ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

ピアノを弾くときのコツ。ダンパーペダルの踏み方

ようこそ!ブーです。

 

今日は、ピアノを弾くときのコツとして「ダンパーペダルの踏み方」を紹介します。

 

ダンパーペダルは、普段の演奏でもっとも良く使う『音を伸ばして響かせる』効果のあるペダルです。

 

 ペダルの細かい説明はこちらから↓

boosensei.hatenablog.com

 

 

 

ペダルのせいで演奏が台無しに… 

ピアノの演奏は、ミスタッチや演奏に合わない動作が1つでも混じると台無しになってしまうことがあります。

 

なので、もし何も考えず無造作にペダルを踏んでいる人がいれば、要注意です!

 

繊細で美しい演奏をしているのに、踏み方が適当なことによって起こる音の濁りや、足が動いたときに起こる雑音が聴こえたらどんな気持ちになるでしょうか?

 

演奏している側だったら『今からペダルを踏むぞ!』と思っているので気にならないかもしれません。

 

ですが、演奏を聴いている人は落ち着いた気持ちでゆったりと浸っていた、音楽の素敵な世界から急に現実世界へ引き戻されるという、幻滅した気持ちになると思います。

 

そんなことにならないように、ペダルを踏むときは細心の注意を払いましょう。

 

 

 

ダンパーペダルの踏み方

現在製造されている一般的なピアノには、2~3種類のペダルが付いています。

 

そして演奏に1番良く使うペダルは、右側に付いている「音を伸ばす」効果のあるダンパーペダルですよね。

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皆さんは普段、どんな風にこのダンパーペダルを踏んでいるでしょうか?

 

上から足をおろしてつま先や足全体で踏んでいる人、踏む必要のないときは足をペダルから離して必要なときだけ足を持っていって踏んでいる人、強く踏んだり軽く踏んだり、さまざまな踏み方をしていると思います。

 

人それぞれに踏みやすい場所はあると思いますが、そのときどきで足の踏み場所を変えたり、足が安定しない状態や安定しない足の部位を使っていると、ペダルから足がズレてしまって上手く踏み込めなかったり、俊敏な動作ができないのでミスにも繋がります。

 

ペダルの踏み方(ペダリング)をしっかりと教えてくれるレッスンの先生もいると思いますが、独学でペダリングを習得しようと思ったらこのポイントを押さえておくと良いでしょう。

 

踏み方のポイント

  • 親指の付け根あたりでしっかりと踏み込めるようにする
  • ペダルの3分の1にあたる部分を踏む
  • 踵を床につけて、しっかりとバランスを取る
  • 中途半端な状態で踏んだままにしない

 

 

まず、親指の付け根あたりで踏み込めるように、ペダルと足の位置を調節しましょう。

 

足の中心で踏んだ方が安定しそうですが、ペダルと足の長さを考えると親指の付け根で踏む方が、よりグッと下までペダルを踏み込むことができます。

 

ペダルの3分の1にあたる部分を踏む理由は、てこの原理が上手く働いてスムーズな足運びができるからです。

 

そして、踵(かかと)は常に床につけておきましょう。

 

踵でしっかりと体のバランスが取れていると、ブレずにペダルを踏み込むことができます。

 

ペダルを踏むときは裸足だったり靴下や靴を履いた状態が想定されますが、どのような状況でも踵を床につけておけば、足を浮かせているときよりも滑ったりズレたりすることを防げるんですよ。

 

 

最後に注意して欲しいのが、中途半端にペダルを踏むことです。

 

ペダリングには2種類あって、1つ目は「ペダルをしっかりと踏み込むもの」、2つ目は「ペダルを半分まで踏むもの」があります。

 

1つ目は、ごく普通のペダリングのことです。

ペダルをしっかりと踏んだ状態で音を鳴らすので、豊かな広がりと響きを持って音が伸びていきます。

 

2つ目は、ハーフペダルという「ペダルを半分のところまで踏んで、ある程度の残響音は残しつつも、一つ一つの音がはっきり聞こえる状態」にする音楽的に効果のあるペダリング方法です。

(この技術は上級者でないと難しいと思います…。汗)

 

そして、この2つに当てはまらないのがペダルを中途半端に踏んでいる状態です。

 

ハーフペダルがしたいのではなくて、足に力が入っていなくて無意識のうちにペダルが押された状態になっているので、音楽的な要素はないまま適当に音が伸びて音に濁りがでてしまう結果になってしまい、音楽が台無しになってしまいます。

 

そうならないように足にも神経を集中させて、俊敏かつ繊細に足を動かすようにしましょう。

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タイミング

ペダルを踏むときには、ただ踏むだけではなくタイミングがとても重要です。

 

 

タイミングのポイント

  • 響かせたい音を押さえた直後に素早く踏む
  • 音を響かせたあとは素早く離す

 

ペダルを踏むタイミングが遅い音と音の間に変な隙間が生まれてしまいますし、ペダルを離すタイミングが遅いと響いていた音がそのまま残ってしまい、次に鳴らした音とぶつかって濁った響きになってしまいます。

 

なので、ペダルを踏む動作は素早く行いましょう。

 

いくらタイミングか大事だからといっても、ペダルを乱暴に踏んだり離したりしては繊細な演奏の妨げになってしまうので注意が必要です。

 

 

 

車の運転とペダリング。

学生の頃、ピアノの先生から「ピアノの演奏と車の運転って似ている」という話を聞いたことがあるんです。

 

ピアノは楽譜を目で見ながら手を使って演奏し、音響効果としてペダルを踏んで音に特別な響きを持たせます。

 

車は目で周りを確認しながらハンドルをにぎって車の方向を操作し、ペダルを踏んで車を進めたり止めたりします。

 

1度に目と手と足を同時に使い、足でペダルを踏むという同じような動作もするので似ているということで、先生は「ピアノを弾いている人の方がペダルを踏むのに慣れているから有利だよ!」と教えてくれたワケですね。

 

私も『確かに!手で演奏しながら足ではペダルを踏むから、手と足をバラバラに動かすことに慣れていて有利なのかも!』と思いました。

 

数年後、実際に運転免許を取ってみて感じたのは…

 

『運転はセンスと運動神経が重要』ということです!

 

いくら演奏は慣れていても、やっぱり運転とは全然別物でした。(笑)

 

何事も、簡単に考えてはいけませんね…。

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夏という季節に聴いて欲しい。武満徹「波の盆」

ようこそ!ブーです。

 

今日は、作曲家の武満徹さんの作品「波の盆」を紹介します。

 

聴きながら読んでね。↓

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楽曲「波の盆」の説明

「波の盆」はサウンドトラックで全15曲収録されていますが、今回はその中の表題曲“波の盆”を少しだけ説明しようと思います。

 

上で紹介した動画(静止画ですが)は全曲入っているもので、始めの4分15秒までが“波の盆”です。

 

チェレスタやハープ、そしてビブラフォンなどの楽器を使うことによって、深海のように神秘的な様子や、海の底から水面へ向かって立ち上る泡のような揺らめき、海水の透明感を想像することができます。

 

ホルンの音色は、まるで異国の船を思い浮かばせるように深い響きです。

 

弦楽器は、揺れ動く波や人の感情のように、一拍づつに細かく強弱記号が書かれてありユラユラ、フワフワとした大海原のような包み込む暖かさも感じることが出来ます。

 

木管楽器は水面の煌めきや、波の飛沫のような爽やかさ、そして海の泡のような儚さがあり、武満さんの独特で掴みどころのないユラユラ揺れるハーモニー「タケミツ・トーン」も多く使われています。

 

 

この曲の録音に携わった指揮者は、その音楽の美しさに思わず涙を流したそうで、こう語っています。

 

「なんと感情に訴える音楽だろう!

私はレコーディングの間、涙をこらえることができなかった。

第1ヴァイオリン奏者の目にも涙が浮かんでいた。

武満が作った、この本当にロマンティックで感動的なテーマを多くの人に知ってほしい。」

 

作曲家冥利に尽きるエピソードですね。

 

指揮者人生の中で、後にも先にもこんな体験はしたことが無かったそうで、改めてこの曲の凄さを感じました。

 

 

 

《波の盆》というドラマ作品

「波の盆」は、1983年日本テレビで放送されたドラマ 《波の盆》の主題曲として書かれました。

 

脚本は富良野を舞台にした家族ドラマ「北の国から」を手がけた倉本聰さん、監督は「ウルトラマン」シリーズで有名な円谷プロで活躍していた実相寺昭雄さんです。

 

ハワイと日本を舞台にしたこのドラマでは、笠智衆さんや蟹江敬三さん、中井貴一さんなどの名俳優陣が、戦争によって引き裂かれた日系移民親子の姿を演じ、彼らの葛藤や家族の愛という色々な人間の感情が描かれています。

 

「波の盆」の主要メロディは作品のいろいろな場面で流れますが、特に印象的なのは、主演の笠智衆さんがクライマックスシーンで【自分より先に逝ってしまった息子】のことを想い、精霊流し・燈籠流しをした海を眺めているときに流れるものです。

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母国への想いを哀愁として感じると同時に、海のように広く深い「親心」のような愛情も感じとれる懐かしい曲調は、ドラマの核となる 『戦争とは我々に何を残したのか?』ということを切々と訴えかけてきます。

 

 

 

「波の盆」作曲者

「波の盆」は、東京都出身の日本を代表する現代作曲家・武満徹(Takemitsu Toruたけみつ とおる1930年10月8日-1996年2月20日没)さんが作曲しました。

 

「世界のタケミツ」と呼ばれ、日本のクラシック音楽を牽引してきた重要な人物です。

 

 こちらでも紹介しています。↓

boosensei.hatenablog.com

 

武満さん自身も戦争を体験していて、また戦争を題材にした作品も多く手がけているので、ドラマ《波の盆》の作曲も頼まれたのだと推測されます。

 

武満さんは生前、友人に当てた手紙に『鯨のような、優雅で頑健な肉体(からだ)をもち、西も東もない海を泳ぎたい…』と書いたそうです。

 

この発想から、武満さんの海への憧れを垣間見ることができ、作曲をするにあたって色々な曲に影響を与える考えだったのだろうと思います。

 

「波の盆」も、その海に対する想いが感じとれる名曲です。

 

 

 

「波の盆」と私

武満さんの作品は前衛的なものが多かったため、好き嫌いがハッキリと分かれてしまいます。

 

ですが、この曲では他の武満作品と違う印象を持つようで、好印象を受ける人が多く

  • 自分の葬儀の時はこんな曲でこの世から送り出して頂きたい。参列者の方には生きることの素晴らしさと勇気を持ってもらいたい。心から深く感動する曲です。
  • 心地よい音楽ですね。穏やかな海の情景が浮かんでくるような素晴らしい名曲。穏やかで親しみやすい。
  • 心に残る素敵な曲です。

というコメントが書かれていました。

 

 

海が近い土地柄のためか、私はこの曲を聴くと亡くなった祖母のことを思い出します。

 

自分自身に厳しい真面目なばあちゃん、幼い頃の怪我のせいで思うように動けずに歯がゆい思いをしていたばあちゃん、手先が器用なばあちゃん、文句を良いながらもじいちゃんの世話を焼くばあちゃん、一生懸命しつけをしてくれていたけど孫には結局甘くなってしまうばあちゃん、果物が好きでその中でも桃が大好物だったばあちゃん。

 

空の上から見守ってくれているんだろうか…、などと色々考えてしまいます。

 

もうすぐお盆だから、ばあちゃん孝行のために仏壇とお墓の掃除を一生懸命やろっと!

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音楽科のある学校はハーレム状態?

ようこそ!ブーです。

 

今日は、「音楽科は男性にとってハーレム状態なのか?」ということについて説明します。

 

 

 

男女の比率が問題

音楽科のある学校では、比率的に女性の人数が圧倒的に多いです。

 

そのため、状態だけだとハーレムと言っても良いと思います。

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音大生を統計していくと男女比は1:9から、多くても3:7ほどです。

 

人数にすると300人中30~90人程しか男子学生はいません。

 

高校の場合だと1クラス40人ほどの中で、大抵2~10人は男子がいるハズなんですが、「男子1人:女子39人」なんていう稀なケースもあります。

 

 

 

ハーレムの体験談

ブーの友達は3年間この「男子1人:女子39人」という状況だったので、『スゴイ!ハーレムじゃん!どんな感じ?』と聞いてみたことがあります。

 

ですが彼の回答は意外と言えば意外だし、当たり前と言われれば当たり前なものでした。

 

『う~ん、全然よくないよ。まず男としての人権がなくなる…。

 

1人しかいないから、男女のキワドイ質問もバンバン聞かれるし、

体育の授業前は俺がいても気にせず着替え始めるくせに早く教室から出て行けって言われるし、

女子の中で男子が1人だけだと目立つから先生に授業中メチャクチャ当てられるしさ。

何より女のケンカは陰湿で怖い。

 

天国とかハーレムと言うよりは、針のムシロ……地獄だね。』

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これだけ聞くと、ひどい目にあったりいじめられているのかと思いますが、そうではない様子です。

 

『嫌なこともあるけど、クラスのお父さんやお兄さん的な存在だったりして、全体的に家族みたいな感じだから、居心地は悪くないよ。』

 

という前向きな意見が聞けました。

 

いろいろが許されるほど仲が良いということだったんですね。

 

そして、これだけ人数に差があると逆に異性として扱われることはないんだな、とも思いました。

 

彼のような人もいますが、私が通っていた学校では男子学生はかなりモテていた印象があります。

 

特に印象に残っているのはヴァイオリン専攻の先輩で、彼は見た目も麗しく、そのうえコンサートマスター(すなわち首席奏者)だったので周りからは羨望の眼差しを受けていました。

 

女子学生の中では『2番でも3番でも…何番目でも良いから、彼女にしてくれないかなぁ…。』という声が上がるほど。

 

ですが、このようにモテるからといって何股もかけると、学校という閉鎖的な空間では相当なリスクをともないます。

 

もともと男子というだけでも目立っているのに、そんなことまでしたら噂がドンドン広まっていってしまい、最悪な状況になること間違いなしです。

 

実際に、修羅場になっている状況も目にしたことがありますし、オーケストラや合唱などの全学年関係なく参加する授業では嫌でも顔を合わせなくてはいけないので、その空間だけ凍り付いているのがわかってしまいます。

 

そうなると周りも気を使わなくてはいけなくなり、お互いにとても気まずいです。

 

学生の間くらいはハメをはずして遊びたいと思うでしょうが、健やかな学生生活を送りたければ、いくらモテるからといっても迂闊な行動は慎みましょう。

 

 

 

音楽を職業としている人では…

確かに学生時代は状況的に言うとハーレム状態ですが、音楽を職業にしている人や、クラシックの作曲家や指揮者は逆にほとんどが男性ですし、大学の教授や講師も男性の方が多いくらいです。

 

女性が多い職場で言うと、ピアノの個人レッスンくらいだと思います。

 

理由は諸説あり、

  • 将来のことを考えると、勉強をがんばって普通の大学を目指して就職するほうが経済的に安定する。
  • 『男性は働いて家族を養うべき』という考え方が今でも根強いから安定しない職業で家族を養うと考えると、かなりの覚悟を持って音楽の道に進んでいくから、そのぶん生き残っていく可能性も高い。
  • 歴史的作曲家の殆どは男性であり、演奏家にも男性ばかりの文化がいまだに根付いてしまっている。
  • プロとして活躍するためには色々なものを犠牲にする勇気がいる。
  • 厳しいレッスンや本番に向けたリハーサル、そのスケジュールに耐えるための根気、何より体力が必要となり男性向きの構造になっている。
  • 男性は家庭を背負うという覚悟がある分、音楽教諭になったり突き詰めてプロ奏者となることが多い。

 

などが挙げられます。

 

上に書いたように『働く』・『養う』という現実的なことを考えていることが理由で、音楽科に通う男子生徒が少ないのかもしれませんね。

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速度を合わせるために使う【メトロノーム】

ようこそ!ブーです。

 

今日は、メトロノームを紹介します。

 

 

メトロノーム

メトロノームは、音楽を演奏するときのテンポ(速さ)を一定に合わせるために使う音楽用具(拍子計測器)です。

 

ドイツ語でMetronom、英語ではMetronomeと書きます。

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一般的な楽譜に書かれてある速度指示に対応できるように細かく調節ができるようになっていて、私達はその速度を一定に鳴る音によって知ることができます。

 

昔は上のイラストのような機械式のものが主流でしたが、機械であるが故に刻んでいる拍にズレが生じる事があるため、現在では機械式のような欠点がない電子式メトロノームを使う人が多くなってきています。

 

機械式の欠点

  • 使う場所が水平で無かったら速度が一定にならないので、置き場所を考えなくてはいけない。
  • 引力の力が影響するので、本当に一定か判らない。
  • 長年使っていると機構の劣化が進んで拍がズレる。
  • 少しのズレだったら気が付きにくい。
  • テンポを一定に合わせることしか機能がない。
  • 毎回、しかも何度もネジを巻かないと動かない。

 

このように欠点があるのは、機械式のメトロノームが重力の作用によって動く振り子の原理を利用した音楽用具だからです。

 

一般的な「下に重りがついている振り子」ではなくて「上に重りがついている振り子」の作りになっていて、上向きについている重りは上下に動かして周期(速さ)を調節することができます。

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機械式のメトロノームの場合は、重りが上にあるときにはテンポが遅くなり、重りが下にあるときにはテンポが速くなりますが、振り子の長さには限りがあるので、テンポの調節は「およそ40~208まで」と制約されてしまいます。

 

振り子の原理では「重力や引力」が関係してくるので、重りの動きを一定にするためには水平な場所に置かなければいけません。

 

そして動かし続ける(衰退しないようにする)ための動力はゼンマイばねを使っているので、どうしても手でネジを巻く作業がつきまといます。

 

 

一方、電子式は水平でなくとも使えますし、拍がズレるくらいの劣化が起こっていたら電源がつかなくなるので買い替え時もわかりやすいです。

 

電子式なので動力である電池が入っていれば何時間練習しても止まることはありませんし、テンポも40~208という制約はなく様々なリズムパターンを刻むことができたり、音の高さを合わせる電子チューナーに内蔵されたりと、拍を刻むことしかできない機械式のメトロノームとは違って、たった1台で多種多様な機能をもつことができます。

 

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確かに電子式メトロノームはいろいろな種類や機能があってとても便利ですが、私は機械式の方が趣があって好きだなぁ…。

 

あの振り子時計のような『カチッ、カチッ、カチッ…』という音がないと寂しいです。

 

電子式メトロノームでも機械式のアナログな音を使っているものがありますが、やっぱりリアルな音ではないので、情緒が感じられないんですよね。

 

 

  

メトロノームに関係の深い人

メトロノームを作ったのは、Johann Nepomuk Mälzel(ヨハン・ネポムク・メルツェル、1772年8月15日-1838年7月21日没)というドイツ出身の発明家で、1816年に特許を取得しました。

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音楽家で初めて楽曲に取り入れた人物は、メルツェルと同じドイツ出身のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンです。

 

古典音楽の良さを残しつつ新しい手法・技法を取り入れていた、斬新で新しいものが大好きなベートーヴェンらしいなぁ…、と思いました。

 

なぜメトロノームをベートーヴェンが使うことになったかというと、メルツェルが作った「パンハルモニコン」というパイプオルガンのような形をした、オーケストラの楽器を内蔵している機械仕掛けの楽器のために曲を依頼されたことで親交を深め、その流れでメトロノームの存在を知ったからです。

 

当時のベートーヴェンは難聴によって音が聞き取り辛く、自分の作った曲を指揮したくても、音を聴いてリズムを取ることが上手くできないので苦しんでいました。

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ですがメルツェルの作ったメトロノームに出会い、曲のテンポが視覚的に把握できるようになったので、喜んで使うようになったのでした。

 

商売上手なメルツェルは、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社(日本ではブライトコプフと呼ばれる。ドイツ発祥の1番歴史が長い楽譜出版社にあてて手紙を書いています。

 

「ベートーヴェンは以前と新しい作品のすべてにメトロノームを表記いたしました。手元にカタログができておりますので、ご要望とあればお送りできます。」

 

実は、メルツェルがメトロノームを作る前に「クロノメーター」と呼ばれた拍子計測器がありましたが、質の悪さから評論家からは酷評されていました。

 

その拍子計測器の最悪な印象を払拭し、自分が作った商品を大々的に売り出すためには、著名なベートーヴェンの名前を語れることが大いに役立ったといえます。

 

 

 

メトロノームの使い方

メトロノームを使っての速さが指示されるときには、楽譜に「M.M=100」や「♪=100」という風に書かれます。

 

M.Mはメルツェルズ.メトロノーム(Mälzel's Metronome)と読み『メルツェルが作ったメトロノーム』という意味があります。

昔はこの表記がないと、正確なテンポを刻めない拍子計測器が使われるおそれがあったためです。

 

♪ の部分は楽譜に指定してある基準の音符と同じになっていなければいけません。

 

「M.M」と「♪」のどちらも基準の音符の速さを示す記号で、1分間にメトロノームが何回拍を刻むことができるかで速さが決まります。

 

「M.M=100」や「♪=100」の表記がある場合は、メトロノームの目盛りを100に合わせ揺らします。

 

電子式は液晶画面の数字を、上下についたボタンを操作して100に合わせましょう。

 

このときメトロノームが打つ拍の回数は、1分間におよそ100回になります。

 

拍子と演奏の速さを合わせるために、機械式ではツマミで指定・電子式ではボタンで操作した「2、3、4、6間隔」の拍でベル(鐘)などの音が鳴る機能があります。

 

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この機能がついている理由は、小節の始めが判るようにするための配慮と、間違えたときにベルがなる場所がズレるので、適当に拍を誤魔化すこと(ズル)ができないようにするためです。

 

個人的に、お経の読経のときに使う「木魚とリン」に似ていると思います。

『ポクッ、ポクッ、ポクッ、チーン』って感じがしませんか?(笑)

 

 

 

メトロノームのおもしろい実験

この動画は「同期現象」を再現した物理の実験です。↓

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この実験は、東京理科大学工学部経営工学科の教授である池口徹さん率いる「池口研究室」のメンバーが行ないました。

 

台の上にズラリと並べられているのは、なんと100個のメトロノーム!

(研究室では他にも2・3・7・10・24・32・54・64・72個のメトロノームを使った実験も行なっています。)

 

構造上、同じペースを維持して動き続ける装置のハズなのに、始めはバラバラだったメトロノームがだんだん揃ってきてしまうなんて、本当に不思議だなぁ…。

 

同期現象は、メトロノームが左右に振れる事によって起きる「運動エネルギー」が、乗っている大きな台ごと全体を揺さぶり、乗っているメトロノームすべての振幅を強制的に調節してしまうことによるズレ、が原因で起こります。

 

水平でないとズレが生じるという、機械式メトロノームの欠点を利用した良い実験です。

 

位置エネルギーや運動エネルギーを使った「運動方程式」という数学的な説明もありますが、難しいので今回は割愛させて下さい。

 

とても興味深く面白い実験ですが、家でやろうと思ったら処理しきれない量のメトロノームが必要になりますし、普通に騒音でご近所から苦情がきてしまいそうなので止めておきましょう。(笑)

 

 

 

メトロノームのための曲

メトロノームは本来、速度を知るための音楽用具ですが、その音の刻みを利用して曲も作られました。

 

知られているものでは、ハンガリー出身の現代音楽の作曲家のLigeti György Sándor(リゲティ・ジェルジュ・シャーンドル、1923年5月28日-2006年6月12日)が作曲した「100台のメトロノームのための-ポエム・サンフォニック」と、日本の作曲家でピアニストの一柳慧(1933年2月4日~、オノ・ヨーコの元夫)が作曲した「電気メトロノームのための音楽」という曲があります

 

機械式のメトロノームを使った「100台のメトロノームのための-ポエム・サンフォニック」では、他の楽器は使われずメトロノームのみの演奏です。

 

演奏は1分34秒あたりから↓

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動画では電気制御で演奏が開始しますが、本来は演奏者2人がメトロノームを動かす準備をします。

 

演奏者はメトロノームがすべて動き始めたらその場からいなくなり、逆に聴衆は演奏者が去ってから入場が認められます。

 

バラバラに鳴らされたメトロノームが徐々に止まっていって、最後の1つが止まると演奏の終わりを意味するので、そのときの始まりやメトロノームの具合で演奏時間は異なり「最短で5分、最長で20分」とかなりの差がでます。

 

 

電子式のメトロノームを使った「電気メトロノームのための音楽」では、色々な音や声が使われており、音楽の異端児であるジョン・ケージに大きく影響を受けた作風になっています。

 

音量注意!途中で変な音や声が入っているので驚かないように気をつけてね。

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3~8人で演奏され、演奏時間は8~15分ほどかかります。

 

メトロノームを楽器として考えた発想力もスゴイですが、正確に拍を刻む道具を使って無秩序に聴こえるように作曲してしまう芸術性に圧倒されてしまいました。

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音楽科の進路。【過酷な現実】

ようこそ!ブーです。

 

今日は、音楽科の進路について書きます。

 

今までは音楽の楽しさや素晴らしさを紹介してきましたが、音楽を学問として本気で習ったあとの将来について考えると、「好き」とか「楽しい」だけではやっていけません

 

音楽という夢だけを追いかけ続けた自分が言うのもアレですが、今から将来が広がっていく若者たちには大好きな音楽での後悔をしてほしくないんです。

 

なので、思い切って書くことにしました。

 

これから下に書いてあることは、進路(自分の将来)を考える上ではとても大事なことですが、音楽科への進学を考えている人からしたら、聞きたくないような厳しいことが書かれているかもしれません。

 

もしかしたら、受験をやめたい諦めたいと思ってしまうほどの内容かもしれないので、心の準備をしてから読んでくださいね!

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【過酷な現実】

プロの音楽家にはなれない

進路を考えるときに知っておかなければいけないことがあります。

 

それは、音楽科のある学校に通って、きっちり卒業したとしても『必ずプロの音楽家になれるわけではない』ということです。

 

プロの音楽家は、《作曲・演奏又は演奏の指揮に従事する人で、作曲家・編曲家・コンサートマスター(首席奏者)・声楽家・オペラ歌手・バイオリニスト・ピアニスト・筝演奏家・雅楽楽手・歌手・楽士・能楽はやし(囃子)方・長うた(唄)はやし方・音楽指揮者・浄瑠璃師》などの仕事についていて、報酬をもらっている人のこと。

 

音楽評論家や、学校の教員、音楽教室の個人教師などは音楽家に当てはまりません。

 

上に挙げたような種類の、音楽家として働いている人も確かにいますが、とても少ないのです。 

 

総務省統計局の調査によると、2018年6月20日(7月16日時点で最新)に公表されている日本の人口は約1.26億人で、

一番近い年に行なわれた平成27年の国勢調査によると、職業分類したときの15歳以上の就業者数は約5889万人、日本に居住している音楽家(クラシックの音楽家以外を含む)の人数は約2.3万人という結果でした。

 

出典「平成27年国政調査結果」(総務省統計局)

 

 

それを踏まえて、音楽家の割合を計算すると…

 

人口での割合

(23.000÷126.000.000)×100%

約0.018%

 

就業者としての割合

(23.000÷55.890.000)×100%

約0.041%

 

どちらも、プロの音楽家は0.1%にも満たないという結果になりました。

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この割合だけでも充分に少ないですが、ここから自分のやりたい分野、作曲・演奏・指揮といったように細かく分けていくと、もっと少なくなります。

 

そして、これは現在の音楽家(15歳より上の全就業者)の割合なので、これから音楽家になる人を年齢別に分けて自分の年齢に当てはめれば、その割合はもっともっと減ってしまうんです。

 

このことからプロの音楽家は、本当に限られた人にしかなれない職業なんだ、ということがわかったと思います。

 

 

 

待っているのは挫折

『プロになれなくても、他の音楽関係の仕事を探せればかまわない。』という人も居ると思います。

 

確かに0.1%にも満たないプロの音楽家よりも、音楽教員や講師・調律師・療法士・音響さん・楽器屋さん・楽譜屋さんなど、他の音楽関係の仕事をしている人数の方がはるかに多いです。

 

ですが、これらも決して簡単になれるものではない事を知っておきましょう。

 

音楽が関係している仕事は選ばなければ数多くありますが、資格や特別な能力・知識を持っていないとやっていくのが厳しいことが多いのです。

 

そのために音楽科を持った学校が存在しているわけですが、音楽関係の仕事を目指して自分の行きたい音楽科の分野や専攻に入れたからといっても安心はできません。

 

なぜなら、行きたい分野や専攻、目指していた仕事が、あなたに合っていないかもしれないからです。

 

私の場合、ピアノを長年やっていたので『学校に行くならピアノ科だ!』と意気込んで高校はピアノ科に入学しましたが、在学中に才能が無いことに気が付き、大きく挫折しました。

 

ピアノ以外に何の取り得もなかった私は、今までしてきたことが全て水の泡になってしまった気がして、地獄に落とされたような気持ちを味わったんです。

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挫折しても好きなことだったので3年間どうにか通いましたが、『卒業したその先』を考えると、楽しい学生生活の裏には常に不安が付きまとうことになります。

 

私がその不安に押しつぶされることはありませんでしたが、周りにいる人のなかには、その不安に負けてしまった人もいるんです。

 

  • 挫折して引きこもってしまった同級生達は留年し後輩になり、休学や退学しました。
  • 自分の音楽のあるべき場所がわからなくなり、留年に留年を重ねた元先輩方は同級生から後輩になり、結局学校を去っていきました。
  • 卒業をしてもすることが無いからと、自分に合っていないのに惰性で専攻科(大学院的なもの)へ進学しようとした友達は、進学試験に落ちてうつ病になりました。

 

こんな思いをしなくても専攻の変更ができる学校や、試験を受けて他の分野に編入という手もあります。

 

ですが、それでも最低1年は棒に振ってしまうので、そのまま見切りをつけて音楽自体を辞めてしまう人が多いです。

 

 

 

やっぱり音楽に携わっていたい!

このように音楽科に入っても厳しいことが多いので、そこで音楽を諦めて逆に将来を見据えた「音楽とは全然関係のない学校」に行ってしまう人がいます。

 

ですがこの人が、後になって『音楽関係の仕事に就きたい』と思っても、音楽科の無い学校では音楽に関係する就職先にツテがなかったり、先輩方の実績も無いので探すことがとても難しいんです。

 

もし音楽科のある学校に行っていたら、卒業生達が積み重ねてきた実績と、彼らのおかげで蓄えられた音楽の仕事に関する情報の量は豊富にあります。

 

就職先を探すときには有利になる事が多いので、できないからと言って音楽自体を諦めるのではなく、自分が音楽で出来ることを良く考えて探し、音楽に携わっていられるようにしておきましょう。 

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諦めないで!1人で悩むより相談しよう。 

進路を考えるのは初めてで、わからないことがたくさんありますよね。

 

上に書いたような過酷な状況になると考えると不安になり、誰かに相談したいと思うのが普通です。

 

ですが回りにいる親しい友人や大人達は、音楽の知識はあっても学校のことになると解らないので相談できないといった状況になるでしょう。

 

そんな、誰にも相談できずに悩んでいる人がいたら、まずは自分の通っている学校の音楽の先生や、個人的にレッスンを受けている先生に相談したり、気になることを聞いてみるのが良いと思います。

 

音楽に関係のある仕事をしているということは、同じような道を歩いてきた大先輩と言うことですからね!

 

 グダグダ悩むより、ドンドン相談しよう!

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