日本語に訳された楽器の名前。〈その①〉
ようこそ!ブーです。
今回は、『日本語に訳された楽器の名前』を2回にわたって紹介します。
みなさんは、〈楽器の名前〉と聞いてどんなものを思い浮かべますか?
日本固有の楽器(琴・尺八・三味線・篳篥・笙など)以外で、日本語の名前が思い浮かんだ人は少ないのではないでしょうか。
思い浮かんだ人は逆に凄いですよ!
楽器の名前が日本語でパッと思い浮かばない理由は、現在聴くことのできる音楽の基礎となった「クラシック音楽」が西洋発祥ということと、
現代の日本では外国(海外)から伝わるものに偏見が少ないため、音楽を習うときも当たり前のように専門用語は外国語で習っているからです。
ですが楽器が伝わってきた初めの頃は、他国に対する偏見や、外国語で伝えても日本人にはまったく馴染みがないので上手く伝わらないという事もあったので、日本語に訳したものが伝わっていくことも少なくありませんでした。
グローバル化が進んだため、現代では日本語の名前はほとんど使われていませんが、「日本語に訳された楽器の名前」ということで言葉(固有名詞)としてはちゃんと残っていますし、由来や解釈が面白かったり、『なるほど!そういう理由かぁ…』と納得できるものも多かったので紹介していきます!
知っておきたい「楽器を日本語に訳したときの法則」
楽器を日本語に訳したときに、大きく分けて2つの法則があります。
法則の1つ目は、楽器の名前を日本語に訳した場合、その多くに「琴」という字が使われているという事です。
中には、「琴」という字が使われていると違和感を感じる楽器もありますが、中国から漢字が伝わるときに、弾いたり擦ったりして演奏する弦楽器や、吹いて演奏するリード式の管楽器、鍵盤楽器のほとんどに「琴」という字が使われていたことに由来して、日本でも楽器を指す漢字として「琴」という字が使われるようになりました。(付いていないものもあります。)
法則の2つ目は、「見た目や演奏方法など」の楽器の特徴から名前が付けられる場合も多いということです。
この2点が分かっていると、楽器の名前が漢字で書かれていても、どの楽器なのかが理解しやすいと思いますよ!
日本語に訳された楽器の名前
洋琴(ようきん)
洋琴とはピアノのことです。
ピアノの場合は、言葉の発音が上手く伝わりすぎて「ピヤノ」と誤表記されている時期もありましたが、明治時代に『西洋から来た鍵盤楽器』ということに因んで、日本語では「洋琴」と名前が付けられました。
この「洋琴」はピアノという楽器を総称で呼ぶときの名前ですが、電気が使われていないアコースティック式のピアノの種類は2種類あり、それぞれに名前があります。
1種類目のグランドピアノは「平台洋琴・三角洋琴・大洋琴」
2種類目のアップライトピアノは「竪式洋琴」です。
そして、ピアノの原型である楽器のチェンバロは「大鍵琴」と言います。(同じ仲間なのに、こっちには“洋”という字が付かないんだなぁ…。笑)
電子琴(でんしごと)
電子琴はエレクトーンのことです。
エレクトーンは、ヤマハ株式会社が製造・発売する「電子オルガン」という特定の商品名を指しオルガンをベースとした楽器なので、同じように電気によって演奏できる楽器でも「電子ピアノ・デジタルピアノ」はピアノをベースとした楽器のため電子琴ではありません。
風琴(ふうきん)
風琴はオルガンのことです。
オルガンが風を使って音を鳴らす仕組みの鍵盤楽器のため、この字が使われました。
似た構造で大規模な鍵盤楽器のパイプオルガンは「管風琴」と言います。
「パイプ=管」ということで、見たままの解りやすい名前ですね。
手風琴(てふうきん)
手風琴はアコーディオンのことです。
風を使って演奏するという構造がオルガンと似ていること、また手で演奏するためにこう呼ばれていました。
口風琴(くちふうきん)
口風琴はハーモニカのことです。(伝来した明治時代には“西洋横笛”と訳されていた時期もありました。)
「風琴」は上に書いたとおりオルガンを指しますが、ハーモニカの名前の由来には諸説あり、「口を使って楽器に風を送り込み音を鳴らす楽器のため」や「オルガンの調律用の道具として使われていたため」だと考えられています。
提琴(ていきん)
提琴はヴァイオリンのことです。
“提”という字は『手にさげて持つ・かかげる』などの意味があり、ヴァイオリンを演奏する様子をあらわしています。(似ている漢字の“堤”と間違えないようにね)
その他にヴァイオリン属の弦楽器類では、ヴィオラ(ビオラ)が中提琴、チェロは大提琴、コントラバスが低音提琴という風に、楽器の大きさと合わせて名前が当てられています。
竪琴(たてごと)
竪琴はハープのことです。
もともとアジアではハープに似た楽器があり、中国では箜篌(くご)、ミャンマーではサウン・ガウと呼ばれて演奏されていました。
“竪”という字は、「縦向き・上下・水平」などの方向をあらわす意味があり、楽器を立てて(縦向きにして)演奏する様子をあらわしています。
“琴”という字は、同じ弦楽器で日本人には馴染みのある「琴」や「箏」を想像することが出来るので、見たままですね。
自鳴琴(じめいきん)
自鳴琴はオルゴールのことです。
解釈としては、人間が音程を調節して奏でる楽器ではなく、設定された音・決まった音をほとんど自動で演奏するため、「自らが演奏し鳴る楽器」としてこの名前が付けられました。
人の手によってスイッチを押したりネジを回したりして音を鳴らすので、『本当に自動といって良いの?』と問いたくなりますよね…。(笑)
横笛(よこぶえ、おうてき、ようじょう)・長笛(ながぶえ)
フルートを日本語にすると横笛になります。
縦向きではなく横に持って演奏するためこう呼ばれますが、フルートだけではなく、邦楽器である竜笛や篠笛など、横向きに構える管楽器は「横笛」と呼ばれるので注意が必要です。
フルートと似た小さい横笛のピッコロは「短笛」といいます。
縦笛・竪笛(たてぶえ)
リコーダーのことを日本では縦笛と呼びます。
横向きではなく縦に持って演奏するためこう呼ばれますが、邦楽器の尺八のほかにクラリネットやオーボエなど、縦に構えて吹く管楽器は「縦笛」と呼ばれるので注意が必要です。
知っているものはありましたか?
私自身、調べるまで知らなかったものの方が多かったです。(笑)
今回は解りやすくスタンダードな楽器を紹介しましたが、次回は知らない人が多いかもしれない楽器も紹介しようと思います!