オペラ作品トゥーランドットとフィギュアスケート。
ようこそ!ブーです。
今日は、オペラ作品トゥーランドットとフィギュアスケートの関係について紹介します。
日本女子フィギュアスケート唯一の…
フィギュアスケートといえば、テレビ特番で始めにこのオペラの「誰も寝てはならぬ」という曲が流れることが多くなりましたが、
日本人の女子フィギュアスケート選手で、唯一オリンピックで金メダルをとった人をご存知でしょうか?
伊藤みどりさんや、浅田真央さんではありません。
実は、2006年のトリノオリンピックに出場して、この「誰も寝てはならぬ」を演技曲に使った、荒川静香選手ただ1人なんです。
荒川選手の演技で、衝撃的そして記憶に残っているのは流行語にもなった「イナバウアー」かも知れません。
でもブーが注目したのは、その演技で使われたトゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」でした。
Turandotトゥーランドット
トゥーランドットはイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのオペラ作品で、カルロ・ゴッツィ版の原作から構想を得て作られています。
作曲者は作曲途中の1924年に亡くなっていますが、友人でオペラ作曲家のフランコ・アルファーノが遺稿を参考にして1926年に完成させました。
3幕編成(演出によっては4幕)のオペラで、演奏時間は約2時間です。
Nessun dorma「誰も寝てはならぬ」は第3幕で歌われます。
実は、世の中にいろんなヴァージョンの「トゥーランドット」があります。
それは、この原作が古い時代の物語で、いろんな言葉に翻訳されて広まったからです。
架空の時代の中国北京(トゥーラン国)が舞台で、オペラ全体も中国風の曲でまとまった雰囲気です。
オペラの解説
昔々、トゥーラン国にたいそう美しく、しかし人間的にはとても恐ろしいトゥーランドットというお姫様が住んでいました。
宮殿前の大広場で、役人が群集に向かってこう言います。
「民よ!これが掟だ。トゥーランドット姫に求婚を申し込む者は、王族の血筋でなければならない。
そして姫の出す3つの謎を解いた者が、姫を妃にできる。もし謎を解けない場合は首を切り落とす。」
その日も謎解きに挑戦して、失敗したペルシア国の王子が(日が沈んで月の出る頃)首を切り落とされるために、
群集たちの「早く処刑しろ!」という怒号を浴びながら広場に引き立てられたのです。
その群衆の中にダッタン国の王子がいます。彼らは敗戦により国を追われたため、ここまでやってきたのです。(ダッタン国は、韃靼やタタールとしても知られた国。今のモンゴルあたりのこと)
ダッタン国の元国王は盲目のため、人の波にさ迷いながらも心優しき召使の少女と共に同じ場所にたどり着き、3人は再会を喜びました。
そんな広場でペルシア王子の処刑が行われ、その様子を観にトゥーランドット姫がとうとう姿を現します。
「なんて残酷な姫だ、罵ってやろう!」と息巻いていたダッタン国の王子は、その姫の美しさに一目で恋に落ちます。
「女神のような美しさ…。あぁ、これは夢なのか?それとも運命に導かれた奇跡なのか?」と思いを募らせます。
どうやら銅鑼を鳴らせば姫が姿を見せるらしいので、王子はみんなの必死の制止も聞かず、全てを捨てる覚悟で
「トゥーランドット!トゥーランドット!」と叫びながら銅鑼を3回打ち鳴らし「あなたを私のものにする!」と宣言するのでした。
姫の家臣の3人が軽快に、王子と姫の噂話をしています。
「あの異国人(王子)が勝てば婚礼、負ければ埋葬!祝いの赤い提灯、弔いの白い提灯!全ては決まりに従って行わなければならない。」と一生懸命ですが、
自分たちの故郷を思い出して「なんでこんな仕事をしなければいけないのか。帰りたいなぁ…、でも帰れないだろうなぁ…」と急にシンミリします。
そのうちに、広場には人が押し寄せ群衆となり、トゥーラン国の皇帝が現れダッタン王子を諭します。
「異国の若者よ、こんな血塗られた掟のために命を落とすことは無い。ここから去るのだ。」
しかし王子は言うことを聞きません。
そこに冷やかな様子でトゥーランドット姫が現れ、なぜこんな酷い仕打ちを行っているのか彼に説明します。
「遠い昔、この宮殿に住んでいた姫は、お前のような異国人に騙されて国ごと滅ぼされたのだ。
なのにお前たちはまた世界各国からここにやって来た。私は消された彼女の代わりにお前たちに復讐しているのだ。私を得る者は誰もおらぬ!」
そして姫から3つの問題が出され、1つひとつ王子は熱い気持ちで答え、見事に全問正解します。
姫はそれでも拒絶しますが、王子は彼女にちゃんと愛してもらうため、今度は逆に問題を出すのです。
「私の名を知るものはいない。明日の夜明けまでに私の名を知ることができれば、潔く死にましょう。」
姫は必死になって皆に言います。
「今夜は誰も寝てはならぬ!彼の名を知ることができなければ皆処刑じゃ!」
王子はそんな一生懸命になっている姫のことを思いながら、高らかに自分が勝利する希望を歌います。
これが「誰も寝てはならぬ」です。
しかし、彼の名前を知っている人はいました。ダッタン国の元国王と召使の少女です。
そのため召使の少女は捕まり、名前を白状するように拷問されてしまいます。
王子を慕っている彼女は、彼への忠誠のために衛兵の剣を奪って自決。トゥーランドット姫はその献身的な愛を目の当たりにして動揺したのでした。
人が思わぬ死を迎えることに慣れてしまっていた人々も、この健気な少女の死でやっと気がつくのです「これが良心の呵責なのか」と。
そのあと夜が明けていないのに、王子が姫に自分の名前を明かします。
「私の名も、命も差し上げよう。私の栄光はあなたの抱擁、私の命はあなたの口付け。決して恐れはしない!」
姫は皆を呼んで「彼の名前がわかった。」と玉座に向かいます。
そして夜明けの光と共に、高らかに宣言します。
「彼の名は………『愛』です!」
めでたしめでたし
日本のフィギュアスケートと「誰も寝てはならぬ」
2006年は、まだフィギュアの競技に歌詞が入った曲が使えなかったので、荒川選手が使ったのもメインがヴァイオリンの演奏でした。
この曲の歌詞は最後に「勝ち取るだろう、勝ち取ってみせる!」ってなことを言ってるわけですから、
たとえ歌詞が入ってなくても、内容を知っているイタリア人からしたら「えっ!何この選手すごい!メッチャやる気あるやん!」って思いますよね。
オリンピックが開催される国に合わせて演技用の選曲をするのは、会場を味方につけると(盛り上がると)点数をつけてもらうとき少しでも有利になるからですが、
それにしても思い切った選曲だなぁと感じました。
たしかに良い曲ではありますが、それと同時にプレッシャーもかかる内容なので、本当に自信がなければ気持ちの方が負けてしまい、とてもじゃないけど大舞台の演技に使えるような曲とは思えません。
でも結果的に、オリンピックではめずらしいスタンディングオべーションが起こるほど、落ち着いた良い演技をして本当に金メダルを勝ち取ってしまったんですから、荒川選手はスゴイ集中力を持っていますよね!
そして、それ以降フィギュアスケートには欠かせないスタンダードナンバーとなったのでした。