ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

スペインが生んだ「ギター音楽の先駆者」ナルシソ・イエペス

ようこそ!ブーです。

 

今日は、「ギター音楽の先駆者」ナルシソ・イエペスを紹介します。

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イエペスってどんな人?

Narciso Yepes(ナルシソ・イエペスもしくはナルシソ・ジェぺス1927年11月14日-1997年5月3日没)はスペイン出身のギタリスト、そして作曲・編曲家です。

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 24歳の若さで任せられた、映画「禁じられた遊び」の作曲・演奏で有名になり、

「音の可能性」を最大限に引き出すことができる10弦ギターも生み出しました。

 

 

音楽活動が尋常じゃない!

イエペスさんは常人にはマネできない精力的な音楽活動を行っていました。

 

演奏公演では世界各地をまわり、年間約120回にも及ぶ演奏活動を30年近く続け、日本だけでも1960~1996年までの間に17回も来日しているんですよ~。

 

しかも演奏公演に加えて、レッスンによるギタリストの育成も行なっていました。

日本国内にも弟子が何人かいて、そう考えると他の国にも必ず弟子がいたハズだから、かなりのレッスンをこなしていたいたことになりますね。(汗)

 

その他にも、録音したレコード枚数が50枚を超えてると言うんだから「いつレコーディングする暇があったの!?」と驚きしか感じません。

 

そして、そんな精力的な活動ができた理由が本当にスゴイので挙げていきます。

 

 

演奏できる曲の種類がものすごく多い

クラシック曲の時代では、バロックから近代・現代にかけての曲が演奏できました。

(ほとんど全部の時代のような気が…)

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そして、練習曲集やカタルーニャ地方の民謡曲集、ラテン系の作曲家の近代・現代作品、自分が作った曲や編曲した曲など、とてつもない数のレパートリーを持っていたんです。 

 

そのレパートリーの多さから20枚組のCDセットが販売されています。

もちろん曲のかぶりは一切無く、数えたら全部で207曲もありました。

とてもじゃないけど1日では聴き終わらないですね…。(ヒェ~!)

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演奏自体のバリエーションの豊富さ 

ソロ演奏だけでなく他の人との共演も行なっていたので、演奏形態のバリエーションが豊富でした。

 

古楽器であるリュートの演奏や、ギターでの歌の伴奏、そしてオーケストラとのコンチェルト(協演)、弟子とのギター2重奏、「トリオ・イエペス」としての親子共演など、

どれだけオールマイティーにこなせるんだよ!って感じですね。

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演奏家としての意識の高さ

イエペスはギターの魅力を演奏で表現していましたが、ギターという楽器そのものには満足していませんでした。

ギターはピアノのような豊かな音や大きさが出せない、改良すればもっといい音が出るはずだ、と思っていたんです。

 

そのため「正確だけど自然な表現」が出来るように10弦ギターを構想して、著名なギター製作者のホセ・ミラレスと一緒に作りました。

 

ギターは通常6本の弦が使われていて、10弦ギターはその通常の弦のならびに低音部を4本足した作りになっています。

音は増やした弦の数だけ多く共鳴するので、響きや大きさが増幅して音の可能性を最大限に引き出すことができるという構造です。

 

ですが、良く響く分だけ音がにごってしまい、演奏することが難しい楽器と言えます。

 

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さらには全身の筋肉の動きを研究することが、演奏上で左右のなめらかな指運びの技術(運指)や、曲を理解してどれだけロマンティックに演奏できるか(音楽的展開)ということに繋がるということを発見し、

これまでに無かった、ギターの新しい演奏技術の進歩を自ら体現して見せてきました。

 

 

なんて心が広くてお茶目な人なんだろう

彼の有名なレパートリーは「アルハンブラの思い出」や「アランフェス協奏曲」、そして「禁じられた遊び」です。

その演奏も素晴らしいですが、演奏家としての心構えというか人間の度量が違うなぁ、と思ったエピソードがあります。

 

こちらをご覧下さい。 ↓

 

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ブーが素晴らしいと思ったのは、日本語がたどたどしくてカワイイということではなくて、演奏をやり直してくれたことです!

演奏会とは演奏家にかなりの緊張を強いるものなので、曲を弾き始めたら「このままの流れで演奏を続けたい」と思うのが普通なのに、やり直してくれるなんて神対応過ぎる…。

 

 

映像は無いですが、他にもエピソードがあります。 

ある演奏会で最後の曲(演奏会の曲目構成として人気である「禁じられた遊び」を最後に持ってくるのが常だったらしい)が終ったあとにイエペスさんはこう言いました。

 

「オヤスミナサイ!」

 

そしてお客さんの前で、演奏する際に使っていた足台を折りたたみ、まるで『自分は片付けも済んだんだから、皆さんも早く帰りなさいね~』と言わんばかりに、ステージをすたすた歩いてそのまま舞台袖にさがって行きました。(お茶目!)

 

その後もしばらく期待の拍手は鳴り止みませんでしたが、「オヤスミナサイ!」の言葉通りにアンコールは無かったそうです。

 

一般的な演奏会ではあまり起こらないような出来事ですが、こういった笑える逸話はイエペスさんの

「芸術は神の微笑である」

という言葉を聞いたら、普通の出来事に思えちゃうんだから不思議だなぁ。

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