音が出れば良い!タイプライターだって楽器だ!
ようこそ!ブーです。
今日は、音が出れば本当に何でも楽器になるんだなぁ、ということを書きます。
音が鳴ればルールはない!
クラシックの楽器と言えば、弦楽器(ヴァイオリンやギターなど)、管楽器(フルートやトランペットなど)、打楽器(太鼓や木琴など)、鍵盤楽器(ピアノなど)などがあります。
でも、音楽をつくる(作曲する)ときには、「この楽器しか使ってはいけない」っていうルールはないんです。
むしろ、音が出れば楽器でなくても良いし、「これ、楽器じゃないじゃん!」っていうようなのでも本当に好き勝手に使えるんですよ。
「アメリカ軽音楽の巨匠」が生み出した名作、The Typewriter(タイプライター)
アメリカ出身のLeroy Anderson(ルロイ アンダーソン)が1950年に作曲した、「タイプライター」という管弦楽曲を紹介しようと思います。
演奏時間は2分ほど。
私は実物を見たことはありませんが、タイプライターってご存知でしょうか?
昔、まだワープロもパソコンも無い時代に活躍した、手で書くより早く文字を文章にすることが出来た機械です。
そしてこの曲は、そのタイプライターを使って忙しく働いているオフィスワーカーの日常を、面白おかしく描写した作品なんです。
初めて聴いたときには「え!これ楽器じゃないの!?」と思ったくらい、曲に馴染んでいます。
クラシックではありえないような演出
演奏する時、なぜかだいたいタイプライター役の人はあとで入って来るんですよね。
遅れてきたくせに、入念に仕事の準備をするところから始まります。(笑)
鞄からマイボトルを出したり、おやつを置いたり、ヒザかけをかけたり、紙をタイプライターにセットしたり、アームカバーをしていたり、黒ぶちの伊達眼鏡をかけていたり、髪をピッチリ七三分けにしていたり、演奏者によって本当にさまざまな演出があって面白いです。
そして、指揮者やコンサートマスターとタイプライターの具合を確認して、やっと演奏に入ります。(タイプライターにチューニングは必要ないだろって、笑いをこらえながら観客は待つんですよ)
もちろん、曲が始まってからも笑えます。
タイプライターの文字を打つ「カタカタ」という音と、文字が紙の端までいったことを教えてくれる「チーン」という音、そして文字を次の行に移行する時の「シャッ」っていう音が絶妙のタイミングで、本当にコミカルなんです。
どの演奏会でも、すごく上手に文字を打ち込んでるように見えますが、本業のタイピストが演奏しているわけではなく、打楽器奏者(だがっきそうしゃ)が演奏することが多いです。
本物のタイプライターを使った方が曲の内容はわかりやすいですが、どうしても用意できないときは、「チーン」の部分をトライアングルやベル、「カタカタ」の部分はウッドブロックなど木製の打楽器、「シャッ」の部分はギロで代用が出来ます。
演奏時間2分に対して、演出の時間も2分とっちゃうんだからすごいですよね~。
他の楽器じゃないものを使ったクラシック曲
“1812”Festival Overture Op.49 序曲「1812年」
Pyotr ilich Tcaukovsky(ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)の作品で大砲を使っています。
演奏時間15分ほど。
楽譜には、Cannonカノン(キャノン)と書かれ、計16発撃たれます。キャノンぶっ放すなんて、宇宙戦艦ヤマトかよ!って感じですよね。
大砲の構造では弾を立て続けに撃てませんが、曲の構成で立て続けに撃たないといけないところがあります。
そのときは複数門(大砲は1門2門と数える)必要になる場合が多いので、楽譜には数の指定は書かれていません。
普通は大砲なんか用意できないので代用として、バスドラム(大太鼓)が使われます。
逆に用意が出来れば戦車とかでも良いらしいです。
この作品は、ナポレオンがロシア遠征で返り討ちにあって撤退したときの曲なので、「フランスで演奏するのはどうなの?」という疑問がたびたびでますが、200年も前のことなのに、いったい誰が気にするんでしょうね。
Wellingtons Sieg oder die Schlacht bei Vittoria op.91「ウェリントンの勝利またはヴィトリアの戦い」
Ludwig van Beethoven(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)の作品でこちらもCannon(大砲2門)を使います。こちらもバスドラムで代用できます。
演奏時間15分ほど。
しかも、それだけじゃなくてマスケット銃(現在のライフル銃)を何丁も、使います。
管弦楽編成(楽器の編成)もベートーヴェンの全作品のなかで最大級なので「気合入ってるな」って印象です。
よくチャイコフスキーの「1812年」とセットで語られますが、それは同じ歴史的事件を題材にしているからで、何故かこっちは人気があまりないんですよね。
たぶん、「まじめなベートーベンも、とうとうこんな俗世的な題材で曲を書くようになったか」とか「ベートーヴェン!あなたナポレオン大好きなのに、なんでディスるようなことしてんのよ!」っていう理由だと思います。
Eine Alpen Sinfonie アルプス交響曲
Richard Georg Strauss(リヒャルト・ゲオルク・シュトラウス)の作品です。
演奏時間50分ほど。
この曲は、シュトラウスが若いころに登山をした経験をもとに作曲していて、山の描写として「風の音」と「雷の音」を使います。
実際は、天候を操ったり出来ないので「ウィンドマシーン」と「サンダーマシーン(サンダーシート)」を使用します。
ウィンドマシーンは、風の音を表現したもので、ドラムの形をしたものに布を巻いて、その摩擦音で「シューシュー、ビュービュー」という風の音を出します。
サンダーマシーンは、雷の音を表現したもので、「ゴロゴロ」の部分と「ドシャーン!ピシャーン!」という音の2種類に分けられます。
サンダーマシーンの方は、木の箱や太鼓の中に堅い玉を入れて回転させたりして「ゴロゴロ」という音を出します。サンダーシートの方は、木の枠組みに薄い金属の板を吊って手やバチで叩いたり振動させたりして「ドシャーン!ピシャーン!」という音が出ます。
この曲は意外にゆるくて指定もないので、どちらを使ってもよいです。
音楽しよう!
まだまだ紹介し尽くせないほど、世の中には楽器にできるものがたくさんあります。
そう考えると、楽器が弾けなくても音楽って出来るんだなと感じてもらえれば嬉しいです。
足を踏み鳴らすのも、手を叩くのも、息をすることだって音楽です。
人間はみんなミュージシャンだ!!!