ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

夏という季節に聴いて欲しい。武満徹「波の盆」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、作曲家の武満徹さんの作品「波の盆」を紹介します。

 

聴きながら読んでね。↓

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楽曲「波の盆」の説明

「波の盆」はサウンドトラックで全15曲収録されていますが、今回はその中の表題曲“波の盆”を少しだけ説明しようと思います。

 

上で紹介した動画(静止画ですが)は全曲入っているもので、始めの4分15秒までが“波の盆”です。

 

チェレスタやハープ、そしてビブラフォンなどの楽器を使うことによって、深海のように神秘的な様子や、海の底から水面へ向かって立ち上る泡のような揺らめき、海水の透明感を想像することができます。

 

ホルンの音色は、まるで異国の船を思い浮かばせるように深い響きです。

 

弦楽器は、揺れ動く波や人の感情のように、一拍づつに細かく強弱記号が書かれてありユラユラ、フワフワとした大海原のような包み込む暖かさも感じることが出来ます。

 

木管楽器は水面の煌めきや、波の飛沫のような爽やかさ、そして海の泡のような儚さがあり、武満さんの独特で掴みどころのないユラユラ揺れるハーモニー「タケミツ・トーン」も多く使われています。

 

 

この曲の録音に携わった指揮者は、その音楽の美しさに思わず涙を流したそうで、こう語っています。

 

「なんと感情に訴える音楽だろう!

私はレコーディングの間、涙をこらえることができなかった。

第1ヴァイオリン奏者の目にも涙が浮かんでいた。

武満が作った、この本当にロマンティックで感動的なテーマを多くの人に知ってほしい。」

 

作曲家冥利に尽きるエピソードですね。

 

指揮者人生の中で、後にも先にもこんな体験はしたことが無かったそうで、改めてこの曲の凄さを感じました。

 

 

 

《波の盆》というドラマ作品

「波の盆」は、1983年日本テレビで放送されたドラマ 《波の盆》の主題曲として書かれました。

 

脚本は富良野を舞台にした家族ドラマ「北の国から」を手がけた倉本聰さん、監督は「ウルトラマン」シリーズで有名な円谷プロで活躍していた実相寺昭雄さんです。

 

ハワイと日本を舞台にしたこのドラマでは、笠智衆さんや蟹江敬三さん、中井貴一さんなどの名俳優陣が、戦争によって引き裂かれた日系移民親子の姿を演じ、彼らの葛藤や家族の愛という色々な人間の感情が描かれています。

 

「波の盆」の主要メロディは作品のいろいろな場面で流れますが、特に印象的なのは、主演の笠智衆さんがクライマックスシーンで【自分より先に逝ってしまった息子】のことを想い、精霊流し・燈籠流しをした海を眺めているときに流れるものです。

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母国への想いを哀愁として感じると同時に、海のように広く深い「親心」のような愛情も感じとれる懐かしい曲調は、ドラマの核となる 『戦争とは我々に何を残したのか?』ということを切々と訴えかけてきます。

 

 

 

「波の盆」作曲者

「波の盆」は、東京都出身の日本を代表する現代作曲家・武満徹(Takemitsu Toruたけみつ とおる1930年10月8日-1996年2月20日没)さんが作曲しました。

 

「世界のタケミツ」と呼ばれ、日本のクラシック音楽を牽引してきた重要な人物です。

 

 こちらでも紹介しています。↓

boosensei.hatenablog.com

 

武満さん自身も戦争を体験していて、また戦争を題材にした作品も多く手がけているので、ドラマ《波の盆》の作曲も頼まれたのだと推測されます。

 

武満さんは生前、友人に当てた手紙に『鯨のような、優雅で頑健な肉体(からだ)をもち、西も東もない海を泳ぎたい…』と書いたそうです。

 

この発想から、武満さんの海への憧れを垣間見ることができ、作曲をするにあたって色々な曲に影響を与える考えだったのだろうと思います。

 

「波の盆」も、その海に対する想いが感じとれる名曲です。

 

 

 

「波の盆」と私

武満さんの作品は前衛的なものが多かったため、好き嫌いがハッキリと分かれてしまいます。

 

ですが、この曲では他の武満作品と違う印象を持つようで、好印象を受ける人が多く

  • 自分の葬儀の時はこんな曲でこの世から送り出して頂きたい。参列者の方には生きることの素晴らしさと勇気を持ってもらいたい。心から深く感動する曲です。
  • 心地よい音楽ですね。穏やかな海の情景が浮かんでくるような素晴らしい名曲。穏やかで親しみやすい。
  • 心に残る素敵な曲です。

というコメントが書かれていました。

 

 

海が近い土地柄のためか、私はこの曲を聴くと亡くなった祖母のことを思い出します。

 

自分自身に厳しい真面目なばあちゃん、幼い頃の怪我のせいで思うように動けずに歯がゆい思いをしていたばあちゃん、手先が器用なばあちゃん、文句を良いながらもじいちゃんの世話を焼くばあちゃん、一生懸命しつけをしてくれていたけど孫には結局甘くなってしまうばあちゃん、果物が好きでその中でも桃が大好物だったばあちゃん。

 

空の上から見守ってくれているんだろうか…、などと色々考えてしまいます。

 

もうすぐお盆だから、ばあちゃん孝行のために仏壇とお墓の掃除を一生懸命やろっと!

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