ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

民謡の革命「ソーラン節」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、民謡に革命を起こした「ソーラン節」を紹介します。

 

北海道の日本海沿岸で歌い継がれている民謡の「ソーラン節」ではなく、ドラマ【金八先生】の1999年に放送された第5シリーズで取り上げられたことによって、人気に火がつきブームになった方です!

 

聴きながら読んでね。↓

youtu.be

 

昨今では、体育祭などの行事でよく踊られるようになったので、1度は聴いたことがあるんじゃないかなぁ~?と思います。

 

 

 

「ソーラン節」とは?

本来の「ソーラン節」は、北海道の民謡です。

 

北海道の日本海沿岸では春になると、数の子の親として有名なニシンという魚が産卵しにやってくるので、漁が盛んになります。

 

その作業の際に歌われていた鰊場作業唄の1つ「沖揚げ音頭」から派生したのが「ソーラン節」です。

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『ソーラン、ソーラン』という掛け声が印象的なので「ソーラン節」と呼ばれるようになりました。

  

上の動画で紹介したものは、現在もっとも知られている「ソーラン節」で、民謡に革命を起こした作品です。

 

昔からある北海道民謡をロック調にしたという画期的なものですが、歴史ある民謡界では異例の作品なので、当時は否定的な意見が多くありました。

 

ですが、この作品のおかげで「ソーラン節」という1つの伝統が救われたことは言うまでもありません。

 

現代に合った民謡の形として、今では全国で知られるようになりました。

 

 

 

革命的な「ソーラン節」を作った人 

この作品を手がけたのは民謡歌手の伊藤多喜雄さんという方で、現在でもパワフルに音楽活動を行っています。

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1950年10月6日、北海道苫小牧市の漁師の家に12人兄弟の末っ子として生まれた多喜雄さんは、小学生のころから新聞配達などをして家計を助け、中学生のころには民謡酒場で歌うようになりました。

 

中学卒業の15歳ごろには『金の卵』と呼ばれるほどの歌声を持っていましたが、将来のことを考え、音楽を諦めて就職を決意し上京するのでした。

 

その音楽とは離れた生活の中で、たまたま民謡教室の横を通る機会があり、聴こえてくる民謡の懐かしさに居てもたってもいられず、思い切って民謡を習い始めることにします。

 

天性の才能からか、18歳でNHK民謡オーディションに合格し、「民謡界のホープ」と言われるまでに成長、1976年(昭和51年)26歳から3年間、公益財団法人日本民謡協会主催の「民謡民舞全国大会」において連続優勝し、協会より民謡の教授免許認定を受けました。

 

自分の歌手としてのスタイルに悩んだ時代もありましたが、廃れていく民謡の復活に向けて独自の活動を展開しようと奮起します。

 

その活動の中で出会った稚内市立稚内南中学校のおかげで、多喜雄さんが目指す民謡の復活と「民謡の新たな道」が開かれたのです。

 

1980年代の中学校は、校内暴力やいじめ、学級崩壊などで荒れていました。稚内南中学校ではその風紀を正すため、生徒達に伝統的な民謡の「ソーラン節」を踊らせていました。

 

地域の住人や保護者からは好評でしたが、生徒達には『リズムやテンポ、歌詞も古臭い』という理由で不評でした。

 

時は流れて、平成3年に多喜雄さんの「ソーラン節」を聴いた先生が『これは子どもに間違いなく受ける』と直感して採用したことが縁で、多喜雄さんによる新たな編曲と舞踏家の春日壽升さんによる振り付けの指導がされました。

 

こうして現在知られているソーラン節の原点である、最北の風雪やカモメなどの自然、そこに生きている漁師達の活気や海峡の町である稚内を唄と踊りで表現した作品「南中ソーラン」が誕生しました。(踊りにも漁師さんが網を引き揚げるような動きが入っているので楽しめますよ。)

 

タイトルは稚内南中学校に因んで「南中ソーラン節」、ロック調に編曲をしたものだからそのまま「ロックソーラン」、伊藤多喜雄さんが編曲をしたから「TAKiOのソーラン節」など色々な呼びかたがあります。

 

現在演奏されているのは、初期版からアレンジされた「TAKiO'S SOHRAN 2」です。

 

作詞は多喜雄さんの自作、編曲は自身も所属するグループ“TAKiO BAND”と共に行ないました。

 

 

 

ダンスブームと「ソーラン節」

昨今のダンスブームによせて「ソーラン節」もジャズヒップホップに合わせて編曲されました。

 

ジャズヒップホップの編曲は佐藤真吾さんというキーボーディスト(鍵盤奏者)の方で、2012年からダンサーのnonさんとダンス教室「楽喜楽kids」を開いています。

 

そのダンス教室の活動から、縁があって2017年11月1日に溝の口駅前にある高津市民館で行われた【伊藤多喜雄コンサート溝の口】に参加し、更にソーラン節のREMIXアレンジを担当する運びとなったそうです。

 

このアレンジに対して多喜雄さんは『この曲は、盆踊りと同じ感覚なので、唄も全国さまざま、色んな種類があったりテンポが違ったりするように、こういった民謡のあり方があっても良いのではないか?』という考えを持ったと語っています。

 

ただし、このアレンジは『テンポが速いので唄うのが精一杯!』と仰っていて面白かったです。(笑)

 

1つの民謡であった「ソーラン節」が、ロック調からジャズヒップホップへと編曲されているように、音楽は時代によってドンドン変わっていくんだなと実感するエピソードでした。

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伝統を残すのは難しいけれど…

近年の運動会や体育祭というと、クラスの結束を早く強めるため・熱中症などの安全性に考慮して・秋の行事が立て続けにならないように分散するため・受験を控えている生徒のことなどを考えて“春”に行うことが増えました。

 

でも、私が学生の頃は9月に行なわれていたので、この暑い時期になるとこの「ソーラン節」を練習した記憶がよみがえります。

 

学生の頃は『この暑い中、いったい何のために踊らなきゃいけないんだ…』と思っていましたが、大人になると汗だくになって踊ることがまったく無くなりますから、今では本当に貴重な体験だったなと感慨深いです。

 

そして今回調べて驚いたのは、この「ソーラン節」が実はそんなに古い曲ではないということと、「この曲を作った人・歌っている人」が今でもパワフルに活動しているということでした。(多喜雄さんゴメンナサイ…。汗)

 

民謡といえば「昔からあるもの!」という意識が強いのでかなりの衝撃の事実だったんですよね。

 

伝統をきっちりと残すのは難しいけれど、こんな風に現代に合った「形を変えた在り方」も良いなぁ、と思うのでした。

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「猫のための音楽」は本当に猫のためのものでした。

ようこそ!ブーです。

 

先日、テレビを見ていて面白い音楽の存在を知ったので紹介しようと思います。

 

その名はなんと「猫のための音楽~Music for Cats」!!

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名前の通り、猫のために作られた音楽なんです。

 

今まで、猫や犬の声で作られている音楽は聴いたことがありましたが、まさか『猫のため』に作られた曲があるなんて!と驚きとともに興奮を感じました。

 

 

 

「猫のための音楽~Music for Cats」収録曲

1. ロロの空間 - Lolo's Air

ロロの空間

ロロの空間

  • デヴィッド・タイ
  • エレクトロニック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 このCDアルバムの中で唯一、猫と人間の両方に向けて制作された楽曲です。

 

なので和訳の題名を『ロロと過ごす空間』と付けても良かったのでは無いかと思います。

 

 

 

2. ケイティ・モスのキャットウォーク - Katey Moss Catwalk

ケイティ・モスのキャットウォーク

ケイティ・モスのキャットウォーク

  • デヴィッド・タイ
  • エレクトロニック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

イギリスのモデル“ケイト・モス”を想像してしまいます。(笑)

 

 

 

3. タイガーリリとミミのミャウジカル - Tigerlili And Mimi's Mewsical

タイガーリリとミミのミャウジカル

タイガーリリとミミのミャウジカル

  • デヴィッド・タイ
  • エレクトロニック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

「ミュージカル」が「ミャウジカル」に!良い発想です。

 

 

 

4. スクーター・ベレのアリア - Scooter Bere's Aria

スクーター・ベレのアリア

スクーター・ベレのアリア

  • デヴィッド・タイ
  • エレクトロニック
  • provided courtesy of iTunes

 

オペラで使われるようなアリアのように、感情的でドラマティックな仕上がりの曲です。

 

 

 

5. サイモン・セッズ - Simon Says

サイモン・セッズ

サイモン・セッズ

  • デヴィッド・タイ
  • エレクトロニック
  • provided courtesy of iTunes

 

サイモンセッズは、英語圏の人によく知られている子供の遊びなんだそうですが、曲のタイトルが同じ意味なのかは定かではありません。

 

 

 

曲を聴いた感想

個人的な意見ですが、猫が心地良い音と感じるであろう部分は雑音のように聴こえるので少し耳障りだったり、音の種類に馴染みがなくて音楽としてしっかり聴いていると脳が混乱して疲れたり、違和感を感じるところが多々ありました。

 

音楽的にはゆったりとしているので、小さな音でBGMとして流すのなら気にならないと思います。(猫は人間に対して10倍の聴覚を持っているので、小さい音量で聴く方が丁度良いのかも!)

 

猫のために作られている音楽ですから、人間が聴いてこういう風な感想を持つのは、当然といえば当然の結果ですよね。(笑)

 

 

 

制作に携わった人

作曲者 David Teie

作曲者はDavid Teie(デヴィッド・タイまたはデヴィッド・テイー)という、アメリカ在住の音楽家です。

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1984年から20年以上もの間、ワシントン・ナショナル交響楽団でチェロ奏者(チェリスト)を勤めました。

 

1999年から2000年にはサンフランシスコ交響楽団の首席チェロ奏者として活躍し、アメリカ合衆国のメタルバンドとして世界的に最も成功を収めたとして知られているメタリカ (Metallica) がサンフランシスコ交響楽団と共演したライヴでも演奏しているスゴイ人物です。

 

その他にも、世界のトップアーティストを指揮したり、楽曲提供や大学の教員を務めるなど、充実した音楽家生活を送っています。

 

 

彼が「ある種の動物のみに向けた音楽」の研究を始めたのは、2009年からです。

 

きっかけは『音楽が感情にどのような影響をもたらすのか?』ということについて、探究心が芽生えたからでした。

 

そのため、心理学者・霊長類の研究者であるCharles Snowden(チャールズ・スノーデン)に連絡を取り、彼の協力を得て、中南米の熱帯雨林に生息するタマリンという種類のを対象とした実験を行うことに…。

 

タマリンを研究対象にした理由は、複雑で頻繁な発声によってコミュニケーションを取る動物だったからです。

 

3週間ほどかけてタマリンの鳴き声や、彼らの出す音を録音し、それを研究して2つの音楽を書き上げました。

 

1つ目は、音楽のリズムをタマリンの安静時の心拍数に合わせ、音もリラックスしているときの鳴き声に寄せた、精神を落ち着かせるための曲

 

2つ目は、タマリンが興奮したときに立てる音や、危険を知らせるときの鳴き声をもとにした、動揺を感じさせる曲でした。

 

実際に、1つ目の曲ではタマリンはリラックスした状態、2つ目の曲でタマリンは落ち着かない様子を見せたそうです。

 

この実験により、動物がその種別に『聴覚や音楽の好みが違う』ということを発見することができました。

 

そして彼を一躍有名にさせたのが、この経験を踏まえて、その後に発表した「猫のための音楽」です。

 

デヴィッド・タイ氏は、現在でも動物のための音楽の研究をいろいろ進めていて、犬やクジラ、馬などのために実験や観察を行なっています。

 

 

 

協力者 Jagmeet Kanwal

この「猫のための音楽~Music for Cats」に携わったもう1人の人物は、インド出身のJagmeet  S Kanwal(ジャグメット・S・カンワル)という生理学や動物学を専門とする大学教授です。

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カンワル教授は、主に「動物の脳の機能」や「知覚情報(味覚・聴覚など)がどのように神経に伝達されているのか」といったこと、「動物の音によるコミュニケーションの取り方」、「音の知覚に関する聴覚と神経系とのつながり」などを研究しています。

 

彼の動物学の知識や協力を得て、「猫のための音楽」が作られました。

 

 

 

何のために作ったのだろう?

この曲は、もちろん猫のために作られたものですが、詳しくは作曲者であるデヴィッド・タイ氏がこう語っています。

 

今まで猫が聴いてきた音楽は、人が人のために作ったものでした。

 

古代に神として崇められた時から、ネットでもてはやされる現在まで、猫は別に好きでもない曲(音楽)を聴かされ続けてきたのです。

 

そう、今までは…。

 

これは「猫のための音楽」

始めて科学的に実証され動物(猫)のために作られた音楽です。

 

さぁ、聴いてみてください。

 

『そんなことが可能なの?』とお思いでしょう。

 

私は、猫が反応する音を観察して、猫の感性に寄り添いました。

 

人の音感は胎児の頃から発達します。母体の中で、母の心臓の鼓動をリズムとして知覚するからです。

 

一方、猫は生まれてから周りの音をきいて聴覚が発達していきます。

鳥のさえずりや、ミルクを吸う音、母猫が喉をならすときの『ゴロゴロ』という音などです。

 

ドラムが刻むビートは人の気持ちを高めますが、猫はそれとは違ったビートを好みます。

 

思い出してみてください、始めて音楽を聴いたときのことを…。

 

あの経験を再び、あなたの猫と共有(シェア)することができるのです。

 

科学が猫とじゃれる新しい方法を生み出しました。

 

彼らをリラックスさせ、音楽によって彼らの生活は豊かになります。 

 

動物と人間。それぞれに感じるものは違っても、音楽という芸術を家族の一員である猫と一緒に楽しむことができるなんて、素敵だなぁ…。

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でも、この「猫のための音楽」を作った張本人、デヴィッド・タイ氏が猫アレルギーだと言うのですから皮肉な話ですよね。(笑)

 

  

 

世界初!猫達のために待望のCD化。

実際に猫を対象とした実験の結果、全ての猫がこの音楽を好きというわけではありませんでしたし、少数ですが全く関心を持たない猫もいました。(人間でも音楽の好みはそれぞれなので当然のこと!)

 

ですが、人間用に作られた音楽よりも遥かに興味を持ち、猫のために作られた音楽ではなんと「77%」もの猫が好反応を示したのです。

 

実験に参加した多くの猫はリラックス状態になり、スピーカーの近くに行ったり、スピーカーに体をすり寄せ自分の匂いをつけるマーキングの行為を行ったといいます。

 

彼は今回の結果や、過去に行なったタマリンの音楽実験により、人間以外の動物でも音楽を充分に楽しむことができるということを知っていたので、「猫のための音楽」を世界中にいる多くの猫に聴いて欲しいという想いが膨らんでいきました。

 

そのためCD化することを考えたのです。

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CD化を実現するために、2015年から資金集めでクラウドファンディングを実施すると、このことを知った大手メディアがこの話題をいち早く取り上げ、「猫のための音楽」は世界中で話題となります。

 

そのおかげで目標金額2万ドル(当時の日本円で約225万円)のところ、なんと10倍以上の24万ドル(約2,700万円)を超える金額が集まりました。

 

この反響をうけて、アメリカの音楽会社であるユニバーサルミュージックが契約を持ちかけ、2016年10月メジャー初となる人以外のために作られたアルバムねこのための音楽 - Music For Cats 』が、まずイギリスで発売されました。

 

メジャー初という話題性から再度注目されるようになり、人間以外用の音楽として史上最高位となるiTunesクラシックチャート1位、全英チャートでも33位という記録を打ち立てました。

 

日本では語呂合わせで、2017年2月22日(猫の日)に税抜価格2,222円(税込み2,400円)で発売されています。(笑)

 

そして、このCDを購入した世界中の愛猫家から、多くの高評価のレビューやコメントが寄せられました。

 

  • このCDを買って本当に良かったです。飼い猫2匹ともソファーで満足してCDを聴いていました。
  • 半信半疑で買ったんだけど、効果が凄かったです。最初は熱心に聴いていて、その後はとても落ち着いた様子で聴いています。
  • 全く信じてなかったけど、本当にうちの猫が聴いていたのでビックリ!
  • 猫はこの音楽を好きになったようです。
  • 最初の数日は全く反応しなかったけど、毎日かけていたら彼女の反応が変わって今ではとてもリラックスして幸せそうに聴いています。
  • そういえば猫の為の音楽ってあったよなーと物は試しようだとAmazon Musicで流したらまじでね、寝た…半目で(笑泣)猫飼いさん達是非!

 

「猫のための音楽」が、本当に猫が心地好く聴くことのできる音楽であるということがわかりますね~。

 

 

 

音楽の持つ力ってやっぱり凄い!

人間だけでなく他の動物でも、曲や音によって感情が揺さぶられるというのですから、『音楽の持つ力ってやっぱり凄い!』と改めて感じました。

 

デヴィッド・タイさんは探究心が旺盛なようなので、いつの日か、「鳥のための音楽」とか「魚のための音楽」、果てには「虫のための音楽」とかが聴けるともっと面白いな、と思います。(笑)

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ピアノを弾くときのコツ。ダンパーペダルの踏み方

ようこそ!ブーです。

 

今日は、ピアノを弾くときのコツとして「ダンパーペダルの踏み方」を紹介します。

 

ダンパーペダルは、普段の演奏でもっとも良く使う『音を伸ばして響かせる』効果のあるペダルです。

 

 ペダルの細かい説明はこちらから↓

boosensei.hatenablog.com

 

 

 

ペダルのせいで演奏が台無しに… 

ピアノの演奏は、ミスタッチや演奏に合わない動作が1つでも混じると台無しになってしまうことがあります。

 

なので、もし何も考えず無造作にペダルを踏んでいる人がいれば、要注意です!

 

繊細で美しい演奏をしているのに、踏み方が適当なことによって起こる音の濁りや、足が動いたときに起こる雑音が聴こえたらどんな気持ちになるでしょうか?

 

演奏している側だったら『今からペダルを踏むぞ!』と思っているので気にならないかもしれません。

 

ですが、演奏を聴いている人は落ち着いた気持ちでゆったりと浸っていた、音楽の素敵な世界から急に現実世界へ引き戻されるという、幻滅した気持ちになると思います。

 

そんなことにならないように、ペダルを踏むときは細心の注意を払いましょう。

 

 

 

ダンパーペダルの踏み方

現在製造されている一般的なピアノには、2~3種類のペダルが付いています。

 

そして演奏に1番良く使うペダルは、右側に付いている「音を伸ばす」効果のあるダンパーペダルですよね。

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皆さんは普段、どんな風にこのダンパーペダルを踏んでいるでしょうか?

 

上から足をおろしてつま先や足全体で踏んでいる人、踏む必要のないときは足をペダルから離して必要なときだけ足を持っていって踏んでいる人、強く踏んだり軽く踏んだり、さまざまな踏み方をしていると思います。

 

人それぞれに踏みやすい場所はあると思いますが、そのときどきで足の踏み場所を変えたり、足が安定しない状態や安定しない足の部位を使っていると、ペダルから足がズレてしまって上手く踏み込めなかったり、俊敏な動作ができないのでミスにも繋がります。

 

ペダルの踏み方(ペダリング)をしっかりと教えてくれるレッスンの先生もいると思いますが、独学でペダリングを習得しようと思ったらこのポイントを押さえておくと良いでしょう。

 

踏み方のポイント

  • 親指の付け根あたりでしっかりと踏み込めるようにする
  • ペダルの3分の1にあたる部分を踏む
  • 踵を床につけて、しっかりとバランスを取る
  • 中途半端な状態で踏んだままにしない

 

 

まず、親指の付け根あたりで踏み込めるように、ペダルと足の位置を調節しましょう。

 

足の中心で踏んだ方が安定しそうですが、ペダルと足の長さを考えると親指の付け根で踏む方が、よりグッと下までペダルを踏み込むことができます。

 

ペダルの3分の1にあたる部分を踏む理由は、てこの原理が上手く働いてスムーズな足運びができるからです。

 

そして、踵(かかと)は常に床につけておきましょう。

 

踵でしっかりと体のバランスが取れていると、ブレずにペダルを踏み込むことができます。

 

ペダルを踏むときは裸足だったり靴下や靴を履いた状態が想定されますが、どのような状況でも踵を床につけておけば、足を浮かせているときよりも滑ったりズレたりすることを防げるんですよ。

 

 

最後に注意して欲しいのが、中途半端にペダルを踏むことです。

 

ペダリングには2種類あって、1つ目は「ペダルをしっかりと踏み込むもの」、2つ目は「ペダルを半分まで踏むもの」があります。

 

1つ目は、ごく普通のペダリングのことです。

ペダルをしっかりと踏んだ状態で音を鳴らすので、豊かな広がりと響きを持って音が伸びていきます。

 

2つ目は、ハーフペダルという「ペダルを半分のところまで踏んで、ある程度の残響音は残しつつも、一つ一つの音がはっきり聞こえる状態」にする音楽的に効果のあるペダリング方法です。

(この技術は上級者でないと難しいと思います…。汗)

 

そして、この2つに当てはまらないのがペダルを中途半端に踏んでいる状態です。

 

ハーフペダルがしたいのではなくて、足に力が入っていなくて無意識のうちにペダルが押された状態になっているので、音楽的な要素はないまま適当に音が伸びて音に濁りがでてしまう結果になってしまい、音楽が台無しになってしまいます。

 

そうならないように足にも神経を集中させて、俊敏かつ繊細に足を動かすようにしましょう。

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タイミング

ペダルを踏むときには、ただ踏むだけではなくタイミングがとても重要です。

 

 

タイミングのポイント

  • 響かせたい音を押さえた直後に素早く踏む
  • 音を響かせたあとは素早く離す

 

ペダルを踏むタイミングが遅い音と音の間に変な隙間が生まれてしまいますし、ペダルを離すタイミングが遅いと響いていた音がそのまま残ってしまい、次に鳴らした音とぶつかって濁った響きになってしまいます。

 

なので、ペダルを踏む動作は素早く行いましょう。

 

いくらタイミングか大事だからといっても、ペダルを乱暴に踏んだり離したりしては繊細な演奏の妨げになってしまうので注意が必要です。

 

 

 

車の運転とペダリング。

学生の頃、ピアノの先生から「ピアノの演奏と車の運転って似ている」という話を聞いたことがあるんです。

 

ピアノは楽譜を目で見ながら手を使って演奏し、音響効果としてペダルを踏んで音に特別な響きを持たせます。

 

車は目で周りを確認しながらハンドルをにぎって車の方向を操作し、ペダルを踏んで車を進めたり止めたりします。

 

1度に目と手と足を同時に使い、足でペダルを踏むという同じような動作もするので似ているということで、先生は「ピアノを弾いている人の方がペダルを踏むのに慣れているから有利だよ!」と教えてくれたワケですね。

 

私も『確かに!手で演奏しながら足ではペダルを踏むから、手と足をバラバラに動かすことに慣れていて有利なのかも!』と思いました。

 

数年後、実際に運転免許を取ってみて感じたのは…

 

『運転はセンスと運動神経が重要』ということです!

 

いくら演奏は慣れていても、やっぱり運転とは全然別物でした。(笑)

 

何事も、簡単に考えてはいけませんね…。

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夏という季節に聴いて欲しい。武満徹「波の盆」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、作曲家の武満徹さんの作品「波の盆」を紹介します。

 

聴きながら読んでね。↓

youtu.be

 

 

楽曲「波の盆」の説明

「波の盆」はサウンドトラックで全15曲収録されていますが、今回はその中の表題曲“波の盆”を少しだけ説明しようと思います。

 

上で紹介した動画(静止画ですが)は全曲入っているもので、始めの4分15秒までが“波の盆”です。

 

チェレスタやハープ、そしてビブラフォンなどの楽器を使うことによって、深海のように神秘的な様子や、海の底から水面へ向かって立ち上る泡のような揺らめき、海水の透明感を想像することができます。

 

ホルンの音色は、まるで異国の船を思い浮かばせるように深い響きです。

 

弦楽器は、揺れ動く波や人の感情のように、一拍づつに細かく強弱記号が書かれてありユラユラ、フワフワとした大海原のような包み込む暖かさも感じることが出来ます。

 

木管楽器は水面の煌めきや、波の飛沫のような爽やかさ、そして海の泡のような儚さがあり、武満さんの独特で掴みどころのないユラユラ揺れるハーモニー「タケミツ・トーン」も多く使われています。

 

 

この曲の録音に携わった指揮者は、その音楽の美しさに思わず涙を流したそうで、こう語っています。

 

「なんと感情に訴える音楽だろう!

私はレコーディングの間、涙をこらえることができなかった。

第1ヴァイオリン奏者の目にも涙が浮かんでいた。

武満が作った、この本当にロマンティックで感動的なテーマを多くの人に知ってほしい。」

 

作曲家冥利に尽きるエピソードですね。

 

指揮者人生の中で、後にも先にもこんな体験はしたことが無かったそうで、改めてこの曲の凄さを感じました。

 

 

 

《波の盆》というドラマ作品

「波の盆」は、1983年日本テレビで放送されたドラマ 《波の盆》の主題曲として書かれました。

 

脚本は富良野を舞台にした家族ドラマ「北の国から」を手がけた倉本聰さん、監督は「ウルトラマン」シリーズで有名な円谷プロで活躍していた実相寺昭雄さんです。

 

ハワイと日本を舞台にしたこのドラマでは、笠智衆さんや蟹江敬三さん、中井貴一さんなどの名俳優陣が、戦争によって引き裂かれた日系移民親子の姿を演じ、彼らの葛藤や家族の愛という色々な人間の感情が描かれています。

 

「波の盆」の主要メロディは作品のいろいろな場面で流れますが、特に印象的なのは、主演の笠智衆さんがクライマックスシーンで【自分より先に逝ってしまった息子】のことを想い、精霊流し・燈籠流しをした海を眺めているときに流れるものです。

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母国への想いを哀愁として感じると同時に、海のように広く深い「親心」のような愛情も感じとれる懐かしい曲調は、ドラマの核となる 『戦争とは我々に何を残したのか?』ということを切々と訴えかけてきます。

 

 

 

「波の盆」作曲者

「波の盆」は、東京都出身の日本を代表する現代作曲家・武満徹(Takemitsu Toruたけみつ とおる1930年10月8日-1996年2月20日没)さんが作曲しました。

 

「世界のタケミツ」と呼ばれ、日本のクラシック音楽を牽引してきた重要な人物です。

 

 こちらでも紹介しています。↓

boosensei.hatenablog.com

 

武満さん自身も戦争を体験していて、また戦争を題材にした作品も多く手がけているので、ドラマ《波の盆》の作曲も頼まれたのだと推測されます。

 

武満さんは生前、友人に当てた手紙に『鯨のような、優雅で頑健な肉体(からだ)をもち、西も東もない海を泳ぎたい…』と書いたそうです。

 

この発想から、武満さんの海への憧れを垣間見ることができ、作曲をするにあたって色々な曲に影響を与える考えだったのだろうと思います。

 

「波の盆」も、その海に対する想いが感じとれる名曲です。

 

 

 

「波の盆」と私

武満さんの作品は前衛的なものが多かったため、好き嫌いがハッキリと分かれてしまいます。

 

ですが、この曲では他の武満作品と違う印象を持つようで、好印象を受ける人が多く

  • 自分の葬儀の時はこんな曲でこの世から送り出して頂きたい。参列者の方には生きることの素晴らしさと勇気を持ってもらいたい。心から深く感動する曲です。
  • 心地よい音楽ですね。穏やかな海の情景が浮かんでくるような素晴らしい名曲。穏やかで親しみやすい。
  • 心に残る素敵な曲です。

というコメントが書かれていました。

 

 

海が近い土地柄のためか、私はこの曲を聴くと亡くなった祖母のことを思い出します。

 

自分自身に厳しい真面目なばあちゃん、幼い頃の怪我のせいで思うように動けずに歯がゆい思いをしていたばあちゃん、手先が器用なばあちゃん、文句を良いながらもじいちゃんの世話を焼くばあちゃん、一生懸命しつけをしてくれていたけど孫には結局甘くなってしまうばあちゃん、果物が好きでその中でも桃が大好物だったばあちゃん。

 

空の上から見守ってくれているんだろうか…、などと色々考えてしまいます。

 

もうすぐお盆だから、ばあちゃん孝行のために仏壇とお墓の掃除を一生懸命やろっと!

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音楽科のある学校はハーレム状態?

ようこそ!ブーです。

 

今日は、「音楽科は男性にとってハーレム状態なのか?」ということについて説明します。

 

 

 

男女の比率が問題

音楽科のある学校では、比率的に女性の人数が圧倒的に多いです。

 

そのため、状態だけだとハーレムと言っても良いと思います。

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音大生を統計していくと男女比は1:9から、多くても3:7ほどです。

 

人数にすると300人中30~90人程しか男子学生はいません。

 

高校の場合だと1クラス40人ほどの中で、大抵2~10人は男子がいるハズなんですが、「男子1人:女子39人」なんていう稀なケースもあります。

 

 

 

ハーレムの体験談

ブーの友達は3年間この「男子1人:女子39人」という状況だったので、『スゴイ!ハーレムじゃん!どんな感じ?』と聞いてみたことがあります。

 

ですが彼の回答は意外と言えば意外だし、当たり前と言われれば当たり前なものでした。

 

『う~ん、全然よくないよ。まず男としての人権がなくなる…。

 

1人しかいないから、男女のキワドイ質問もバンバン聞かれるし、

体育の授業前は俺がいても気にせず着替え始めるくせに早く教室から出て行けって言われるし、

女子の中で男子が1人だけだと目立つから先生に授業中メチャクチャ当てられるしさ。

何より女のケンカは陰湿で怖い。

 

天国とかハーレムと言うよりは、針のムシロ……地獄だね。』

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これだけ聞くと、ひどい目にあったりいじめられているのかと思いますが、そうではない様子です。

 

『嫌なこともあるけど、クラスのお父さんやお兄さん的な存在だったりして、全体的に家族みたいな感じだから、居心地は悪くないよ。』

 

という前向きな意見が聞けました。

 

いろいろが許されるほど仲が良いということだったんですね。

 

そして、これだけ人数に差があると逆に異性として扱われることはないんだな、とも思いました。

 

彼のような人もいますが、私が通っていた学校では男子学生はかなりモテていた印象があります。

 

特に印象に残っているのはヴァイオリン専攻の先輩で、彼は見た目も麗しく、そのうえコンサートマスター(すなわち首席奏者)だったので周りからは羨望の眼差しを受けていました。

 

女子学生の中では『2番でも3番でも…何番目でも良いから、彼女にしてくれないかなぁ…。』という声が上がるほど。

 

ですが、このようにモテるからといって何股もかけると、学校という閉鎖的な空間では相当なリスクをともないます。

 

もともと男子というだけでも目立っているのに、そんなことまでしたら噂がドンドン広まっていってしまい、最悪な状況になること間違いなしです。

 

実際に、修羅場になっている状況も目にしたことがありますし、オーケストラや合唱などの全学年関係なく参加する授業では嫌でも顔を合わせなくてはいけないので、その空間だけ凍り付いているのがわかってしまいます。

 

そうなると周りも気を使わなくてはいけなくなり、お互いにとても気まずいです。

 

学生の間くらいはハメをはずして遊びたいと思うでしょうが、健やかな学生生活を送りたければ、いくらモテるからといっても迂闊な行動は慎みましょう。

 

 

 

音楽を職業としている人では…

確かに学生時代は状況的に言うとハーレム状態ですが、音楽を職業にしている人や、クラシックの作曲家や指揮者は逆にほとんどが男性ですし、大学の教授や講師も男性の方が多いくらいです。

 

女性が多い職場で言うと、ピアノの個人レッスンくらいだと思います。

 

理由は諸説あり、

  • 将来のことを考えると、勉強をがんばって普通の大学を目指して就職するほうが経済的に安定する。
  • 『男性は働いて家族を養うべき』という考え方が今でも根強いから安定しない職業で家族を養うと考えると、かなりの覚悟を持って音楽の道に進んでいくから、そのぶん生き残っていく可能性も高い。
  • 歴史的作曲家の殆どは男性であり、演奏家にも男性ばかりの文化がいまだに根付いてしまっている。
  • プロとして活躍するためには色々なものを犠牲にする勇気がいる。
  • 厳しいレッスンや本番に向けたリハーサル、そのスケジュールに耐えるための根気、何より体力が必要となり男性向きの構造になっている。
  • 男性は家庭を背負うという覚悟がある分、音楽教諭になったり突き詰めてプロ奏者となることが多い。

 

などが挙げられます。

 

上に書いたように『働く』・『養う』という現実的なことを考えていることが理由で、音楽科に通う男子生徒が少ないのかもしれませんね。

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