ブー先生の音楽教室

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色んな魅力満載、ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、印象主義音楽を代表するフランスの作曲家、クロード・アシル・ドビュッシーのピアノ独奏作品「ベルガマスク組曲」を紹介します。

 

ドビュッシーについては、こちらでも紹介しているので読んでみてね。↓

boosensei.hatenablog.com

 

 

 

Suite bergamasque(ベルガマスク組曲)

「ベルガマスク組曲」は1890年頃に書かれたドビュッシーの初期作品で、「Preludeプレリュード」・「Menuetメヌエット」・「Clair de Luneクレール・ドゥ・リュヌ」・「Passepiedパスピエ」の全4曲で構成されたピアノ独奏曲です。

 

1905年に改訂版として出版されたものが、現在使われている楽譜のもととなります。

 

この組曲は小作品ばかりが収められているため、4曲全てを演奏しても18分と短い時間で弾くことができ、初心者の方にオススメです。

 

手軽に弾ける曲集ですが、その1つひとつの曲には様々な手法が使われ、ドビュッシーらしさも存分に出ている名曲ばかりなので、世界中で愛されています。

 

ドビュッシーがこの作品を作った経緯は、1884年に地元フランスの奨学金付留学制度のもとに開催されていた「ローマ賞」で第一等を受賞したことがきっかけです。

 

彼は、受賞したおかげで政府から奨学金として資金援助が出たため、イタリアのローマへ1885年から2年間留学をしました。

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曲自体はフランスへ帰ってきてから作られましたが、「ベルガマスク組曲」の「ベルガマスク」という言葉は、このときの留学で訪れた場所が関係していると言われているんですよ。

 

彼が訪れた、イタリア北部にある壮大なアルプスの麓に広がるベルガモ地方には、その地域に伝わる「ベルガマスカ」という舞踊があり、それが語源だろうという見解がなされています。

 

曲を聴いた感じでは、イタリアの音楽的な要素は使われていませんが、城壁や中世ヨーロッパの町並みが残るベルガモの雰囲気をドビュッシーなりに表現しているように思いました。

 

とは言っても、「ベルガマスク組曲」のタイトルの由来については諸説あり、

ドビュッシーが好み、曲のインスピレーションにも一役買っていたというフランスの詩人Paul Verlaine(ポール・ヴェルレーヌ、1844-1896)が書いた詩集“Fetes galantes上品で優雅な宴”の「Clair de Lune月の光」に書かれている『bergamasque18世紀の宮殿的な』という表現から引用したという説もあるんです。

 

 

 

第1曲.Prelude

Preludeプレリュードは「前奏曲」という意味で、1曲目につけられる普通のタイトルです。

 

演奏時間は約4分と短いですが、ピアノを端から端まで使ったダイナミックさと、細かく繊細な指運びが必要になります。

 

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第2曲.Menuet

Menuetメヌエットは、4分の3拍子の上品で優美な舞踊曲のことです。

 

演奏時間は約4分30秒ほどですが、弾んでいて軽快な部分と優美で繊細な部分とのコントラスト(差)を明確に分けることが必要となります。

 

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私が「ベルガマスク組曲」の中で1番気に入っている曲です。

2分54秒から徐々に転調を予感させる響きを持たせ、3分12秒で曲が完全に転調するところが本当にロマンティックなんですよね。

 

 

 

第3曲.Clair de Lune

Clair de Luneクレール・ドゥ・リュヌは「月の光」 という意味で、『ドビュッシーといえばこの曲!』といわれるくらい有名なのがこの曲です。

 

なぜか、この曲だけ音楽様式の名前ではなく、きちんとしたタイトルが付けられています。

 

もし音楽様式で名前が付けられていたら【Nocturneノクチュルヌ夜想曲】というタイトルになっていたのではないかと思いましたが、もともと「ベルガマスク組曲」ではなく「夜想曲集」に収めるために作曲されたので、最初から【Promenade sentimentale感傷的な散歩道】というタイトルが付けられていました。

(フランス語ではNocturne、一般的にはNocturneノクターン)

 

そのままの流れで、この組曲に入れるときも普通のタイトルにしたのでしょうね。

 

演奏時間は約4分30秒ほどで、8分の9拍子という一見すると速そうなイメージの曲ですが、『歩くような速さで』という指示があり、

小さい音で奏でられ緩やかな速さで紡がれる繊細なメロディは、触れたら壊れてしまいそうな緊迫感や、聴いている人の胸を苦しくさせる切なさが良く表現されています。

 

そして、中間部の駆け上がるようなメロディには、教会旋法という音の並び順の1つであるミクソリディア旋法が効果的に使われていることによって、天国への階段を上っているかのような神々しさや神聖さを感じることが出来るでしょう。

 

(ミクソリディア旋法は1分38秒から↓)

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この曲は、ポール・ヴェルレーヌという詩人の「月の光」という詩をもとに作曲されたと言われています。

 

ヴェルレーヌの詩「月の光」の訳

貴方の心はまるで人の闇の部分を感じる風景画や

繊細な仮面と宮殿的なベルガモのダンス(ベルガマスク)の様だ

リュートを奏で、踊りながらも

心の底の悲しみをおどけた様子で仮面の下に隠してしまう。

 

哀愁漂う物悲しい短調に乗せて歌っているのは、

愛や充実した時を手に入れた人生についてだが

決して幸せを信じてはいないのだろう。

その歌は、清らかな月の光に儚げに溶けていくのだった。

 

美しくも悲しみを含んで、静かに降り注ぐその月の光は

木の上で羽根を休める鳥を夢へと誘うだろう。

それはまるで、悲しみに暮れ恍惚の波に揉まれることや

はじけて煌く噴水から溢れ出す水のように。

 

印象主義音楽を代表するドビュッシーがインスピレーションを受けたヴェルレーヌの詩集“Fetes galantes上品で優雅な宴”は、Antoine Watteau(アントワーヌ・ヴァトー)という画家のことを指しているといわれています。

 

ヴァトーが【“Fetes galantes上品で優雅な宴”の画家】と呼ばれていたことから、ヴェルレーヌは彼の描いた絵によってインスピレーションを受け、詩を書いたことがうかがえるんです。

 

このように、芸術と芸術が複雑に絡み合った作品だから、この曲は特別な感じがするのでしょうね。

 

 

 

第4曲.Passepied

Passepiedパスピエは、17~18世紀頃にフランスで踊られていた古典舞曲のことです。

 

本来の古典舞曲としてのパスピエは、8分の3拍子・8分の6拍子・4分の3拍子と『3拍刻み』の速い踊りですが、この組曲のパスピエは4分の4拍子で作曲されています。

 

それは、もともとこの曲がPavaneパヴァーヌ「並んで行進するための行列舞曲」として作曲された名残で、かしこまった感じや仰々しさを出すために4分の4拍子で書かれているんです。

 

演奏時間は約4分ほどで、『度を越えない程度に速く』という指示があるため、4分の4拍子でも充分に速いスピードで演奏されます。

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ロールプレイングゲームの「ドラゴンクエスト」の音楽や、刑事ドラマの「古畑任三郎」で流れるテーマ曲ような部分があって面白い曲だと思います。

 

特に、冒頭の伴奏部分とメロディーラインがよく似ていることから、「ドラゴンクエスト」の「広野を行く」という曲のもとになったのではないかということで話題にのぼる曲です。

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「ドラクエ」の音楽を担当し、「広野を行く」を作曲したすぎやまこういちさんは、若い頃クラシック音楽の勉強もしていたそうなので、ドビュッシーの影響を受けていたのかもしれませんね。(笑)

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