ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

音楽科のある学校はハーレム状態?

ようこそ!ブーです。

 

今日は、「音楽科は男性にとってハーレム状態なのか?」ということについて説明します。

 

 

 

男女の比率が問題

音楽科のある学校では、比率的に女性の人数が圧倒的に多いです。

 

そのため、状態だけだとハーレムと言っても良いと思います。

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音大生を統計していくと男女比は1:9から、多くても3:7ほどです。

 

人数にすると300人中30~90人程しか男子学生はいません。

 

高校の場合だと1クラス40人ほどの中で、大抵2~10人は男子がいるハズなんですが、「男子1人:女子39人」なんていう稀なケースもあります。

 

 

 

ハーレムの体験談

ブーの友達は3年間この「男子1人:女子39人」という状況だったので、『スゴイ!ハーレムじゃん!どんな感じ?』と聞いてみたことがあります。

 

ですが彼の回答は意外と言えば意外だし、当たり前と言われれば当たり前なものでした。

 

『う~ん、全然よくないよ。まず男としての人権がなくなる…。

 

1人しかいないから、男女のキワドイ質問もバンバン聞かれるし、

体育の授業前は俺がいても気にせず着替え始めるくせに早く教室から出て行けって言われるし、

女子の中で男子が1人だけだと目立つから先生に授業中メチャクチャ当てられるしさ。

何より女のケンカは陰湿で怖い。

 

天国とかハーレムと言うよりは、針のムシロ……地獄だね。』

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これだけ聞くと、ひどい目にあったりいじめられているのかと思いますが、そうではない様子です。

 

『嫌なこともあるけど、クラスのお父さんやお兄さん的な存在だったりして、全体的に家族みたいな感じだから、居心地は悪くないよ。』

 

という前向きな意見が聞けました。

 

いろいろが許されるほど仲が良いということだったんですね。

 

そして、これだけ人数に差があると逆に異性として扱われることはないんだな、とも思いました。

 

彼のような人もいますが、私が通っていた学校では男子学生はかなりモテていた印象があります。

 

特に印象に残っているのはヴァイオリン専攻の先輩で、彼は見た目も麗しく、そのうえコンサートマスター(すなわち首席奏者)だったので周りからは羨望の眼差しを受けていました。

 

女子学生の中では『2番でも3番でも…何番目でも良いから、彼女にしてくれないかなぁ…。』という声が上がるほど。

 

ですが、このようにモテるからといって何股もかけると、学校という閉鎖的な空間では相当なリスクをともないます。

 

もともと男子というだけでも目立っているのに、そんなことまでしたら噂がドンドン広まっていってしまい、最悪な状況になること間違いなしです。

 

実際に、修羅場になっている状況も目にしたことがありますし、オーケストラや合唱などの全学年関係なく参加する授業では嫌でも顔を合わせなくてはいけないので、その空間だけ凍り付いているのがわかってしまいます。

 

そうなると周りも気を使わなくてはいけなくなり、お互いにとても気まずいです。

 

学生の間くらいはハメをはずして遊びたいと思うでしょうが、健やかな学生生活を送りたければ、いくらモテるからといっても迂闊な行動は慎みましょう。

 

 

 

音楽を職業としている人では…

確かに学生時代は状況的に言うとハーレム状態ですが、音楽を職業にしている人や、クラシックの作曲家や指揮者は逆にほとんどが男性ですし、大学の教授や講師も男性の方が多いくらいです。

 

女性が多い職場で言うと、ピアノの個人レッスンくらいだと思います。

 

理由は諸説あり、

  • 将来のことを考えると、勉強をがんばって普通の大学を目指して就職するほうが経済的に安定する。
  • 『男性は働いて家族を養うべき』という考え方が今でも根強いから安定しない職業で家族を養うと考えると、かなりの覚悟を持って音楽の道に進んでいくから、そのぶん生き残っていく可能性も高い。
  • 歴史的作曲家の殆どは男性であり、演奏家にも男性ばかりの文化がいまだに根付いてしまっている。
  • プロとして活躍するためには色々なものを犠牲にする勇気がいる。
  • 厳しいレッスンや本番に向けたリハーサル、そのスケジュールに耐えるための根気、何より体力が必要となり男性向きの構造になっている。
  • 男性は家庭を背負うという覚悟がある分、音楽教諭になったり突き詰めてプロ奏者となることが多い。

 

などが挙げられます。

 

上に書いたように『働く』・『養う』という現実的なことを考えていることが理由で、音楽科に通う男子生徒が少ないのかもしれませんね。

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速度を合わせるために使う【メトロノーム】

ようこそ!ブーです。

 

今日は、メトロノームを紹介します。

 

 

メトロノーム

メトロノームは、音楽を演奏するときのテンポ(速さ)を一定に合わせるために使う音楽用具(拍子計測器)です。

 

ドイツ語でMetronom、英語ではMetronomeと書きます。

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一般的な楽譜に書かれてある速度指示に対応できるように細かく調節ができるようになっていて、私達はその速度を一定に鳴る音によって知ることができます。

 

昔は上のイラストのような機械式のものが主流でしたが、機械であるが故に刻んでいる拍にズレが生じる事があるため、現在では機械式のような欠点がない電子式メトロノームを使う人が多くなってきています。

 

機械式の欠点

  • 使う場所が水平で無かったら速度が一定にならないので、置き場所を考えなくてはいけない。
  • 引力の力が影響するので、本当に一定か判らない。
  • 長年使っていると機構の劣化が進んで拍がズレる。
  • 少しのズレだったら気が付きにくい。
  • テンポを一定に合わせることしか機能がない。
  • 毎回、しかも何度もネジを巻かないと動かない。

 

このように欠点があるのは、機械式のメトロノームが重力の作用によって動く振り子の原理を利用した音楽用具だからです。

 

一般的な「下に重りがついている振り子」ではなくて「上に重りがついている振り子」の作りになっていて、上向きについている重りは上下に動かして周期(速さ)を調節することができます。

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機械式のメトロノームの場合は、重りが上にあるときにはテンポが遅くなり、重りが下にあるときにはテンポが速くなりますが、振り子の長さには限りがあるので、テンポの調節は「およそ40~208まで」と制約されてしまいます。

 

振り子の原理では「重力や引力」が関係してくるので、重りの動きを一定にするためには水平な場所に置かなければいけません。

 

そして動かし続ける(衰退しないようにする)ための動力はゼンマイばねを使っているので、どうしても手でネジを巻く作業がつきまといます。

 

 

一方、電子式は水平でなくとも使えますし、拍がズレるくらいの劣化が起こっていたら電源がつかなくなるので買い替え時もわかりやすいです。

 

電子式なので動力である電池が入っていれば何時間練習しても止まることはありませんし、テンポも40~208という制約はなく様々なリズムパターンを刻むことができたり、音の高さを合わせる電子チューナーに内蔵されたりと、拍を刻むことしかできない機械式のメトロノームとは違って、たった1台で多種多様な機能をもつことができます。

 

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確かに電子式メトロノームはいろいろな種類や機能があってとても便利ですが、私は機械式の方が趣があって好きだなぁ…。

 

あの振り子時計のような『カチッ、カチッ、カチッ…』という音がないと寂しいです。

 

電子式メトロノームでも機械式のアナログな音を使っているものがありますが、やっぱりリアルな音ではないので、情緒が感じられないんですよね。

 

 

  

メトロノームに関係の深い人

メトロノームを作ったのは、Johann Nepomuk Mälzel(ヨハン・ネポムク・メルツェル、1772年8月15日-1838年7月21日没)というドイツ出身の発明家で、1816年に特許を取得しました。

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音楽家で初めて楽曲に取り入れた人物は、メルツェルと同じドイツ出身のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンです。

 

古典音楽の良さを残しつつ新しい手法・技法を取り入れていた、斬新で新しいものが大好きなベートーヴェンらしいなぁ…、と思いました。

 

なぜメトロノームをベートーヴェンが使うことになったかというと、メルツェルが作った「パンハルモニコン」というパイプオルガンのような形をした、オーケストラの楽器を内蔵している機械仕掛けの楽器のために曲を依頼されたことで親交を深め、その流れでメトロノームの存在を知ったからです。

 

当時のベートーヴェンは難聴によって音が聞き取り辛く、自分の作った曲を指揮したくても、音を聴いてリズムを取ることが上手くできないので苦しんでいました。

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ですがメルツェルの作ったメトロノームに出会い、曲のテンポが視覚的に把握できるようになったので、喜んで使うようになったのでした。

 

商売上手なメルツェルは、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社(日本ではブライトコプフと呼ばれる。ドイツ発祥の1番歴史が長い楽譜出版社にあてて手紙を書いています。

 

「ベートーヴェンは以前と新しい作品のすべてにメトロノームを表記いたしました。手元にカタログができておりますので、ご要望とあればお送りできます。」

 

実は、メルツェルがメトロノームを作る前に「クロノメーター」と呼ばれた拍子計測器がありましたが、質の悪さから評論家からは酷評されていました。

 

その拍子計測器の最悪な印象を払拭し、自分が作った商品を大々的に売り出すためには、著名なベートーヴェンの名前を語れることが大いに役立ったといえます。

 

 

 

メトロノームの使い方

メトロノームを使っての速さが指示されるときには、楽譜に「M.M=100」や「♪=100」という風に書かれます。

 

M.Mはメルツェルズ.メトロノーム(Mälzel's Metronome)と読み『メルツェルが作ったメトロノーム』という意味があります。

昔はこの表記がないと、正確なテンポを刻めない拍子計測器が使われるおそれがあったためです。

 

♪ の部分は楽譜に指定してある基準の音符と同じになっていなければいけません。

 

「M.M」と「♪」のどちらも基準の音符の速さを示す記号で、1分間にメトロノームが何回拍を刻むことができるかで速さが決まります。

 

「M.M=100」や「♪=100」の表記がある場合は、メトロノームの目盛りを100に合わせ揺らします。

 

電子式は液晶画面の数字を、上下についたボタンを操作して100に合わせましょう。

 

このときメトロノームが打つ拍の回数は、1分間におよそ100回になります。

 

拍子と演奏の速さを合わせるために、機械式ではツマミで指定・電子式ではボタンで操作した「2、3、4、6間隔」の拍でベル(鐘)などの音が鳴る機能があります。

 

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この機能がついている理由は、小節の始めが判るようにするための配慮と、間違えたときにベルがなる場所がズレるので、適当に拍を誤魔化すこと(ズル)ができないようにするためです。

 

個人的に、お経の読経のときに使う「木魚とリン」に似ていると思います。

『ポクッ、ポクッ、ポクッ、チーン』って感じがしませんか?(笑)

 

 

 

メトロノームのおもしろい実験

この動画は「同期現象」を再現した物理の実験です。↓

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この実験は、東京理科大学工学部経営工学科の教授である池口徹さん率いる「池口研究室」のメンバーが行ないました。

 

台の上にズラリと並べられているのは、なんと100個のメトロノーム!

(研究室では他にも2・3・7・10・24・32・54・64・72個のメトロノームを使った実験も行なっています。)

 

構造上、同じペースを維持して動き続ける装置のハズなのに、始めはバラバラだったメトロノームがだんだん揃ってきてしまうなんて、本当に不思議だなぁ…。

 

同期現象は、メトロノームが左右に振れる事によって起きる「運動エネルギー」が、乗っている大きな台ごと全体を揺さぶり、乗っているメトロノームすべての振幅を強制的に調節してしまうことによるズレ、が原因で起こります。

 

水平でないとズレが生じるという、機械式メトロノームの欠点を利用した良い実験です。

 

位置エネルギーや運動エネルギーを使った「運動方程式」という数学的な説明もありますが、難しいので今回は割愛させて下さい。

 

とても興味深く面白い実験ですが、家でやろうと思ったら処理しきれない量のメトロノームが必要になりますし、普通に騒音でご近所から苦情がきてしまいそうなので止めておきましょう。(笑)

 

 

 

メトロノームのための曲

メトロノームは本来、速度を知るための音楽用具ですが、その音の刻みを利用して曲も作られました。

 

知られているものでは、ハンガリー出身の現代音楽の作曲家のLigeti György Sándor(リゲティ・ジェルジュ・シャーンドル、1923年5月28日-2006年6月12日)が作曲した「100台のメトロノームのための-ポエム・サンフォニック」と、日本の作曲家でピアニストの一柳慧(1933年2月4日~、オノ・ヨーコの元夫)が作曲した「電気メトロノームのための音楽」という曲があります

 

機械式のメトロノームを使った「100台のメトロノームのための-ポエム・サンフォニック」では、他の楽器は使われずメトロノームのみの演奏です。

 

演奏は1分34秒あたりから↓

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動画では電気制御で演奏が開始しますが、本来は演奏者2人がメトロノームを動かす準備をします。

 

演奏者はメトロノームがすべて動き始めたらその場からいなくなり、逆に聴衆は演奏者が去ってから入場が認められます。

 

バラバラに鳴らされたメトロノームが徐々に止まっていって、最後の1つが止まると演奏の終わりを意味するので、そのときの始まりやメトロノームの具合で演奏時間は異なり「最短で5分、最長で20分」とかなりの差がでます。

 

 

電子式のメトロノームを使った「電気メトロノームのための音楽」では、色々な音や声が使われており、音楽の異端児であるジョン・ケージに大きく影響を受けた作風になっています。

 

音量注意!途中で変な音や声が入っているので驚かないように気をつけてね。

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3~8人で演奏され、演奏時間は8~15分ほどかかります。

 

メトロノームを楽器として考えた発想力もスゴイですが、正確に拍を刻む道具を使って無秩序に聴こえるように作曲してしまう芸術性に圧倒されてしまいました。

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音楽科の進路。【過酷な現実】

ようこそ!ブーです。

 

今日は、音楽科の進路について書きます。

 

今までは音楽の楽しさや素晴らしさを紹介してきましたが、音楽を学問として本気で習ったあとの将来について考えると、「好き」とか「楽しい」だけではやっていけません

 

音楽という夢だけを追いかけ続けた自分が言うのもアレですが、今から将来が広がっていく若者たちには大好きな音楽での後悔をしてほしくないんです。

 

なので、思い切って書くことにしました。

 

これから下に書いてあることは、進路(自分の将来)を考える上ではとても大事なことですが、音楽科への進学を考えている人からしたら、聞きたくないような厳しいことが書かれているかもしれません。

 

もしかしたら、受験をやめたい諦めたいと思ってしまうほどの内容かもしれないので、心の準備をしてから読んでくださいね!

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【過酷な現実】

プロの音楽家にはなれない

進路を考えるときに知っておかなければいけないことがあります。

 

それは、音楽科のある学校に通って、きっちり卒業したとしても『必ずプロの音楽家になれるわけではない』ということです。

 

プロの音楽家は、《作曲・演奏又は演奏の指揮に従事する人で、作曲家・編曲家・コンサートマスター(首席奏者)・声楽家・オペラ歌手・バイオリニスト・ピアニスト・筝演奏家・雅楽楽手・歌手・楽士・能楽はやし(囃子)方・長うた(唄)はやし方・音楽指揮者・浄瑠璃師》などの仕事についていて、報酬をもらっている人のこと。

 

音楽評論家や、学校の教員、音楽教室の個人教師などは音楽家に当てはまりません。

 

上に挙げたような種類の、音楽家として働いている人も確かにいますが、とても少ないのです。 

 

総務省統計局の調査によると、2018年6月20日(7月16日時点で最新)に公表されている日本の人口は約1.26億人で、

一番近い年に行なわれた平成27年の国勢調査によると、職業分類したときの15歳以上の就業者数は約5889万人、日本に居住している音楽家(クラシックの音楽家以外を含む)の人数は約2.3万人という結果でした。

 

出典「平成27年国政調査結果」(総務省統計局)

 

 

それを踏まえて、音楽家の割合を計算すると…

 

人口での割合

(23.000÷126.000.000)×100%

約0.018%

 

就業者としての割合

(23.000÷55.890.000)×100%

約0.041%

 

どちらも、プロの音楽家は0.1%にも満たないという結果になりました。

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この割合だけでも充分に少ないですが、ここから自分のやりたい分野、作曲・演奏・指揮といったように細かく分けていくと、もっと少なくなります。

 

そして、これは現在の音楽家(15歳より上の全就業者)の割合なので、これから音楽家になる人を年齢別に分けて自分の年齢に当てはめれば、その割合はもっともっと減ってしまうんです。

 

このことからプロの音楽家は、本当に限られた人にしかなれない職業なんだ、ということがわかったと思います。

 

 

 

待っているのは挫折

『プロになれなくても、他の音楽関係の仕事を探せればかまわない。』という人も居ると思います。

 

確かに0.1%にも満たないプロの音楽家よりも、音楽教員や講師・調律師・療法士・音響さん・楽器屋さん・楽譜屋さんなど、他の音楽関係の仕事をしている人数の方がはるかに多いです。

 

ですが、これらも決して簡単になれるものではない事を知っておきましょう。

 

音楽が関係している仕事は選ばなければ数多くありますが、資格や特別な能力・知識を持っていないとやっていくのが厳しいことが多いのです。

 

そのために音楽科を持った学校が存在しているわけですが、音楽関係の仕事を目指して自分の行きたい音楽科の分野や専攻に入れたからといっても安心はできません。

 

なぜなら、行きたい分野や専攻、目指していた仕事が、あなたに合っていないかもしれないからです。

 

私の場合、ピアノを長年やっていたので『学校に行くならピアノ科だ!』と意気込んで高校はピアノ科に入学しましたが、在学中に才能が無いことに気が付き、大きく挫折しました。

 

ピアノ以外に何の取り得もなかった私は、今までしてきたことが全て水の泡になってしまった気がして、地獄に落とされたような気持ちを味わったんです。

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挫折しても好きなことだったので3年間どうにか通いましたが、『卒業したその先』を考えると、楽しい学生生活の裏には常に不安が付きまとうことになります。

 

私がその不安に押しつぶされることはありませんでしたが、周りにいる人のなかには、その不安に負けてしまった人もいるんです。

 

  • 挫折して引きこもってしまった同級生達は留年し後輩になり、休学や退学しました。
  • 自分の音楽のあるべき場所がわからなくなり、留年に留年を重ねた元先輩方は同級生から後輩になり、結局学校を去っていきました。
  • 卒業をしてもすることが無いからと、自分に合っていないのに惰性で専攻科(大学院的なもの)へ進学しようとした友達は、進学試験に落ちてうつ病になりました。

 

こんな思いをしなくても専攻の変更ができる学校や、試験を受けて他の分野に編入という手もあります。

 

ですが、それでも最低1年は棒に振ってしまうので、そのまま見切りをつけて音楽自体を辞めてしまう人が多いです。

 

 

 

やっぱり音楽に携わっていたい!

このように音楽科に入っても厳しいことが多いので、そこで音楽を諦めて逆に将来を見据えた「音楽とは全然関係のない学校」に行ってしまう人がいます。

 

ですがこの人が、後になって『音楽関係の仕事に就きたい』と思っても、音楽科の無い学校では音楽に関係する就職先にツテがなかったり、先輩方の実績も無いので探すことがとても難しいんです。

 

もし音楽科のある学校に行っていたら、卒業生達が積み重ねてきた実績と、彼らのおかげで蓄えられた音楽の仕事に関する情報の量は豊富にあります。

 

就職先を探すときには有利になる事が多いので、できないからと言って音楽自体を諦めるのではなく、自分が音楽で出来ることを良く考えて探し、音楽に携わっていられるようにしておきましょう。 

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諦めないで!1人で悩むより相談しよう。 

進路を考えるのは初めてで、わからないことがたくさんありますよね。

 

上に書いたような過酷な状況になると考えると不安になり、誰かに相談したいと思うのが普通です。

 

ですが回りにいる親しい友人や大人達は、音楽の知識はあっても学校のことになると解らないので相談できないといった状況になるでしょう。

 

そんな、誰にも相談できずに悩んでいる人がいたら、まずは自分の通っている学校の音楽の先生や、個人的にレッスンを受けている先生に相談したり、気になることを聞いてみるのが良いと思います。

 

音楽に関係のある仕事をしているということは、同じような道を歩いてきた大先輩と言うことですからね!

 

 グダグダ悩むより、ドンドン相談しよう!

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嫌がらせが好きなの?エリック・サティと「ヴェクサシオン」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、作曲家エリック・サティの嫌がらせの集大成とも言える「ヴェクサシオン」という曲を紹介します。

 

以前もサティの曲を紹介しました。↓

boosensei.hatenablog.com

 

 

 

エリック・サティ

Erik Alfred Leslie Satie(エリック・アルフレッド・レスリ・サティ1866年5月17日-1925年7月1日没)はフランス出身の作曲家です。

 

カトリックの洗礼を受けていたサティは幼い頃から音楽に興味がありました。

 

6歳で教会に置いてあるパイプオルガンに魅せられ入り浸るようになり、13歳の頃には1795年を起源にするパリ音楽院(現在のパリ国立高等音楽・舞踊学校)という由緒正しき音楽学校に入学しました。

 

ですが、当時の音楽院はオペラ関係者のための養成機関と化していて、『声楽家といえばオペラ歌手・作曲家といえばオペラ作曲家』という風にしかイメージできないような学習内容と、教えてくれる声楽教師の質の低さや知識の不足、また古くからの癒着のため教師の高齢化が目立つ最悪の状況になっていたので、サティが求めていた音楽性には合いません。

 

7年たったある日とうとう『退屈すぎる』という理由からパリ音楽院を退学します。

 

のちに入学したスコラ・カントルムという音楽学校は、音楽の伝統が深い諸国の歴史や、その作品を熟知できるマジメな学習内容だったので卒業することができました。

 

音楽家としては1887年からシャンソン・バー(シャンソンが聴ける酒場)でピアノ弾きとして活動を始めます。

 

そのかたわら、フランスで活躍していた芸術家にインスピレーションを与えていた「カフェ・コンセール」というカフェで行なわれる音楽ショーを、画家のパブロ・ピカソや詩人のジャン・コクトーと共に楽しみ、その他にもカフェに集う多くの芸術家と親交を深めていくのでした。

 

学校で習った音楽の勉強も作曲の役には立っていましたが、こういった経験や芸術家との出会いから得たインスピレーションの方が、サティの音楽に大きな影響を与えています。

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嫌がらせの集大成「ヴェクサシオン」

サティは、自分が作曲した作品に奇妙でありえないようなタイトルをつけたり、曲自体も演奏者を困惑させるような作りになっていたりするので「音楽の異端児」や「音楽の変わり者」と呼ばれるほどの人物でした。

 

その中でも1番ヤバイのが「Vexationsヴェクサシオン」というピアノ曲で、全てを演奏し終えるのにかかる時間は、なんと15時間以上

 

時間を聞いただけで演奏したり聴いたりする気力がなくなりそう…。

 

それもそのはず、タイトルの「ヴェクサシオン」はフランス語で『嫌がらせ』という意味があります。

 

この作品はサティの遺作で、弟子のロベール・キャビーがフランス国立中央文書館から見つけ出した遺作で1893~1895年に作曲されたものです。

 

楽譜はいたってシンプルで行数はたった3行しかありませんが、この3行を1回と考え、それを840回くり返して演奏をしなければいけません。

 

1回は1~1分半ほどと短い曲ですが、それを840回もくり返すのは骨の折れる作業です。

 

そのため楽譜には、

『このモチーフを連続して840回繰り返し演奏するためには、大いなる静寂の中で、真剣に身動きしないことを、あらかじめ心構えしておくべきであろう』

 と書かれてあります。

 

ですが、このような言葉の説明はあるのに、リズムに関係する拍子記号や細かく分けるための小節線、そしてメトロノームでの速度指示書かれていません

 

なので演奏者それぞれの演奏速度によって、全てを演奏し終える時間が15時間~25時間と幅があります。

 

この動画は1回分の演奏です。安心して最後まで聞いてください。↓

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これが延々15時間以上も演奏されると考えたら、ピアニストも観客も耐えることが出来ないと思います。(840回も同じメロディを聴いたらイヤでも覚えてしまいそうです…。)

 

実際に1人で弾こうとしたピーター・エバンスは595回・およそ15時間で断念しました。

 

理由は『幻覚をおこしたため』です。

きっと座ったままで居なければいけないストレスと、15時間も演奏していた過労のせいでしょうね。(笑)

 

通常のリサイタル(1人で行なうコンサート)の時間を考えて1人3時間の持ち時間とすると、5人以下の人数でこの曲を演奏するのは集中力・体力・精神力が損なわれるのでやめたほうが良いと思います。

 

 

初めての演奏

この曲が世界で始めて演奏されたのは、1963年12月31日~1964年1月1日のニューイヤーコンサートです。

 

「4'22"」という曲でお馴染みの作曲家ジョン・ケージを筆頭に、ピアニスト10人と助っ人2人で行なわれました。

 

夕方の6時40分から演奏を始めて翌日の午後0時40分まで弾き続け、約18時間40分かかったと記録されています。

 

日本で始めて演奏されたのはそれから3年後の1967年(昭和42年)、こちらも年越しのコンサートにて演奏されました。

 

テレビ番組『題名のない音楽会』の初代司会者として有名な黛敏郎さんを筆頭とした作曲家16人によって、12月31日午前11時15分から1月1日の午前2時28分までの15時間23分行なわれたと記録されています。

 

 

 

 

意外と気軽に聴ける!

他の作曲家の作品では、終わりがなく永遠にくり返される曲や、演奏に639年かかる建造物のサグラダファミリアのような壮大な曲もありますが、キチンと楽譜にされていて演奏が可能なものとしてはこの「ヴェクサシオン」が1番長いんです。

 

ギネスブックに載るくらい長い演奏時間のため、普通であれば販売されているCDに入りきれません。

 

ですが、同じフレーズを何度も弾くので18時間全部でなくても良いという考えもあり、数回弾いたヴァージョンがCDとして存在しているので、意外と気軽に聴くことができるんです。

 

これをエンドレスでかければ、即席でフルヴァージョンにすることが出来るので、いつか試してみようと思います。(笑)

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音楽による癒し効果

ようこそ!ブーです。

 

今日は、音楽による癒し効果について書きます。

 

 

あなたはリラックスしたいとき、どんな音楽を聴きますか?

 

私の場合はクラシック音楽を聴くことが多いですが、クラシック音楽に限らず自分が好きな音楽には癒しの効果があると思います。

 

ストレスの多い現代社会では、好きな音楽を聴きながら過ごしたいものですね。

 

 

 

癒し効果と音楽療法

音や音楽には人を癒す効果があり、音楽療法(Music therapy ミュージック・セラピー)という治療法があり、高齢者、身体や精神上の障害を持っている人、引きこもり児童のケアなど介護・福祉・医療の現場で行なわれます。

 

音楽療法は、患者さんの状況に合わせた音楽的プログラムを組み、音楽の持つ力をリハビリテーションやケアに生かしたものです。

 

音楽を聴いたり歌ったり演奏したりすることで、障害の回復や生活の質の向上などを目指して精神的なケアに務めています。

 

音楽療法を行なうのは、音楽療法士(music therapist ミュージック・セラピスト)という専門的な職業ですが、残念ながら日本ではあまり普及しておらず国家資格は存在していません

 

もし資格が必要であれば民間の団体「音楽療法学会、音楽療法士育成協議会、インストラクター技術協会、兵庫県・奈良市・岐阜県などの自治体」で音楽療法士としての認定を受けることはできます。

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音楽療法士さんは国家資格も無くて普及もしていないことから、医療や福祉とは関係ない他の仕事と兼業していたり、音楽療法を必要とする現場で直接看護師・介護士などとして働きながら同じ職場で音楽療法士として活動することが一般的です。

 

音楽が持っている癒しの効果は科学的に証明されていて、音楽療法士という職業もたしかに存在しているのに、国に認められていないのは本当に不思議ですよね…。

 

自治体や大学で、音楽療法のための研修や研究機関を設けるところが出てきてはいますが、まだまだ日本では発展途上の分野なので、今後もっと活動が活発になれば良いな…と思います。

 

 

 

『癒しの音楽』ヒーリング・ミュージック

音楽療法ではクラシックやポップスなど、さまざまな音楽を使いますが、一番ジャンルとして合っているのは「Healing music ヒーリング・ミュージック」だと思います。

 

イギリスなどでは自然回帰願望を持った人々(ヒッピー)を対象として、実験的な癒しの音楽として「New Age music ニューエイジ・ミュージック」というものが1960年代から認知されるようになりました。

 

そのニューエイジ・ミュージックとほぼ同じ意味合いのものが、現在知られている「ヒーリング・ミュージック」で、日本では『癒しの音楽』と呼ばれるものです。

 

癒し効果を直に求めた音楽なので自然界の音を使っている楽曲もあり、その多くに「1/fゆらぎ」が感じられるためα波(アルファ波)というリラックスしたときの脳波が出て私達を癒してくれます。

 

ですがスピリチュアル的で幻想的な雰囲気をもっている音楽なので、新興宗教などの集会で使われることもありました。(教団がさまざまな事件を起こしたことによって、『癒しの音楽』自体が非難の対象になりかけたんですよね…。)

 

私が知っているヒーリング系のアーティストといえば、Enyaエンヤ、Sarah Brightmanサラ・ブライトマン、André Gagnonアンドレ・ギャニオン、Liberaリベラ、喜多朗、坂本龍一、久石譲、S.E.N.S.センスなどがいますが、他にも色々なグループや音楽家がいます。

 

昨今では、Marconi Union(マルコーニ・ユニオン)というイギリスの音楽グループの楽曲“Weightlessウェイトレス”が『世界一癒される音楽』として注目されました。

 

“Weightless”は日本語だと「無重力」という意味。↓

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この曲は、英国音響治療学会(British Academy of Sound Therapy)と協力して8分間のトラックとして製作されたものです。

 

精神科学者によって行なわれた実験によると、被験者たちがいくつかの癒しソングを聴きながら難解なパズルに挑戦した際に、“Weightless”を聴きながらパズルに取り組んだときの心圧や脳活動のデータでは、「最大で65%もストレスが軽減され、心拍も35%減り落ち着いた状態になった」という結果が得られました。

 

他の音楽を圧倒する結果によって、“Weightless”は科学的に「世界で最もリラックスできる曲」に認定されたというワケです。

 

曲の全体に単音で変化の無い長い低音(ドローンバス)や、心臓の鼓動のようなリズムを刻む音、電子楽器でしか作り出すことのできないフワフワした神秘的な音などがちりばめられ、耳障りな高周波がカットされているので、聴いている人がトランスや瞑想状態になりやすいと考えられます。

 

そして、人間の心拍数や脳波とシンクロするゆったりとした60bpm(Beat per minuitesの略、音楽の)の速さと、メロディの繰り返しが無いことによってありきたりにならず、音の予測もせずに済み脳に負担がかからないので、より深いリラックス効果が得られます。

 

また人間が音楽を聴くとき、曲に馴染むための過程には4~5分かかることから、この曲が8分間であることも最適なんだそうです。

 

「8分じゃ短い!」という人のために10時間ヴァージョンもあるそうなので、試してみるのも良いのではないでしょうか?(笑)

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癒しの音楽に対する個人的な感想

癒しの音楽を聴いてみたら、リラックスやヒーリングとは逆の印象を感じた曲が数多くありました。

 

普通の音楽と比べると不思議な感じが増すので、異世界へ放り出されたような不安感や、得体の知れない暗闇のように先が見えない恐怖を感じるんですよね。(汗)

 

あと、リラックス効果が出すぎて運転や仕事をするには向かないので注意が必要だなと思いました。

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