タイス、君を愛している!」と告げます。
しかし、死の床にあった彼女にはこの言葉も耳に入らず、やがて亡くなります。
自分が信じたキリスト教の教え通り「美しい薔薇が咲く天国で、花束をかかえた天使が自分を迎え入れてくれる」ことを思い描きながら…
アタナエルは彼女を失った絶望に打ちひしがれるのでした。
おわり。
悲しすぎる結末、まさに悲恋です。
ですが、人の感情が明らかになる、喜び・怒り・情熱・悲しみが有るからこそ、曲の美しさが引き立ちます。
「タイスの瞑想曲」は5~6分程の短い曲ですが、その中には粛々とした厳かな雰囲気と、じわじわと込み上げてくる抑えきれない悲しさや官能的な響き、そして芯の強さや決意も感じ取れるのではないでしょうか。
ピアノ版もオススメです↓
ブーは、この曲を聴きながらメロディの波と一緒に深呼吸して『フー』っと吐き出すと、憂鬱な気持ちもスッキリとなります。
物語は悲しいけど、この曲には気持ちを落ち着けてくれる優しさが感じられるんだなぁ。