モーツァルトを通して音楽家の葛藤を描く映画「アマデウス」
ようこそ!ブーです。
今日は、大作曲家モーツァルトを通して音楽家の葛藤を描いた映画「Amadeusアマデウス」と、その登場人物で物語のキーパーソンである作曲家アントニオ・サリエリについて紹介します。
この映画はモーツァルトが主役ではなくて、彼を通してサリエリの複雑な心情を描いた作品です。
学生の頃に映画を観たのですが、才能あふれるモーツァルトの人間性に衝撃を受けて、劣等感を抱くアントニオ・サリエリには共感を覚えました。
この作品はブロードウェイの舞台「アマデウス」を映画化したものです。
モーツァルト
学校の音楽室に必ずと言っていいほど飾ってある肖像や、音楽の教科書に載っていたり、音楽教室の教材でも使われることが多いのでお馴染みですよね。
Wolfgang Amadeus Mozart(ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト1756年1月27日-1791年12月5日没)は、オーストリアの音楽家で作曲やチェンバロの演奏などを得意としていました。
愛称は「神童」です。
映画では、頭のてっぺんから足の先まで奇抜で、そのうえ言動や笑い方は本当に徹底して下品なので、これ以上ないくらい最悪の人物として描かれています。(笑)
「アマデウス」は、35歳という若さで亡くなったモーツァルトのナゾに包まれた死に関して触れている作品です。
サリエリ
この名前を聞いたことがある人はかなりの音楽通だと思います。
Antonio Salieri(アントニオ・サリエリ1750年8月18日-1825年5月7日没)は、イタリア出身の作曲家です。
オーストリア皇帝に50年も仕え、その内30年以上は宮中の音楽を取り仕切る宮廷楽長を任されたため、イタリア出身ながらもヨーロッパの音楽界(楽壇)全体のトップに立っていました。
ベートーヴェンやシューベルトそしてリストなど、有名な作曲家たちを育てたスゴイ人物ですが、亡くなった後は名前も作品も忘れら去られていたんです。
ところが、この映画で主人公として取り上げられたので、2000年代になってから少しづつ再評価される動きがあり、今では出身地で音楽祭が行なわれるほどになりました。
モーツァルトと同じ年代に活躍していたので影が薄く、そのため「モーツァルトを毒殺した」というスキャンダルがあたかも真実であるかのように語られており、このことで心を痛めていたようです。
実際にはモーツァルトの才能を認めていたので親交があり、葬儀にも参列しています。
映画「Amadeusアマデウス」の内容
物語は老人が病院へ担ぎ込まれるというシーンから始まります。
老人はアントニオ・サリエリで、自殺を図ったので精神病院へ入れられたのでした。
落ち着いた頃、彼の話を聞きに神父さんが訪れサリエリはこう語り始めます。
「私は30年前に偉大な作曲家を殺した」と…。
真面目なサリエリは長い間、宮中の音楽を任される宮廷楽長の地位にあり、周りから尊敬されていました。
ところが突然現れた、才能あふれる若く下品なモーツァルトがその地位を脅かし、順風満帆だった彼の人生を変えてしまうのです。
ある日、モーツァルトの奥さんのコンスタンツェがサリエリに彼の楽譜の断片を持って訪ねてきました。
どれを見ても自分では到底思いつかない、天上を思わせるような甘美で豊かな音楽が想像できます。
自由奔放なモーツァルトは理解できなくても、その美しい音楽は想像するだけで涙が出ました。
サリエリの作品は、古典的で規則にガチガチに固められたスタンダードな音楽です。
一方モーツァルトの作り出す作品は、古典の良いところを残しつつ音に広がりを持たせている今までに無い音楽だったので徐々に認められます。
「なぜ彼には才能があるのに、自分には無いのか…」と何度思ったことでしょう。
モーツァルトの類まれなる才能を理解できたのは、音楽を真面目に愛していたサリエリだからこそですが、そのせいで「どんなに努力しても自分には平凡な才能しかない」ことに憤りを覚えます。
そして才能溢れるモーツァルトに嫉妬し憎み、抹殺することに決めたのです。
精神的な面から追い詰めるために、黒ずくめに黒い仮面をつけて「レクイエム・死者のためのミサ曲」の作曲を高額の報酬を支払い依頼することに。
モーツァルトは一応依頼は受けるものの乗り気ではありません。
ですが奥さんは生活のためにまとまったお金が欲しいので、「レクイエム」を書き進めるように言います。
それでもお金にならないオペラ作品を書き、言うことを聞かないモーツァルトに腹を立てた奥さんは子どもを連れて湯治に出かけてしまうのでした。
体調がすぐれない中、大衆オペラ「魔笛」を完成させましたが、モーツァルトはその上演中に倒れてしまうのです。
サリエリは何食わぬ顔で、彼を部屋まで運び介抱してあげることに。
そうしているとドアをノックする音が聞こえます。
それは「魔笛」を上演した売上金を持ってきた友人だったのですが、意識が朦朧とするモーツァルトは『死神』が来たと思い『ギャラを追加するように言って追い返してくれ』とサリエリに頼みました。
サリエリは上演の売上金を受け取り、モーツァルトには死神が追加報酬を置いていったように見せかけます。
「今、黒い服を着た使者がやって来た。翌日までにレクイエムを完成させれば、さらに大金を払うそうだが…」と伝えました。
起き上がることすら出来ないモーツァルトは、サリエリにレクイエムの口述筆記を頼むことに。
すごいスピードで音を紡ぐ彼に初めはついて行けませんが、やがてサリエリも彼の音楽を理解し取り憑かれたように書き写していきます。
明け方になり「少し休憩しよう」とモーツァルトは言いました。
「まだ大丈夫、手伝えるさ」と返してくるサリエリに「自分はバカだった、あなたに嫌われているとばかり思っていたんだ。許してもらえるだろうか」と謝罪の言葉を口にします。
そうしていると奥さんが湯治から帰ってきて、具合の悪そうなモーツァルトの顔を見るなり、急いで作曲をやめさせました。
そして「自分は良い妻ではなかった」と泣きながらモーツァルトに謝ります。
でもサリエリは彼の意思を尊重して作曲を続けるように説得し「彼に尊敬の念を抱いている」と伝えました。
ですが最後の力を振り絞ったモーツァルトはすでに永遠の眠りについていたのです。
精神病院に入っているくらいだから、サリエリのことを完璧にイカれていて妄想を口にしているだけのおじいさんだと思っていた神父さんは、この信憑性の高い話を聞いて驚きました。
さらに長い告白を終えて、最後サリエリは神父さんに告げます。
「きみも私と同じ、ただの凡人だ…。」
おしまい。
感情移入してしまうサリエリの苦悩
サリエリのセリフで「神様、凡人の才能をありがとうございます」というものがあります。
モーツァルトには「人並み以上の才能」を、自分には「人並みの才能」しか与えてくれなかった事を自嘲ぎみに十字架に向かって嘆くんです。
もう共感しすぎて涙が止まりません。
「もっと自分にこんな才能があれば…」と上を目指し追い求めるのは、音楽家のサガなんでしょうけど悲しすぎる。
すぐそこに目指すもの・目標にするものがあるのは幸せなことだけど、絶対に手に入らないってわかってるからモドカシイんだなぁ。