ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

日本の国歌「君が代」って神聖な感じがしていいけど、なんであんなに暗いの?

ようこそ!ブーです。

今日は成人の日が近いので、日本の国歌「君が代」について書きます。

 

国歌「君が代」とその役割

「君が代」は1880年に現在の曲が付けられて、1999年に日本の国歌として正式に法制化されました。

 

一般的に国歌は、国民的祭典、国際的行事、国民や国家を表すものとして歌われる曲です。

オリンピックやワールドカップ、入学式や卒業式などでよく歌われますよね。

 

もし「君が代」が無かったら、大事な祭典や式典などで日本だけ国旗をあげるときに無音で悲しい思いをします。

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堅苦しい式典とかだったら無音でも別に良いけど、せっかく頑張った結果の嬉しい受賞式に、曲が流れなくてボーっと旗を見上げるなんて、考えただけで虚しいですよね。

 

まぁ、曲がちょっと暗くても、まったく何にも無いよりはマシってことだ。

 

 

本当は和歌から作られた歌詞の内容

国歌としての「君が代」

「君が代は 千代に八千代に さざれ石の いわおとなりて こけのむすまで」

 

ブー的な訳だと

「あなたの時代が千年も八千年も、小さい石が集まって大きな岩になり、苔が沢山つくほど、長く永遠に続きますように」

という感じです。

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ですが、本来の和歌は最初の部分が違って、意味合いも現在の国歌の歌詞とはかなり変わってきます。

 

本来の和歌

「我が君は 千代にやちよに さざれ石の 巌をとなりて 苔のむすまで」

 

「君が代」が「我が君」となっていますよね。

それは、本来「親しい人」に向けて詠われた和歌だからなんです。

 

古今和歌集にのっている歌で「長寿を祈って詠われた歌・お祝いの歌」という説が一番有力と言われています。

 

ということは現在の国歌の内容と、その思いを向けられている人が、本来の和歌とはまったく関係ないことを示しているんです。

 

そう考えると訳も簡単で、 

「あなたが千年も八千年も、小石たちが集まって大きな岩になり、苔がイッパイにつくまで長生きしますように」

となります。(千年とかバケモノかよ!?)

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まぁ、それほど大切な人に長生きして欲しいってことで「優しい心を持った人が書いた、和歌なんだなぁ」と思いました。

 

でも、実際には詠んだ人はわかっていない(葬られた可能性もある)ので「題知らず・讀人知らず」と記されています。うーん、残念。

 

 

曲調が暗く感じる理由

その①日本的な音の並び「5音音階」が使われている

実はこの曲のメロディには、日本の曲らしく聴こえる原理の5音音階というものが使われています。

 

5音音階、別名ヨナ抜き音階四七抜き音階とは、現在一般的に使われている「ドレミファソラシド」の音の並び(音階)の4番目と7番目の音を抜いた「ドレミソラド」で構成されているもので、

雅楽でも同じ音階があり、『日本らしい響きの基本的な音階』という位置づけがされています。

 

それは歌詞に音をつけた2人が雅楽に関係した人物で、メロディの構想が宮内省式部職雅樂課の奥好義さん、曲(雅楽の伴奏付き)に起こしたのが雅楽演奏者の林廣守さんだったからです。

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「君が代」は、メロディに1音だけ5音音階ではないシの音が入っていますが、それ以外は5音音階で出来ているので『雅楽的で日本らしい、そして神聖な感じ』がするんですね。

 

 

その②現在よく聴かれている音の流れと違う 

西洋音楽では曲中に♯シャープや♭フラットが付かないとき、ドから始まってドで終るのが音の流れとして均等で暗い響きにならないので、耳に心地がよく聴きやすいと考えられています。

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でも昔の日本では、そういった感覚が無かったため、♯や♭が付いていないのにドからじゃなくて、レやラから始まるものも多かったんです。

そうなると、音の流れが均等では無く一部にかげりが出来て、聴いていると「暗く」感じるところも出てきます。

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「君が代」も♯や♭は無いのにレから始まってレで終わるので聴いたときに『暗い』感じがするんです。

 

 

その③あわせ技

現在、日本で聴かれている音楽の大半が『西洋音楽の基準』で曲を作っているのに対して「君が代」は昔ながらの5音音階を使っていて、しかも♯や♭は無いのにレから始まってレで終わります。

 

ということは「君が代」に使われているメロディが、①と②をあわせた相乗効果でなおさら暗く感じて、耳にも馴染みが無く『ちょっと暗く、不完全燃焼ぎみ』に感じるのは当然のことですね。

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その④軍歌っぽい?

「暗い」というのとは別に、なんだか軍歌のようにも感じませんか?

 

それは、この曲の伴奏部分が関係しているんです。

簡単にピアノで弾くものじゃなくて、吹奏楽やオーケストラ演奏を聴いたときに感じることが出来ます。

 

この曲のメロディを作ったのは日本人ですが、伴奏(和声)をつけたのはドイツ人の海軍軍楽教師フランツ・エッケルトさんだからなんです。

 

西洋風の、しかも軍楽を専門としている人が作ったんなら軍歌っぽくなっても仕方がないのかなぁ。

 

嫌いじゃないけどチグハグな印象で、なおさらメロディの暗さが強調されますよね。

 

 

リオオリンピックの時のやつカッコ良かったなぁ。

リオオリンピックの閉会式をリアルタイムで観たのですが、次は日本の東京にやって来るってだけで、訳も分からず感動~。

 

その時のセレモニーでも、もちろん「君が代」がかかりました。

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しかし!いつも聴いてるのと全然違う!!

 

一瞬「国歌って編曲とかしても、法律的には問題ないんだろうか?」とは思ったものの、聴いているうちに「メロディは変わらないのに、声の交わりだけでこんなにスバらしい編曲になるのか~!」と、良い意味で度肝を抜かれました。

 

誰の編曲かと思い調べたら、作曲・編曲家で音楽プロデューサーの三宅純さんという方でした。 

日本民謡のこぶし回しに近いブルガリアン・ヴォイスのスタイルや、いろんな国の音楽との融合(ハイブリット)で出来ている、ということで近代化した日本を表すには本当に良く当てはまっている曲調だなと思います。

三宅さんスゴ過ぎ!

 

それに、オリンピックの音楽演出には大好きな椎名林檎さんや田中ヤスタカさんも関わっているというんだから好きな感じの音楽しかかからないハズ!

だから、ブーが三宅さんの編曲が好きになるのも、まぁ…当然なわけだ。(笑)

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