ブー先生の音楽教室

学校では教えてくれない、音楽のことを書いています。

「ピアノの魔術師」リスト【その②】

ようこそ!ブーです。

 

ピアニストであり作曲家でもあったフランツ・リストを2回にわたって紹介しています。

 

【その②】の今日は、彼が「魔術師」と言われた理由についてです。

 

 

「ピアノの魔術師」

リストは、常人にはできないピアノ演奏の技巧を持っていたことから「ピアノの魔術師」と呼ばれていました。

 

まるで悪魔に魂を売ったかのような、その狂気に満ちた演奏は『指が6本ある』というウワサが信じられているくらい凄かったそうです。

(笑った顔は、悪魔のメフィストフェレスのようだったとか…)

 

演奏の凄まじさや、彼の人気ぶりからいろんな風刺画が出回りました。

 

指の動きが速すぎて残像が見え、ダイナミックに手を上げたりする様子はまるで千手観音のようです。

こんな感じ↓

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その過激で激しい演奏は「アクロバット奏法」という言葉で形容され、コンサートではピアノを破壊するほどでした。

 

弦が切れたり、弦を鳴らすためのハンマーと呼ばれる部分が壊れてしまったりする事がよくあったため、聴衆はそれをひそかな楽しみにしていたようです。

(ギタリストがライヴ中にギターを壊す感覚だったのでしょう)

 

その力強い演奏から紡ぎ出される音は「グランドフォルティッシモ」と呼ばれ、時には会場の外までその演奏が聴こえていたと言います。

 

grandグランド=「壮大な・盛大な・豪華な・堂々とした・崇高な」

fortissimoフォルティッシモ=「非常に強く」音楽記号ƒƒ

合わせると「非常に大きく壮大な音」という意味になります。

 

その「非常に大きく壮大な音」を実現するために活躍したのが、彼の大きな手と言えるでしょう。

 

通常「9度=白い鍵盤9個分」指が届けば、ほとんどのピアノ曲を演奏することが可能と言われている中で、リストはなんと「12度=白い鍵盤12個分」まで届きました。(一説によると13度まで届いたとも…)

 

それもそのはず、彼の手は「親指7cm、人差し指11cm、中指12cm、薬指11cm強、小指8.8cm」もあります。

ドイツにある「リスト博物館」に右手の原寸大石膏像が残っているので、確かな長さです。

 

ちなみにブーは、親指5.7cm、人差し指6.6cm、中指7.5cm、薬指6.7cm強、小指5.3cm、手全体でもわずか16cmほどだったので、リストの手がどれだけ凄いかわかりました。

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やはり弾ける鍵盤の幅が広がると演奏に余裕が生まれ、余裕がある分だけ力強く・音に厚みが出せます。

演奏する上で「手が大きい・指が長い」ことは才能の1つに数えられるので、本当に羨ましい限りです。

 

何より、リストが書いた曲は「オクターヴ=白い鍵盤8個分」が連続するものや「10度=白い鍵盤10個分」なども普通にあります。

なので、演奏するにあたって手が大きくないとかなり厳しいです。

 

(でも、自分が届くからと言って、鍵盤の距離が極端に広いのは勘弁して欲しいなぁ…)

 

 

ストイックな練習

「魔術師」と呼ばれてチヤホヤされていたからと言って、その超絶的な演奏技術を維持するためには努力を惜しみませんでした。

 

とにかく練習量が半端ではなく、時間は毎日15時間以上

そのうち、タッチが重い鍵盤のピアノで6時間も弾いていたというのだから驚きです。

 

そんな彼が唯一、初見で弾けなかったとされているのが、同時期に活躍していたショパン作曲のエチュード(練習曲集)と言われています。

 

ショックを受けたリストが数週間、家に引きこもって猛練習したというのは有名な話です。

(数週間も引きこもるとか、ストイックすぎる!)

 

 

超絶技巧練習曲 

リストは「ピアノのパガニーニ」を目指していました。

(パガニーニはヴァイオリンの名手で、超絶技巧の持ち主です。)

 

その真髄と言えるのが、ピアノのための作品「Études d'exécution transcendante超絶技巧練習曲」です。

 

12曲で構成されているこの曲集は、作曲家で辛口の音楽評論家であったシューマンが

嵐の練習曲恐怖の練習曲で、これを弾きこなせる者は世界中探してもせいぜい10人くらいしか居ないだろう。もしヘタな演奏家が弾いたら、それこそ物笑いの種になるに違いない。

この曲は巨匠による演奏で聴かなければ成り立たない。出来る事ならば、フランツ・リスト自身による演奏が良いだろう。

しかし、たとえリストが弾いたとしても、あらゆる限界を超えたところや、得られるハズの(演奏・音響)効果が犠牲にされた美しさに対して、充分な償いになっていないという点では耳障りな箇所が沢山ある。

しかし何はともあれ、来るべき冬の彼の到着は、心から待ち遠しい

と、ワクワク感をにじませて語るほど「難しい曲」ばかりが収められています。

 

「超絶技巧練習曲集・第4番Mazeooaマゼッパ」↓

youtu.be

 

次々に紡ぎだされるハーモニーは、まさに『音の大洪水!』と言った感じです。

 

ピアノを最大限に使ったこの曲は、迫力が違いますよね。 

 

こんなに難しい曲が12曲…

ピアノだけじゃなくて、手も壊れてしまいそうです。(汗)

 

「超絶技巧練習曲集・第5番Feux follets鬼火」↓ 

youtu.be

 

この動画の冒頭部分で、音が鳴っていないのに数秒間指が動いているのがわかるでしょうか?

 

実は、初めの指の流れを確認しているんです。

 

辻井君ですら、細かい指の動きに苦戦しているということが驚きでした。

 

こんな風に演奏者が『つまづかずに演奏できるだろうか?』と不安になり、避けたくなるような指の動きを躊躇なく曲に盛りこむことが、リストの凄いところなんですよね。

 

聴くのは天国、弾くのは地獄。(笑)

 

 

リストへの憧れ

いくらピアノが好きでもマネ出来ないようなストイック過ぎる練習や、初見でほとんどの曲を弾きこなせて暗譜もできることは、ピアノを弾く人間としては本当に憧れをいだきます。

 

さっき書いたように、ブーは手が小さいうえに指も短いので「リストみたいに指を長く伸ばすために、いつか指の間を切開したいな…」と彼を目標にしていた時期がありました。

 

でも気が付いたんです。

 

『ただ指を伸ばしたところで、超絶技巧がマネできないだろ!』

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